■30年前の「三人姉妹」と25年前のエッセイと
今日はなぜか、ずーーーっと昔に観た映画のセリフがリフレイン。
「結果を考えない行動は許されないわ」
歴代のノートから、詳しい情報はないかと探す。すっかり忘れてしまって。
私が好きな監督マルガレーテ・フォン・トロッタが撮った「三人姉妹」。チェーホフの「三人姉妹」の現代版。23歳のときに観たのだと思う。映画館で。当時好きだったひとと。
大学生の三女がある男を責める。その男は物理学者で、妻がありながら姉と関係をもち、結局姉を捨てる。男は逃げる。「誰も傷つけたくないんだ」と。
その男に三女は言う。
「原爆の発明者もそう言っていたわ」
「よせよ、関係ないだろ」
三女は彼に断言する。
「関係あるわ。結果を考えない行動はゆるされないわ」
30年前に観た映画だから、ほんとうにこのシーンのことしか覚えていなくて、観直したくなったけど、手に入らない。DVDにはなっていなくて、じゃあVHSを購入してDVDにすればいいか、と思ったけど、これもなし。なぜ、トロッタ監督の「三人姉妹」がないわけ? と憤死寸前。
30年前、このセリフがぴかぴかと眩しかったのだった。
こんなふうに、きっぱり言える大学生が眩しかった。それほど年齢が違わないのに、私には「結果を考えない行動はゆるされないわっ」と言えるような若さは、とっくになかった。
原爆と恋愛を同列で語ることについて、しばらく考えていたことはよく覚えている。
いまは、どう思うのだろう。
そんなつもりじゃなかった。誰も傷つけたくはなかった。
というひとに対して、「結果を考えない行動はゆるされないわ」と、私は言うのだろうか。
言わないな。
結果を考えて行動したって、考え通りにものごとは動かない。相手が人間ならとくにそう。
そして、ゆるす、ゆるさない、という行為。
当事者の間以外では、その行為に私は大きな疑問を抱く。
***
数日前に、「路子倶楽部」会員限定のエッセイ「彼女たちの名画」の連載が終わった。過去の自分の文章を打ちこみながら、「ひとの文章を直したくならないひとはいない」って、よく言われることではあるが、これ、絶対真実だぞ、と思った。
だって、自分の文章でこれなんだから。もう、ぜーんぶ直したくなって困った。
基本的な考え方みたいなのは、それほど変わってはいないと思う。こまかなところではかなり変わった。それはそうだ、25年という月日で知ってしまったことがありすぎる。
いま、24回すべてをここに残せたことがとても嬉しい。
路子倶楽部会員のみなさまの応援があったからできました。
ありがとうございます。
次の連載もさっそく始めてゆきたいと思います。