■■苦しみを甘やかしてくれるひと■■
2016/06/27
はじめて会った女性の方ふたりと、お話をする機会があった。
ふたりとも、どこかたたずまいが似ていて、二十代の中ごろで、かんじやすいひとみをしていていた。
彼女たちからいろんな質問を受けた。たとえば。
「路子さんというひとはどんな経験をなさってきたのですか、どんな体験をして山口路子というひとがつくられたのですか」
その様子がおかしくて笑いながら「すらすらと答えるのは不可能です。本をお読みくださればすこしはわかるかもしれません」と言う。
順番としては、『女神 ミューズ』『美神(ミューズ)の恋』『うっかり人生がすぎてしまいそうなあなたへ』『いい男と出会えていないあなたへ』『軽井沢夫人』。と、しっかり宣伝する。
とはいえ、これは本当で、私だって好きな作家をみつけて、そのひとのことを知りたいと思ったら、そのひとの本を読みまくる。なぜなら、きっとそこに、そのひとがいるから。そのひとを感じることができるから。
こんな質問も。
「どんな男性が好きなのですか?」「好きな相手に期待することは?」
こういう質問には、なぜかいつもたじろぐ。
なぜだろう。ちょっとうろたえるかんじ。
それで私はそのとき、ちゃんと答えなかったけれど、今後似た種類のことを訊ねられたときのために、意味不明にたじろがないようにしたい。
と、真面目に考えて昨夜ひとつの答えをみつけた。
私の苦しみを甘やかしてくれるひと。
これなのだろうと。
そして相手に期待することは、
私を見抜いてほしい。
これなのだろうと。
一週間後には違うことを言っているかもしれないけど。
そ
れがたとえ一時間弱のティータイムであっても、数時間のアルコールの時間であっても、私という人間に関心を向けてくれて、私から何かを得ようというひとみをもつひとには、私はその時間限定ではあるけれどほとんど、そのひとにのめりこむ。
彼ら、あるいは彼女たちの人生を知りたいと願ってのめりこむ。
こちらの心身の状況にもよるけれど、なけるほどのいとしさをかんじる瞬間をもつこともある。
出逢いの重さをこのところ感じる回数が多い。
今朝の雨はつめたかった。
からだがとても疲れているので、裸でマッサージが受けられるあのサロンに行こうかな。それを目標に仕事をかたづけようかな、でも夕刻までにその両方ができるかな、などと考えながら今日という日がはじまる。
*絵はクノップフの「我が心は過去に涙する」。