◎60本目『汚れた血』
【あらすじ】
愛の無いセックスによって感染する病気「STBO」が広まっている中、パリは彗星接近のため暑い日が続く。
アレックス(ドニ・ラヴァン)は、「STBO」の血清を手に入れ密売するため、恋人のリーズ(ジュリー・デルビー)に別れを告げ、父の友人マルク(ミシェル・ピコリ)に手を貸します。
そしてアレックスは、そこで出会ったマルクの恋人アンナ(ジュリエット・ビノシュ)に特別な想いを抱きますが…。
路子
ビノシュが『汚れた血』で注目されたのがよく分かる。演技がいっちゃっているもの。
何歳頃ですかね。
りきマルソー
路子
1986年公開だから22歳。
若い!!
『ランデヴー』の1年後なんですね。
『ランデヴー』の1年後なんですね。
りきマルソー
路子
ぷりぷりした若いビノシュだから、りきちゃんはあまり好きではないかもしれないけれど、やっぱり綺麗ね。
最近観た若い頃のビノシュの中では、一番好きかも。セリフも少ないから、演技で勝負をしている感じがします。
賞をとっているんでしたっけ?
賞をとっているんでしたっけ?
りきマルソー
路子
セザール賞主演女優賞ノミネート。カラックスも、本当にビノシュはすごいなと、思ったでしょうね。
息をフッてするシーンがかわいかったです。
りきマルソー
路子
若いビノシュは、飾らないし、生ビノシュという感じ。本当に20代のピチピチっとした、素の彼女を見ている気がする。
ビノシュとカラックスは恋人同士だったのよね。
おそらく『汚れた血』の時にふたりは知り合った。カラックスはビノシュに骨抜きにされて『ポンヌフの恋人』でも組んで、それから捨てられて精神を病んでしまったか何かで、いったん映画界から離れた、というのを聞いたことがある。
ビノシュとカラックスは恋人同士だったのよね。
おそらく『汚れた血』の時にふたりは知り合った。カラックスはビノシュに骨抜きにされて『ポンヌフの恋人』でも組んで、それから捨てられて精神を病んでしまったか何かで、いったん映画界から離れた、というのを聞いたことがある。
路子
映画界にオゾン監督やドラン監督みたいな人が登場すると、嬉しい驚きがあるけれど、カラックスのこの作品も同じね。ちょっと前になるけど。
同年代にはどんな映画があったんですかね。
りきマルソー
路子
例えば、ドヌーヴだと、どの作品あたりかしら。
くすぶっていた時代ぐらいですよね。
『ハンガー』の3年後、『インドシナ』の6年前みたいです。
『ハンガー』の3年後、『インドシナ』の6年前みたいです。
りきマルソー
路子
『ポーラX』は何年公開?
1999年です。
りきマルソー
路子
じゃあ『ポーラX』は、カラックスが映画界をいったん離れて、復活した後なのね。
『汚れた血』はアレックス3部作の2本目なのよね。
『汚れた血』はアレックス3部作の2本目なのよね。
(『ボーイ・ミーツ・ガール』『汚れた血』『ポンヌフの恋人』の3作品は、全作品ドニ・ラヴァンが演じるアレックスという名前の登場人物が主人公であるため、【アレックス3部作】と呼ばれている。また、ドニ・ラヴァンはカラックスと身長体重が一緒であり、カラックスの本名が「アレックス」であることから、カラックスの分身とされている。)
どの作品も主人公を演じているのがドニ・ラヴァンなんですね。
りきマルソー
路子
狂気を感じさせる俳優。
路子さんは、『汚れた血』を観たことがある、と言ってましたが、前回と感じ方は違いましたか?
りきマルソー
路子
「映画」を観ているような気がした。と、いうのも、最近はNetflixやHuluでどうでもいいような連続ドラマを観ることが多かったの。それでも観始めるとつい集中してしまっていたのだけれど…。
でもカラックスみたいに、命と引き換えに芸術を作っている人の作品と比べてしまうと、内容が難解であっても引き込まれるし、世界観が確実にある。映画のすごさを感じた。
でもカラックスみたいに、命と引き換えに芸術を作っている人の作品と比べてしまうと、内容が難解であっても引き込まれるし、世界観が確実にある。映画のすごさを感じた。
路子
『汚れた血』の感想じゃないわね、ごめん。
近未来的な話だったんですね。
りきマルソー
路子
しかもウイルス感染の話。今観るにはぴったりな映画。
たしかに。
りきマルソー
路子
映画の中の病気をエイズだという人もいるけれど、違うわよね。
愛のないセックスをすると感染する病気という発想が面白い。自分は愛のあるセックスだと思っていたのに、相手はそう思っていなくて感染してしまう、ということもあるでしょう?
