■「サンギーヌ」と「アリカンテ」プレヴェールの愛の世界
2018/01/18
「ファスナーが稲妻のようにきみの腰を滑り
きみの恋する肉体の幸福な嵐が
くらやみのなかで
爆発的に始まった
きみの服は蝋引きの床に落ちるとき
オレンジの皮が絨毯の上に落ちるほどの音も立てなかったが
ぼくらの足に踏まれて
小さな阿古屋貝のボタンは種のように鳴った
サンギーヌ・オレンジ
きれいなくだもの
きみの乳房の突端は
ぼくのてのひらに
新しい運命線を引いた
サンギーヌ
きれいなくだもの
夜の太陽。」
Kさんからいただいた詩集、「サンギーヌ」というタイトルの詩があまりにも熱くて美しく、以前に感動したジャック・プレヴェールの詩を過去のノートの中に探した。
みつからなくて、さきほどようやく探し当てた。
訳は誰の手によるものなのかわからない。
親友が訳したものか、あるいは翻訳を仕事としている知人か。
タイトルは「アリカンテ」。
テーブルのうえにオレンジが一つ
絨毯の上にきみの服
そしてぼくのベッドのなかにきみがいる
今このときの愛しい贈り物
夜の涼気
ぼくの生命の火照り
地球の温暖化をとめることがきなかったとしても、まだ生きたかった人を殺す人間がいて、それをどうすることもできないとしても、私はプレヴェールのこういう世界を愛する。
プレヴェールはけれど恋愛詩よりもむしろ、社会に対する彼自身の目を持っていて、それを表現したことで知られている。
そう思うと、やはり、といつもの結論に達して安心する。
愛しい女性と共にいる風景をこのように美しく熱く描写するその感性は社会に向っても美しく熱く伸びてゆくのだと。
久々に、何度目かの「天井桟敷の人々」(プレヴェール脚本)が見たくなりDVDを借りることにした。買ってしまうかもしれない。先日「ドリームガールズ」買ったばかりなのに。