▪️トルコ旅行記2日目 「トルコ式朝食の悲劇」から「トプカプの悲劇」を経てYが気を失う
2024/11/07
★10/27(日)2日目
トプカプ宮殿〜歓喜のシーシャ〜エジプシャン・バザール〜フェリーでカドキョイ〜アヤソフィア〜地下宮殿
▪️トルコ式朝食の悲劇
昨夜、ベッドに倒れこんで失神するように眠ったのはたぶん22時すぎくらい。
街のスピーカーから流れる「アザーン」で目が覚めた。6時ちょっと前くらいだった。
「アザーン」って、礼拝の時間を知らせる祈りで、街のスピーカーから大音量で流れる。
1日5回の礼拝があって、日の出の時間によって、地域によって、違いがあるから、何時、って厳密に決められていないという。旅行中は毎日アザーンとともに目覚めた。「すごくイスラム世界にいる!」ってかんじがする1日のはじまり。
ほぼ同時に目覚めたYに私は言った。
「おなかすいた。早めに用意をして朝食に出かけよう」
こんなに早起きしておなかすいた、なんて。Yが驚いている。私自身も驚いている。ふだんなら真夜中の時間帯だし朝食はとらない。昨夜おなかいっぱい食べたのに。なぜだろう不思議だ。そしてこの現象は旅行中続いた。
ところでYと私の違いはたくさんあるけれど、その一つが「食」。
簡単に言えばYは「食」に対する興味が強く、私は弱い。Yはスイーツが大好きで私はそうでもない。Yはかわいいカフェめぐりが大好きだけれど私は大して興味がない。
だからいつものように旅行前に私は念押しを忘れなかった。あなたと同じテンションで盛り上がらなくても怒らないでよ。どこに行って何を食べるのか、食に関しては全部まかせて従うのでよろしく。
そんなYは「トルコ式朝食」をとても楽しみにしていて、どこに行こうかリサーチをしていた。
トルコの人たちは朝食をいちばんたいせつにしていて、たっぷりと時間をかけて食べるのだという。だからメニューも豊富。
歩いて15分くらいのところに行くよ。すごく楽しみ。
うきうきモードのYと街を歩く。
10月下旬のイスタンブールの気温は最高が15度前後、最低が10度前後。朝は少し肌寒い。
しかし、お目当てのレストランは、開店していたけれどシェフがまだ来ていない、ということで朝食がなかった。Yは気の毒なほど落胆している。
ちょっと散策して、かんじのよさそうなレストランに入った。開店したばかりのようで、レストランの家族が朝食をとっていた。
いわゆるトルコ式朝食とYが大好きなグラノーラ+ヨーグルト、それにチャイ(トルコの紅茶、定番)をオーダー、美味しかったな。
…なんて一文で終わらせてごめんねトルコ式朝食。
▪️トプカプの悲劇
「まずはトプカプ宮殿だね。ここから近いよ」
グーグルマップを見ながらYが言う。
これも私と違うところなのだけれど、Yは地図に強い。方向感覚というのか、それがものすごくある。私は生まれつき(と、母が言っていた)方向感覚が絶望的にない。なので、とても助かった。
今日は旅行中、一番アクティブな日になる予定。
イスタンブールの観光名所3つがセットになった優先チケット(チケット売り場に並ばずに入場できる)を事前に購入していたのだが、1日限定なので、今日中に3つこなす必要があるからだ。
トプカプ宮殿。とても楽しみにしていた。
オスマン帝国繁栄のシンボル。半島の先端部分の丘にあって、三方にボスポラス海峡、マルマラ海、金角湾がある。トプカプってかわいい音の名前はトルコ語で「大砲の門」という意味。ボスポラス海峡側に大砲があったことからつけられた。
メフメト2世によって建造された皇帝(スルタン)の住居であり政務が行われた宮殿。後宮(ハーレム)もある。
メフメト2世によって東ローマ帝国(ビザンティン帝国)の首都コンスタンチノープルが陥落したのは1453年のこと。「コンスタンティノープルの陥落」と呼ばれる出来事だ。そのままのタイトルの塩野七生の小説は20代のはじめにぞくぞくしながら読んだ。
メフメト2世は帝都の名をイスタンブールと改名してトプカプ宮殿を建てた。メフメト2世の次の次の次の皇帝が、我がスレイマン1世。ハーレム含めて「オスマン帝国外伝」の舞台でもあり、ファンにはたまらない場所なのです。
