◎ダイアナ・ブリーランド◎
2016/06/11
気づいてみれば昨年はあまり映画を観なかった。
映画館でも家でも。
映画中毒みたいな季節もあるのに、気づいてみれば「あまり映画を観なかった」だなんて、自分の言葉とは思いたくない。
今年はじめての映画は、1月初旬に文化村で「ファースト・ポジション」。
バレエに人生をかける少年少女たちの姿。バレエをやっている姪とその母(私の妹)、そして私の娘の4人で観た。ドキュメンタリーで、わりと面白かった。
ああいう世界に生きていたこともあったような。勝ち負けが全ての世界ね。一瞬で勝負か決まる世界。一日でも練習を休むことは許されない世界。小学校では珠算で、中学高校ではテニスで。
そんな私がどこがどうなったら、こんななまけものになるのか。人生は不思議。
二つ目の映画は1月下旬、シネマライズで「ダイアナ・ヴリーランド」。
ひとりきりで観た。
この手の映画は、カップルが少ないのでほっとする。男も女もひとりきりで観に来ている人が多い。
さて。ダイアナ・ブリーランド。
伝説のファッショニスタ、「ハーパース・バザー」のカリスマ・エディター、「ヴォーグ」編集長。
とにかく20世紀ファッション界の発端はいつも彼女だった、といわれている。
シャネルより20歳くらい若い。
そしてシャネルと同じくらい長生きした。86歳。
晩年のインタビューがこの映画をナビゲーションする。しわがれた声、自信に満ちあふれた瞳、尊大なオーラ、誰かに似てると思ったら、シャネルその人だった。
ただ、ダイアナは結婚して息子たちもいる。
でも、息子たちのインタビューなんかをみると、ほとんど家庭をかえりみず仕事に没頭していたよう。息子たちは淋しかったんだよう、みたいなこともちらつかす。
ほらね、と私はこころのなかでひとり言。
これだけの仕事量こなして、これだけの名声を手に入れるには、家庭、子どもたちのことに手をまわしていたら不可能。
よくぞ、「産んだ」な、と思う。
産むだけだって、大変だから。
そんなふうに思うから、私はダイアナを、
「シャネルが結婚して子どもを産んだらこんなふうになっていたでしょう」
というような眼で見た。
あまり魅力的には映らなかった。
なぜだろう。
唐突だけど、ぜったいにこの方、狼は生きろ豚は死ねって考えているな、と思うからか。(この言葉、若いころは好きだったけど今は嫌い)。
こころのひだとか、強いのと弱いのとの間に存在する、迷うたましいみたいなものと縁がない人に見えたからか。
私、長生きできたら、どんなふうになっていたいかな。
なんて考えた。80を越えたくらいの年齢。想像もできないけど(生きているとは到底思えないから)、ダイアナみたいなのは嫌だな、シャネルみたいなのも嫌。
じゃあどんなの? っていうのもないけれど、マイナスの選択はけっこう人生に有効なので、「嫌」を認識しておく。