◆幸せについて
2016/06/21
幸せについて、とことん考えたりすることは、だいぶ少なくなったと思っていたのに、色々な刺激を受けたせいか、また考えて、サガンの言葉を胸におとす。
――幸せとは自分のしていることをけっして恥に思わない状態です。
いろいろな人が幸せについていろいろな言葉を言っているけれど、私にとってはこの言葉がもっともしっくりくる。
恥じないでいるなら、たいていの状況は切り抜けられるように思う。
逆に恥じているという感覚が拭いきれないでいるならば、周囲をうまく誤魔化せたとしても、私自身は不幸なのだろう。
さいきん、ふとしたことが頭に浮かぶのは、なぜか自宅のすぐ近くの歩道橋。
ものすごい交通量で、ぜんぜん爽やかじゃない光景と、深く息をすることを拒否したい空気のなかで、言葉や、考えや、自分の心の状態が頭に浮かぶ。これ、なんだろう。
出かけたときの歩道橋でサガンの言葉を思い、帰宅のときの歩道橋で、今度はサガンからつなげてあるひとのことを思った。
クリスマスの日に、私に大切なネックレスを譲ってくれた、とても純粋なひとに、私はちゃんと伝えたかったのにうまく伝えられなかったように思う。
貴女は会ったこともない人からの悪意によって、とても傷ついているけれど、自分をけっして恥じていなくて、私はそんな貴女をとても誇らしく思うと。
そして私が誇らしいと思えるひとはほんとうに少ないから、どうか痛みに耐えて貴女にしかできない美を表現し続けてほしいと。
私はちゃんと伝えたかった。
想いを、そのタイミングでちゃんと伝えることは、こんなに難しい。でも、せめて、タイミングがずれたとしても、伝える努力だけはしたい。
多忙すぎる日々のなかで、大切なものを取りこぼさないためには、無理してでも、ひとりきりの空白の時間を作ること。
そうしないとうっかりと時だけが過ぎてゆき、人生をふるいにかけたとき、ふるいの上に残るものがほとんどないみたいな、そんなふうに、たぶん、なってしまう。
そんなことを、無理してひとりきりの時間を作ってみた後に、思う。