ここはじっくりと、日本語のオーディオガイドを聴きながら、まわりたかった。
9時から営業開始。朝食をすませてテクテク歩き、9時ちょうどくらいにトプカプ宮殿に到着。セキュリティチェックを通って中に入る。すんなりと。
日曜日だし、混んでるかと思ったらすいている。よかった。優先チケットなんてなくてもだいじょうぶなくらいじゃない。
余裕でチケット売り場に行き、日本語のオーディオガイドがあることも確認し、余裕で予約のQRコードを係の男性に見せた。
すると、彼はさらりと言った。このチケットはここではない。一回出口から出て、門の外でチケットをゲットする必要がある。
チケットは私の担当だった。
Yが言う。「チケットの画面見せて」。私はおそるおそるiPhoneを差し出す。画面をスクロールしたのち、Yが冷静な声で告げた。
「集合場所が書いてあるね。門の外の広場だね。30分ごとの集合時間だね」
「えー、せっかく早く入ったのに一回出るのお?」
私のミスなのにふてくされるだなんて、よくありません。ごめんなさい、と謝罪。
トプカプ宮殿はとにかく広い。門までもかなり歩く。歩いているうちに、団体観光客でおそろしいほどの列が形成されてゆく。1秒ごとに100人増えるイメージ。どこにいたんだ、この人たちは、というくらいの人、人、人。
その波にあらがうように出口から出る私たち。彼らは、私たちは30分で観光を終えたと思っただろうか。
集合場所に行くと、同じルートでチケットをとった人たちが集まり始めている。30人くらいかな。
時間になったところで係の男性が僕についてきてくださいね、と言って歩き始める。この傘が目印です、と言って。黒い傘を見失わないようについてゆく。
行列はさらに長くなっていた。空は雲ひとつない、というくらいにさわやかに晴れ渡り、そしてイスタンブールの太陽はとても強く輝いて、そんななか、私たちは傘の男性について、よちよち歩き。
なかなか進まない。いったい何十分並んだことだろう。
優先チケットなんか買わずに、ただ来てチケットを買っていたらさっさと入場できたのに。悔やんでも悔やみきれないとはこのことよ。
そして先ほど追い返されたチケット売り場が近づいてきたとき、私は重要なことを思い出した。
「日本語のオーディオガイドがないと!」
「このチケットにはそれは含まれていないみたいだね。傘の人、何も言っていなかったし」
「日本語のオーディオガイドがないと!」
私の悲痛な叫びに、Yが動いた。
「ちょっと待ってて。傘の人を見失わない程度に」
そう言って、チケット売り場に走ってゆく。日本語のオーディオガイドがあったところだ。感動で目をうるませて、私はYの後ろ姿を眺める。ありがとう!
けれど、息を切らして戻ってきたYが告げたのは「私たちのチケットでは借りられないってよ」という残念すぎる事実だった。
がーん。なんてことだ。優先チケットのばかばかばか。優先チケットなんか買わなければよかった。
「Headoutのサイトに口コミを書こう。みんなに知らせてあげよう」と復讐めいたことをつぶやく私。やれやれといった表情のY。
わかってる。説明をちゃんと読まなかった私がすべて悪いのよ。
それでもなんとか、団体観光客の一員として黒い傘の人に導かれて宮殿のなかに入った。
一緒なのは入場までだから、そこからは自由なわけだけれど、日本語オーディオガイドがあるもんね♪と余裕でいた私にとって、自由すぎて呆然。
ハーレムの前で解散したから、そのままハーレムからまわり始めたけれど、すでにそこは人の海だった。
しかし、もういろんなことが残念だけれど、ここがトプカプ宮殿のハーレム、となるとやはり「オスマン帝国外伝」のテーマソングが脳内で鳴り響き始めるのだった。
テーマソングをハミングしたら反応する人がいるに違いない。世界で8億人が視聴したとされるドラマなんだから。とは思ったが、ハミングして仲間を探す勇気は、私にはなかった。
