◎6本目 『アメリ』
2021/11/05
【あらすじ】
モンマルトルのカフェで働くアメリ(オドレイ・トトゥ)。
人々をこっそり喜ばせたり、妄想したり、ちょっとイタズラをしたりしながら、毎日を過ごす日々。
あることがきっかけで、ニノ(マチュー・カソヴィッツ)に出会い…。
私が初めて映画館で観たフランス映画が『アメリ』。母とふたりで観に行きました。
りきマルソー
路子
お母さんと行ったの?
そうなんです。私も中学、高校生くらいで大きいのに、よく母とふたりでフランス映画観に行ったりしていました。
りきマルソー
路子
今回家族でフランスに行く予定だということもあって『アメリ』を改めて観たのだけれど、割とハードなシーンがいくつかあるのよね。
たしかに。
りきマルソー
路子
そういう目で普段観ないけれど、本当は家族で楽しめるような映画ではない。
世間では、可愛くて、ポップで、おしゃれな映画と思われているけれど、結構きわどいシーンもあるし、暗いって言うと少し違いますが、ダークな部分を持つ女の人の話ですよね。
りきマルソー
路子
そうよそうよ。描き方でそうじゃないように見えているけれど、世間とコンタクトの取れない、とても暗い女の話。
私、あんなことするシーンあったかなと、思ってしまったわ。
フランスに行ったらアメリのカフェに、みんなで行こうと言ってるのだけれど、えっ?あそこのトイレでセックスしてたんだ…とかそういう話になっちゃうじゃないね(笑)。
私、あんなことするシーンあったかなと、思ってしまったわ。
フランスに行ったらアメリのカフェに、みんなで行こうと言ってるのだけれど、えっ?あそこのトイレでセックスしてたんだ…とかそういう話になっちゃうじゃないね(笑)。
(笑)。
ポルノショップのシーンもありますよね。
ポルノショップのシーンもありますよね。
りきマルソー
路子
ポルノショップで「いろんな形」の小物がピュンって飾ってあったり、凄いのよね。
何人が絶頂に達したとか考えていたり…でも、私もまるっきり同じ事を考えてたことがあるの。
何人が絶頂に達したとか考えていたり…でも、私もまるっきり同じ事を考えてたことがあるの。
路子
大学生の頃、ロマンティック系な女の子みたいだけれど、夜景が大好きだったの。夜景フェチ。何処にドライブへ行っても、とにかく夜景を見る、というのが自分の中であったの。車を持ってたりすると、誰もいない暗いところで、夜景が広がっているのを見るのがとても好きだった。
でもその時に、今、あの明かりのなかで、どれくらいの人達がセックスしてるんだろうって考えていたの。その中で、凄く良い感じでしてる人はどのくらいだろう、嫌だなって思いながらしてる人はどれくらいだろう…と、いうのを自殺したいと思ってる人は今どれくらいだろうと、同じ並列でいつも考えてた。だから『アメリ』を観た時、「あっ、同じ風に思ってる人がいる!」と、思ったの。
でもその時に、今、あの明かりのなかで、どれくらいの人達がセックスしてるんだろうって考えていたの。その中で、凄く良い感じでしてる人はどのくらいだろう、嫌だなって思いながらしてる人はどれくらいだろう…と、いうのを自殺したいと思ってる人は今どれくらいだろうと、同じ並列でいつも考えてた。だから『アメリ』を観た時、「あっ、同じ風に思ってる人がいる!」と、思ったの。
そう思い始めたきっかけがあるんですか?
りきマルソー
路子
ううん、無いと思う。でも、昔からそういうのを思ってた。思考がそういう感じ。だから、ホテルの窓を見てても、何組の人がしてるんだろうとか。
ホテルの窓は私もあります(笑)。
りきマルソー
路子
あるわよね!
それの延長線上だと思う。
それの延長線上だと思う。
『アメリ』を観に行ったことと、その後に観に行ったフランソワ・オゾン監督の『8人の女たち』でフランス映画が好きになって、フランス映画をよく観るようになりました。
よく観るようになってからすぐ後に、『8人の女たち』で好きになったイザベル・ユペール出演の『ピアニスト』を観ました。『ピアニスト』なんて観ちゃったから、観る映画が偏っているのかも…。
よく観るようになってからすぐ後に、『8人の女たち』で好きになったイザベル・ユペール出演の『ピアニスト』を観ました。『ピアニスト』なんて観ちゃったから、観る映画が偏っているのかも…。
りきマルソー
路子
でも『アメリ』と『8人の女たち』がスタートなんて、凄くカラフルね。
入りやすかったんだと思います。
りきマルソー
路子
カラフルで、綺麗な色彩。両方とも色が沢山あるわね。
iphoneのカメラにはフィルター機能があるけれど、クロームとかプロセスとかがアメリ色じゃない?
いつも思うの。ちょっとブルーがふわっとかかった色。とても綺麗よね。
iphoneのカメラにはフィルター機能があるけれど、クロームとかプロセスとかがアメリ色じゃない?
