◎しあわせの雨傘◎
2016/10/21
「しあわせの雨傘」、監督は先日書いた私が好きなフランソワ・オゾン。
主演はカトリーヌ・ドヌーヴ。
私はカトリーヌ・ドヌーヴのファンで、彼女が出ているだけでつい見てしまう。
私生活もマストロヤンニとの恋とか、ロジェ・バディムとの恋とか、興味深くて、年齢の重ね方も潔くて好き。
年をとることはぜんぜん悪くない、と思える。
強くて優しくて悪びれていなくて、私にはないもので構成されている女性、という感じ。
オゾン×カトリーヌ・ドヌーヴだから映画館で観たかったのだけれど、行けなかった。DVDで借りられるのをずっと待っていた。
それで、この「しあわせの雨傘」、よかった。
観終わったあとに、しあわせな色彩がふわーっと胸に広がる、そういう映画だった。
せつなさ、苦しさ、悲しさ、そういうのがなくったって、こんなに涙は出てくる。
ラストシーンはカトリーヌ・ドヌーブの熱唱で終わるのだけど、その曲名が「人生は美しい」。
昨年亡くなったフランスの偉大なるミュージシャン、ジャン・フェラの曲。
深刻な交通事故を生き延びたシャンソン歌手イザベル・オーブルのために1960年に書いた曲。
歌い終わった後、カトリーヌ・ドヌーヴが言う。
「そうよ、人生は美しい」。
これで映画は終わる。
ひとりで観ていた私、偉大なる女優に向かって、何度もうなずいていた。
何かを始めるのに、もう遅すぎるなんてことは、ぜんぜん、ない。
ということを、おしつけがましくない陽光のなかで感じられるような映画を観られたことはとても嬉しい。