ブログ「言葉美術館」

◆かなしい事件、ミューズ。

2016/06/21

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イベント後の、いつもの脆すぎる状態、なんとかならないものか、と悲しんでいたら、お友達から嬉しい連絡があった。
私の「女神ーミューズ」を欲しい人がいるのだけど、アマゾンでは2万円以上の値がついていて買えないから在庫があればゆずってほしい、と。
何冊かうちにあるはずだ、と思って探したけど、自分用の一冊しかなかったので、あらためてネット上の本を買えるサイトをいくつかチェック。
そうしたらもう購入できなくなっていて、それでアマゾンの古本で、2万円以上のがならんでいる、という状態だった。
 
この間まで普通に購入できていたから、うっかりしていた。
あわてて、版元の編集部に電話した。
当時の担当編集者さんは別の会社にうつっていたから、電話に出た人に、「本はどんな扱いになったのか。断裁処分ならば、その前に著者購入でまとめて買いたい」ということを伝えた。
担当者から折り返し連絡するとのことで、すぐに電話が鳴った。
 
「お問い合わせの内容ですが、こちらは2007年に販売の書籍。すべて売り切ったので在庫はありません。重版未定という扱いになりますので、著者購入にもいっさい対応できません。そういうことですから、ご了承ください。それでは失礼します。」
 
この内容、なんにも問題ないでしょう。
ちゃんと私の質問には答えているし。
でもね、文章では表現しきれない、なんとも嫌なムードがありました。
 
電話の向こう側は、女性の方で、彼女が伝えることを伝えている間、私はいっさい言葉をはさめず、というかほとんど言葉を失い、それでも最後になんとか、
「もう、手に入れるすべがないということですね」
と言ったら、
「そういうことです」
という返答があった。
わかりました、と電話切って、通話時間みたら50秒。
 
私、こんな扱いされるの、久しぶりだなあ、と思った。
いいえ、そんな余裕なんてほんとはなく、昨夜は嫌な想いが胸のなかにうずまいて、なかなか眠れなかった。
 
あの、電話の女性のことを想像した。大きな会社の書籍編集部。おそらく、経験があり、私のような問い合わせもいくつもあるのかもしれない。
私にとってはすごく大切な一冊の本であっても、彼女にしてみれば、勤めている会社の膨大な書籍のうちの、一冊。それももう8年前、しかも、売れなかった。初版どまり。そんな著者からの電話。事務的に、一秒も早く済ませたい、という想い。
わからないではない。
 
けれど、もう少し、もう少し、言い方ってものがあるのではないでしょうか。
あんな、こちらを思いっきり落ちこませるような、あんな言い方しなくってもいいでしょう。
 
私が、有名な作家だったら、もっと違う言い方をしたのかな。相手で対応を変える人なのかな。
 
 
断裁処分だって、重版未定だって、それはしかたない、そんなのわかっている。
でも、私の胸のうちの、このどうしようもない怒りは、そこに向かっているのではない。
 
 「女神ーミューズ」。
 
私の大切な本が、凌辱された気分なので、ここに記す。おとなげなくても、もう、その出版社から本がでなくなっても、ぜんぜんかまわない。

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