愛のないセックスをすると感染する病気という発想が面白い。自分は愛のあるセックスだと思っていたのに、相手はそう思っていなくて感染してしまう、ということもあるでしょう?
あり得ますよね。そんなの悲しすぎる!!
りきマルソー
路子
こわすぎる(笑)。
路子
『昼顔』のミシェル・ピコリは、ひょろんとしたインテリの気持ち悪い男だったけれど、今回はがっしりと貫禄のある姿だったね。
何年たっても見た目が大きく変わらないような気がするのは、私だけでしょうか…。
今回はボス的な役柄でしたね。あんなに毛むくじゃらなのに、お尻はすっごく綺麗(笑)。
今回はボス的な役柄でしたね。あんなに毛むくじゃらなのに、お尻はすっごく綺麗(笑)。
りきマルソー
路子
えっ? ごめん、そこは見なかった(笑)。
発作を起こして注射を打たれるシーンです。真っ白なお尻は毛も生えてなくて。
りきマルソー
路子
お尻ってそんなに毛は生えないでしょう?
生えますよ、生えます(笑)。
りきマルソー
路子
アンナはアレックスに惚れているわけではないのよね?
アンナはマルクのことが好きですもんね。
りきマルソー
路子
子どもがじゃれているみたいなものかしら。
アレックスはアンナに対して特別な気持ちを抱いていたのですかね?
りきマルソー
路子
そうかも。恋人のリーズを捨ててきたぐらいだし。
アレックスがとても生き急いでいるように感じました。
りきマルソー
路子
それはあるわね。
死ぬことを大したことだと思っていない。
りきマルソー
路子
アレックスの友達が「お前はそんな小説が好きだと言っていた。お前の言葉も刃のようだ。火遊びもほどほどにしろ。お前は本を読みすぎて早熟になった。いやらしいほど。だからたちまち年老いてブラウン管みたいにべしゃっとつぶれる」っていうセリフがあったけれど、アレックスは読書を楽しんでいるのではなく、読書を通じて現実を見て人生を考え世界を感じている。だからかな。デカダンな感じや生き急いでいる感じがするのは。
りきちゃんも割と早いうちにお母さんの洗礼を受けて、フランス映画とか観ているでしょう? だからそういう部分があるような気がする。あらかじめ知ってしまっている、というような。
私も、読書に埋没している時は、死というものを身近に感じるの。
りきちゃんも割と早いうちにお母さんの洗礼を受けて、フランス映画とか観ているでしょう? だからそういう部分があるような気がする。あらかじめ知ってしまっている、というような。
私も、読書に埋没している時は、死というものを身近に感じるの。
その中に現実を見ている訳ですね。
りきマルソー
路子
そうそう。
路子
この映画は「疾走する愛」というのがひとつのテーマ。
有名なシーンはデヴィッド・ボウイの曲をバックに、町中を疾走するシーン。あのシーンを観るだけでも面白いよ、と誰かに言われたのを覚えてる。
アレックスの情熱的な生き方が、恋愛というかたちではないけれど、アンナに影響を与えて、彼女もラストで疾走する。
有名なシーンはデヴィッド・ボウイの曲をバックに、町中を疾走するシーン。あのシーンを観るだけでも面白いよ、と誰かに言われたのを覚えてる。
アレックスの情熱的な生き方が、恋愛というかたちではないけれど、アンナに影響を与えて、彼女もラストで疾走する。
路子
意味を考える映画というよりは…。
感覚?
りきマルソー
路子
そう。色彩とか映像、セリフのキレとか。
クローズアップされたシーンが多いですよね。
カラックスはバイクのシーン、好きですよね。
カラックスはバイクのシーン、好きですよね。
りきマルソー
路子
『ポーラX』でもあったね。
そうですね。『ポーラX』で、ドヌーヴが泣きながらバイクで疾走するシーンは、PVみたいでとてもかっこよかったですよね。
バイクのシーンは、カラックスのテーマである「疾走」を表現するのにピッタリですね。
バイクのシーンは、カラックスのテーマである「疾走」を表現するのにピッタリですね。
りきマルソー
~今回の映画~
『汚れた血』 1986年 フランス
監督:レオス・カラックス
出演:ドニ・ラヴァン/ジュリエット・ビノシュ/ミシェル・ピコリ/ジュリー・デルピー/ミレーユ・ペリエ