●美術エッセイ『彼女だけの名画』10:ロンドン、ピカソのブルー
2020/08/26
夜明けの色。
恋に悩んで眠れぬ夜、明け方、疲れた目にどんよりと映った空。暗いブルー。
彼と朝まで飲んで歌って、浮かれて歩いた街、見上げた空。透き通るようなブルー。
私は、夜明けの空の色が大好きで、ただそれを見るためだけに、眠らないでいることもある。
今日の夜明けも、素敵だった。
私の仕事部屋の窓枠は青色。自分でペンキを塗った。それが見えなくなるのが嫌で、カーテンをつけないでいる。
その窓に、ふと光を感じて、ワープロの手を休めた。外を見ると、深いブルーの空が、木々や建物に覆い被さるようにして、あった。
この音楽を聴くといつも彼を思い出す、とか、雨が降るとあの日を思い出す、ということがあるように、明けてゆく空を見ると私は一枚の絵を思い出す。そして、去年の夏、ロンドンのホテルの窓から見たあの色も。