■ケアしながら生きる 「人間の覚悟」 五木寛之■
2016/05/18
「人間は、たとえ意識がないように見えても、魂、というとおかしいかもしれませんが、目に見えない、科学的に証明できないものを持っているようです。
それを含めて私たちはその人を介護し、ともに抱えこんで生きていくことで、人間の全体的な生存状態が確立されるのだろうと思います。
だからこそ、人は常に自分にとっては厄介な、自分以外のものをケアしながら生きていかなければならないと私は考えているのです」
図書館で借りてきて、側に置いておきたくなって、購入した一冊。
長い間、意識がない状態のままの、あのひとのことを時々(冷酷だ)、思い出して、意識がないまま生きながらえるのをきっと嫌うだろうあのひとの痛みを感じてきたけれど、もしかしたら、それは違うのではないか、と思った。「違わないかもしれないけれど、違うのかもしれない」と思った。
そういう意味で、とても新鮮な本だった。
いま、机の上のメモには、自らが命をかけて表現したいものは何か? という殴り書きがある。
「人間の覚悟」には「伝えたい」というエナジーが、たしかにあった。
老いとか死とか鬱とか、そういうテーマを扱いながらも、静かな人間肯定があって、読後感は安堵感に、とても近かった。