ハマム(浴場)に立ち、ここで女たちが髪を引っ張りあったり、口ぎたなく罵り合ったり、ライバルを殺しちゃったりしたのね…軽薄な感慨にふけったりはした。
印象に残ったのは、やはり美しい装飾。美しいタイル。テラスから眺めたボスポラス海峡。
そして皇帝や高官たちが重要なことを決定した「会議の間」。ここには皇帝が格子の窓越しにこっそり会議の様子を眺める覗き部屋があって、私はそのあやしいしくみにぞくぞくしていたので、ぜひとも訪れたかった。そこでは自らお願いして写真を撮ってもらった。
それにしても。この程度の観光ではあまりにも惜しいから、と、ちょうどYと同じ年齢の25歳のとき「アートサロン時間旅行」を始めたのにね。ちゃんと事前学習をしてこなかった自分に落胆。そしてこれはいくつかの観光名所でいちいち痛感することになる。
写真をあげて「トプカプの悲劇」を終えよう。
▪️イスタンブールでシーシャを
トプカプ宮殿にはそれでも2時間くらいいたのだろうか。疲れたから休憩しようと観光客でびっちびちの宮殿周辺を歩き、いかにも観光客向けのレストランの雰囲気に惹かれて入店。
外のテーブルではなく、中のいかにもトルコっぽい敷物が引かれた、床に座る形式の席を選ぶ。
Yはチャイとトルコスイーツのキュネフェ(たぶん)をオーダー。私は前夜も飲んだトルコビールEFES(エフェス)とそれからシーシャ(水タバコ)を。
「はじめてなので、吸いやすいものを選んでください」と店員さんに伝えた私に、「一番高いのを、と言っているようなものだ、いいカモすぎる」とYがあきれている。
イスタンブールでシーシャを。
これに憧れていたのではしゃいでしまった。
観光客用に用意されているショールつきの帽子を店員さんがかぶせてくれる。ふつうなら拒む場面だ。けれど拒んだりしない。きゃあ。トプカプ宮殿の女官みたい。喜んで写真を撮ってもらった。そして「女官シーシャ写真」をお友達何人かに送るなんてことをしてしまったことをいまは強く悔やんでいる。恥ずかしい。ごめんなさい。
でも、ひとりだけ送ったことを悔やんでいないお友達がいる。5年前に「オスマン帝国外伝」を勧めてくれたMさんだ。彼女にはイスタンブールに来たことを知らせたかった。
「シーシャ、いま日本でもはやっていて、私のお友達はよくシーシャカフェに行ってるよ」
「え。そうなの? 全然知らなかった」
「あ、いま調べたら祐天寺にもあるよ。家から歩いて2分くらいのとこだよ」
「……。ト…トルコで、イスタンブールで吸うからいいんだよ」
そしてYがオーダーしたトルコスイーツは強烈だった。
「キュネフェ」(たぶん)は、細いパリパリの麺のなかにチーズとピスタチオがたっぷり入っていて、それがシロップにとっぷり浸してある。私は一口でダウン。Yも、うーん、という表情。強烈すぎるよね。
▪️エジプシャン・バザールでショールを
レストランでゆっくりとシーシャタイムを過ごしたら活力が戻ってきた。
優先チケットの期限のため、今日中に訪れなければならないアヤソフィアと地下宮殿は長蛇の列だった。そこで団体観光客がいなくなる夕刻、閉館ぎりぎりを狙うことにした。予定変更だ。
歩いて20分くらいかな、「エジプシャン・バザール」に行くことにした。20分くらいだったと記憶しているけれど、とにかく坂道が多いので、ものすごい運動をしている気分になる。
ところでイスタンブールではあちらこちらで焼き栗と焼きトウモロコシが売られている。冬の風物詩なんだって。
ふたりとも焼き栗が大好きなので、食べながら歩いた。日本の焼き栗よりも大きめで、硬くて乾いるかんじ。硬めが好きなので、美味しい美味しいと喜び合う。栗というよりお芋ってかんじ。焼き栗は毎日食することになる。
エジプシャン・バザール(スパイス・バザール)は、トルコ3大バザール(アーケードつき市場)の一つ。
もう、呼び込みがすごい。もちろん「アー・ユー・シスターズ?」攻撃の嵐だ。
入りたいお店があっても、あまりにも濃い顔と濃い勧誘にぐったりして入れない。
