■「夜のパリ」、飢えてプレヴェール
2018/01/18
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「夜のパリ」
三本のマッチ 一本ずつ擦る 夜のなかで
はじめのはきみの顔を隈なく見るため
つぎのはきみの目をみるため
最後のはきみのくちびるを見るため
残りのくらやみは今のすべてを想い出すため
きみを抱きしめながら
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飢えてプレヴェール。
好きな世界にはいりこむ。
たぶん、そのまなざしがすごく好きなのだと思う。視線の動きというか、瞳の温度みたいなのが。
その空間に積極的な音はない。BGMもいらない。吐息だとか、シーツのこすれる音だとか、咳払いだとか、外の車とかエアコンの音だとか、遠くに聞こえるサイレン。そういうのがいい。
状況を設定できるなら、大雨の降る昼下がり。天気の良い日が続く休日の夕刻。ほかのことを何も考えずに、ただ、それだけでいい。そんなふうに思える瞬間。
きっと。こんなことを夢見続けていくのだろうな。
プレヴェールの夜のパリ。
久しぶりにパリに出かけたのは、サガンをほぼ書きあげた直後の、ちょうど今頃だった。もう三年前。
いまは、外国にそれほど惹かれない。ローマでカラヴァッジョの絵は観たいけれど。
だからといって国内ですごく行きたいというところもない。
いまの一番のよろこびは、週に一本のペースで仕上げる約束をしている物語ができたとき。
できた! と思った次の瞬間から次の物語を作りはじめるのだけど、らくなことじゃないんだけど、それができたときがこんなにうれしいんだからやらないと。
自分に言い聞かせ、これを書き終えたら原稿に戻る。