■「女の書く自伝」 キャロリン・ハイルブラン■
2016/06/28
「彼女は愛される必要があり、それを知っていた」
ヴァージニア・ウルフやメイ・サートンについて語られているから、と尊敬する方からすすめられて読んだ本。
読んだのは去年の終わり。
心に残ったところをメモしておこうとずっと机の上に置いてあった。
1992年発行だから感覚に時代のずれみたいなものもあるけれど、面白かった。
特に私が興味をもっているヴァージニア・ウルフとその夫レナードとの関係性について、色々な見方をしている人がいることを知って、それだけでも収穫はあった。
みんなそれぞれの立ち位置から勝手なことを言っている。
他人の結婚生活なんて誰にも真の姿はわからないのに。
なんて言いながら、私もいろんなところで勝手に他人の人生を書いたりしているのだけど。
ウルフはレナードと結婚しながら女性を愛した。
著者のハイルブランは次のように言う。
「ヴァージニア・ウルフは、いっしょに住む養育的な男と自分を愛してくれる女たちを見出した。彼女は愛される必要があり、それを知っていた」
そして、それを「知っていた」のはウルフの
「必要性からか天才からか、またはその両方」
なのだと。
「愛される必要があり、それを知る」こともまた才能のひとつ。そういうこと。
今回は本文中で引用されていた「ダロウェイ夫人」の抜粋箇所が胸にとまった。
「時がマストの上ではためく。そこで、わたしたちは立ち止まり、そこにしばらく立っている。かたくなに、習慣の輪郭だけが人間のからだを支えている。中身はからっぽなのに」
(「ダロウェイ夫人」 ヴァージニア・ウルフ)