そんななか、ぐったりを振り切ってでも入りたいお店があった。ショールの専門店だ。美しい色彩のショールが目に飛び込んできたものだからたまらない。
おじさまがさっそくすりすりしてくる。
いろんなショールを取り出して、首に巻いてくれる。いくつか迷ったけれど、最初に目に飛び込んできたものを買うことにした。
シルクでなめらかな肌触り。とってもきれい。黒いコートに合いそう。
これを買うよ、って言ったのに、まあまあ、とおじさまは会計をしてくれない。2階にいいものがたくさんあるから、見ていくだけ見ていってよ、と。
ショールが好きだからなあ。つい2階へあがってしまった。
そこには15万円を超えるショールがたくさんあった。高すぎて無理だよ、と言っても、いいのいいの、巻くだけ、とおじさまは私の首に次から次へとショールを。
Yが近くにいるから安心だけど、だんだん居心地が悪くなってきた。私の首や襟元の肌にふれるおじさまの手つきがあやしくなってきたからだ。
お金とりますよ、と言いたくなったところで、ふりきって、会計をお願いする。
お店を出ようというとき、おじさまの友人らしいおじさまが「アー・ユー・シスターズ?」と言いながらニコニコ近づいてきて、私のほっぺをぷにっとつかみ、ぷるぷるとさせた。プリティとかいって。
こんなふうにされたのは子どものとき以来? 突然すぎてされるがままになってしまった。フレンドリーすぎるだろ。
そんな友人を笑いながらお店のおじさまが言う。ごめんね、彼はクレイジーなんだよ、って。
クレイジーな友人を店に入れないでください。
▪️フェリーでサバサンドを
エジプシャン・バザールをぶらぶらしたのち、近くにフェリー乗り場があるんだよね、ということで「フェリーに乗ろうよ」とYを誘った。 ボスポラス海峡を船で渡ってみたいんだ、と。
「船酔いするからなあ、でも酔い止め持ってきてるからいいか」とY。
「名物のサバサンドを食べながらフェリーに乗るのがおすすめ、ってなんかのガイドに書いてあったよ」
エミノニュというフェリー乗り場でサバサンドを買う。これまたぎょっとするほどに大きい。
「観光客向けの遊覧フェリーではなく、地元の人が日常的に利用するフェリーが安くていいって」とどこかで得た知識を披露する私。「カドゥキョイ行きに乗ればいいみたいよ。たしか15分くらいだって」
かなりアバウトな情報だけど、たまたまカドキョイ行きが出る寸前だったので飛び乗ってしまった。チケットはなくてクレジットカードをタッチするだけ。
そしてビッグなサバサンドを食べながら、海を眺めながら、フェリーを満喫。…していたのだが、しだいに不安に。
ぜんぜん着く気配がないね。ほんとにこれカドキョイ行き? それに行きってことは行きっぱなしだよね。時間がないから着いたらすぐにまたフェリーに乗って帰らないといけないね。そういうことになるね。でもほんとうにカドキョイ行き?
海風に頬を叩かれながら、隣にいたお兄さんに尋ねると「カドキョイ行きだよ」と教えてくれたので一安心。
カドキョイに到着して、街の風景を一枚だけ撮って、すぐにフェリーに。カドキョイ滞在時間は3分。
▪️無感動のアヤソフィア
今日中に訪れないと優先チケットがフイになってしまうアヤソフィアと地下宮殿に行かなければならない。
徒歩20分ちょっとだったかな、坂道だらけの道を「アー・ユー・シスターズ?」を浴びながら急ぐ。
17時で閉まってしまうアヤソフィアはやはり人が減っていた。急いで歩いたから、ぎりぎりの時間に滑り込むことができた。
アヤソフィア(ハギア・ソフィア大聖堂)。
イスタンブール観光の名所のひとつ。だから団体観光客が多いのだ。
2度の焼失を得て、東ローマ帝国(ビザンティン帝国)の皇帝ユスティニアヌスが再建した。6世紀の話。
15世紀にオスマン帝国が東ローマ帝国を滅ぼしたとき、教会を破壊することはせず、モスクとして転用したということにも、なにかとても興味をひかれていた。
異教徒の祈りの場なら破壊して当然だろうに、立派な建物だからちょっと手を加えてモスクにしてしまうなんて。なんだかちょっと、ちゃっかり感がある。いや、歴史的建造物を守ってくれたのだ。ありがとうユスティニアヌス。
