◎Tango アルゼンチンタンゴ ブログ「言葉美術館」 私のタンゴライフ
▪️いくつも人生の片鱗を踊った「10人のDJ、10の物語」
ためらうことなく「たのしかった」と言える会は、ひじょうに少ない。食事の場にしても、なんらかのお祝いの場にしても、そしてミロンガ(アルゼンチンタンゴのダンスパーティーみたいなの)にしても。
つまらなかった、が多めで、「しらけることや嫌なことがあり早くお家に帰りたいという衝動などがあったけれど総じて言えばたのしかったかな」がたまにあるかんじ。
そんななか先日のミロンガは、ためらうことなく「たのしかった」と言えるひとときだった。
たのしい。という平仮名を使いたいのは、「楽しい」と「愉しい」、両方の意味をこめたいからだ。「愉しい」の割合多めで。 場も楽しく、私自身の感情も、愉しかった。
第2第4火曜日の夜に四ツ谷のタンゴバー「シン ルンボ」で開催しているミロンガ「Switch」、年に数回「土曜日のSwitch」を開催している。
先日はその「土曜日のSwitch」。
テーマは「10人のDJ、10の物語」
ーーその夜、そこに集う人たちは、どんな曲を愛し、どんな曲で踊りたいと思っているのか。そしてその背景にある物語とは。8月10日、土曜日の「スイッチ」はそれぞれに選んだ3曲、1タンダのみのDJ達が集います。
その夜、あなたがフロアに流したい曲、踊りたい曲を3曲選んでください、という企画。
私自身も3曲選んだ。
何日も考えて。
朝起きると、そのたびに違う曲が浮かぶ。曲の順番も変わる。自分の選んだ曲がタンゴバー・シンルンボのあのフロアに流れるようすを想像する。こっちの曲のほうがいいかな、どうかな…。一曲の時間が長すぎるかな、どうかな…。これだと暗すぎるかな、しつこすぎるかな、うっとうしいかな、どうかな…。
みんなもこんなふうに、いくつもの候補のなかから3曲を選んでいるのだろうな、と想像して、当日をたのしみにしていて、当日はだから、この人がこの3曲を…と想い入れ強く聴いて、そして踊ったから、いくつもの人生の片鱗をまとっているような感覚になった。
10人の予定が最終的には15人のDJとなったから、15の人生の片鱗。いまもまだ皮膚にくっついているかんじ。
この企画の話が出たのは、ほぼ一年前、2023年8月24日のことだった。
Switch、ふたりのDJ(KAZMIX &TANI)とのグループライン、なにかの打ち合わせのやりとりののち、MIXさんがコメントしている。
「昔、バーで一曲入魂というイベントをやっていたんだけど、1タンダ入魂というイベントは、いずれやってみたい」
一年後に実現したわけで、もちろん一年前にもやろうと思えばできたけれど、きっとどこかで機が熟していないという感覚があったのだろう。
今回はDJとして参加していない人たちも同数いたのに、どんな曲がかかってもフロアはいっぱいだった。そのようすを見ながら私はタイミングを想っていた。タイミングというと、ちょっと違うかな。機が熟した、といったほうがやはりいい。
Switchを始めてから2年8か月。回を重ねることで、Switchという場の色彩の濃度が増した感覚。
朱に交われば赤くなる。
って、こんなときに使ってもいいのだと思う。
人は影響を受けやすいからね、環境によって良くも悪くもなるからね、ご用心。
という意味だから。
そして、色彩がなければ染まりようがないし、色彩の濃度が薄かったら影響も薄いわけだから。
今回のイベントの前日、FBにMIXさんが書きこんでいる内容をここに。3曲はMIXさんに送ることになっていたから、彼は一番早く誰がどんな曲を、というのを知っていたわけです。
***
***
ほんとうにそのとおり、と思ったところに下線をひいて強調せずにいられないくらいに、ほんとにそのとおり。秀逸です。
*写真は踊り疲れたしあわせなシューズと当日配布した曲目リストがある風景