手を加えるというのは、イスラム教は偶像崇拝禁止だから、聖人が描かれた壁画などを漆喰で塗りつぶすといったこと。
そう、イスタンブール、聖人像とか宗教画がまったくないのが、じつに新鮮だったな。
アヤソフィアの歴史はとても複雑だ。
モスクじゃなくなったり博物館になったり、またモスクになったり。そう、またモスクになったのは2020年のことだからつい最近。エルドアン大統領によって。このあたりも政治のにおいがぷんぷんして面白いから調べてみてください(放棄)。
しかし、スカーフをかぶって少しだけそんなことに想いを馳せたけれど、アヤソフィアで感慨にふけることはなかった。中はやはり混雑していたし、かつて異国のどこかで見たような風景にしか映らなかったからだ。
有名だからと無理やり感動しようというのは体に悪い。感じないものはどうしようもない。
▪️地下宮殿の感動(チケット)
アヤソフィアを出てすぐ近くの地下宮殿に向かう。
そして、ここで私たちは激しい感動を味わうのであった。
地下宮殿は遅くまで営業していることもあり、相変わらずの長い行列だった。これに並ばなけれはいけないのならパスしてしまおう、と疲れ始めていた私たちは頷きあった。行きたいけどね、地下宮殿。名前がそそられるよね。神秘的だってよ。
列のところにいるスタッフの人にチケットのQRコードを見せる。
どうせ、あそこに行けとかここに並べとか言われるんだろうな、と意味不明にふてくされモードになってしまうのは「トプカピの悲劇」のせい。
ところが! 「ここからどうぞ」だって。
そこは夢の優先通路。左側にぎゅうっと並ぶ人たちの羨望の眼差しを浴びながら私たちはスタスタスタと入場できたのであった。
これぞ優先チケット! Headoutは素晴らしい! 素晴らしいという口コミを投稿しよう!
Headout ヘッドアウトとはツアーなどの予約ができるオンラインサイト。トプカプの悲劇のときはさんざん文句を言っていたのだが、地下宮殿の優先感は感動的だった。
最高の気分で楽しみにしていた地下宮殿に。
地下宮殿(バシリカ・シスタン)は東ローマ帝国時代の巨大貯水池。アヤソフィアを再建した東ローマ帝国の皇帝ユスティニアヌスが建設した。6世紀の話。
地下にずんずん降りてゆくと、目の前いっぱいにそれはそれは神秘的な光景が広がっていた。
わあ、と声がもれる。ライトアップされた大理石の円柱の間を歩く。
映画『インフェルノ』の最後の戦いの舞台になっているので、一度観た映画だったけれど、ちゃんと観直してきていた。映画の場面がやはり浮かぶ。
でもだからなに。
そして、とてもきれいだけど、なんだかテーマパークみたい。色とりどりのライトアップをやめて、大理石円柱の間のオブジェもないほうが、そのままのほうが、雰囲気があると思うのだけれど。
ひとまわりして地下宮殿を出た。
▪️そしてYは気を失った
すでに外は夜が始まっている。
「今日はたくさん歩いた。さすがに足が疲れたね」と私。
iPhoneを見て「2万歩だって」とY。
さっき見かけたリフレクソロジーのお店に行こう、ということで意見が一致した。30分ね。それでリフレッシュしてから夕食に行きましょう。マッサージ好きなところは共通している。
ところがこのお店は失敗だった。
私の担当の人はけっして上手ではなかった。それにちょっと爪が伸びていて痛かった。
けれど、Yはもっともっと残念な人に当たってしまったのだった。爪で引っ掻かれ続けた30分だったよ。と来店前よりも疲れた顔をしていて気の毒だった。
「なんだか疲れがひどい。どうしたんだろう。それに眠くて仕方ない。なんなんだろう」
うつろな表情をしてふらふらと歩いている。
結局この日はスーパーマーケットでスナック類を買ってホテルに帰り、Yはそのままベッドに倒れこみ、ちょっと休憩してから…という言葉を残して、気を失ったように眠ってしまった。朝まで。そして私もシャワーを浴びて、1時間後には泥のような眠りのなかへ。
こうして長い2日目が終わった。