いつも思うの。ちょっとブルーがふわっとかかった色。とても綺麗よね。
ふたつの映画には「皮肉っぽさ」共通点としてあるような気がします。
りきマルソー
路子
『アメリ』は本当にそういう感じ。
今回観たのは4回目くらいなのだけれど、1度目は凄く有名だからと、DVDで観たの。評判の映画、おしゃれなんだ、という目で観て、そんなに入らなかった。
次に観た時は何歳ぐらいかしら…軽井沢で観て、『アメリ』ってこんな映画だったっけ?って凄く泣いた。
何にそんなに反応したかというと、それこそ「ミスフィッツ(はみ出し者・不適応者の意味)」。マリリン・モンローと一緒で「ミスフィッツ」な部分にとても共鳴して、『アメリ』ってこんなに哀しい映画なんだと、凄く泣いた記憶がある。
今回観たのは4回目くらいなのだけれど、1度目は凄く有名だからと、DVDで観たの。評判の映画、おしゃれなんだ、という目で観て、そんなに入らなかった。
次に観た時は何歳ぐらいかしら…軽井沢で観て、『アメリ』ってこんな映画だったっけ?って凄く泣いた。
何にそんなに反応したかというと、それこそ「ミスフィッツ(はみ出し者・不適応者の意味)」。マリリン・モンローと一緒で「ミスフィッツ」な部分にとても共鳴して、『アメリ』ってこんなに哀しい映画なんだと、凄く泣いた記憶がある。
両親の影響と、お父さんが決めつけた心臓病という理由で、学校に行かずお母さんから勉強を教えてもらっていた。だから外の世界との繋がりが無く、自分の殻に閉じこもったり、空想の世界に入り込んだり。外に出なかったから友達も出来ない。だから自分自身が友達みたいな生活を小さい頃からしてたんですかね。
りきマルソー
路子
環境はあるけれど、学校に行っていたとしてもアメリの変なところはあったと思う。「あの子ちょっと変わってるよね」、というものは持ってたはずよ。だから多くの人があまり反応しないところに反応したり、気付いたりする、という部分が例えば…みたいに出てくるのよね。普通の人が普通にしていることが出来ない。
路子
アメリの嫌いなもので「アメリカ映画のわき見運転」っていうのがあったけど、あれも一緒!
特に古いアメリカ映画って、ずーっと横見て話してるからぶつかるよっていつも思う。私、あれ本当に嫌なの。
特に古いアメリカ映画って、ずーっと横見て話してるからぶつかるよっていつも思う。私、あれ本当に嫌なの。
他の映画で「アメリカ映画のわき見運転」を観る度に、アメリの事を思い出しちゃいますよね。
りきマルソー
路子
あれ本当に一緒だったから笑った。私だけじゃなかったんだ!って。大嫌いな物の内のひとつ。
よく世間で注目されているところは、アメリの好きなことじゃないですか?
クレームブリュレのカラメルをスプーンで割るとか、そういう部分は凄く。
クレームブリュレのカラメルをスプーンで割るとか、そういう部分は凄く。
りきマルソー
路子
フォーカスされてるわね。
裏の部分というか、ダークな部分こそ面白いのに、あまり表立っていないですよね。
りきマルソー
路子
自分が選ばれた人間みたいな言い方をしてしまうといけないけれど、あそこに含まれている強烈なマイノリティへの共感や、そういう物に気付いてる人はどれくらいいるのかしら。誰にも分かってもらえないから自分の中で昇華して、自分の中で物語を作ったりする感じ。上手く自分が動いてる時は忘れていることもあるのだけれど…。
だからこそ、キラキラ映画みたいに言われているんですよね。そこに気付かないから。
りきマルソー
路子
別にそこに気付かなくても楽しめるものね。
路子
りきちゃんは、初めて観た時にどう思った?
当時は私もおしゃれでカワイイ映画だと思っていました。アメリのやることがいちいち面白いなとか。
りきマルソー
路子
何回くらい観てるの?
一時期、絵本の形でDVDが発売されていたのですが、誰かの誕生日だったり、誰かへのプレゼントとしてそれをあげていたんです。で、あげる時にあっ、また観ようと思い、観ていたので結構な回数観ていると思います。
りきマルソー
今度、ブロードウェイでミュージカル化するんですって。ジャンピエール・ジュネ監督はミュージカル化に嫌悪感を抱いてるけど、子どもの医療を支援する慈善事業に携わっている関係で権利を売ったって。違いますよね、やっぱりミュージカルではない。音楽も違う人らしいです。
りきマルソー
路子
ヤン・ティルセンの音楽の使い方が上手いのにね。それだけでも泣けてきちゃう感じ。
音楽は私も好きです。初めて買ったDVDも、初めて買った映画のサントラも『アメリ』です。
りきマルソー
路子
サントラは、私が持ってるヤン・ティルセンのCDと結構かぶっていたわ。あの音楽が映像と一緒に流れるだけでも切なくなっちゃう。
音楽がとても良いので、昔、耳コピ―をしてピアノで弾いたりしてました。
りきマルソー
路子
何コピー?
耳コピ―。耳で聞いて、ピアノで弾く。
りきマルソー
路子
りきちゃんってピアノ弾くの?
昔ちょろっと。
りきマルソー
路子
えっ? 初耳だわ!
(笑)。
りきマルソー
路子
じゃあ、これを聴いて再現できるの?
ちゃんと出来る人はもっと凄いと思いますけど、私はもの凄い時間をかけながらやってました。
りきマルソー
路子
おうちにピアノがあるのね?
あったんです。今は友達からもらったキーボードならあります。
サントラの中には結構ピアノの曲もあるので、それを弾いてひとりで楽しんだりしていました。
サントラの中には結構ピアノの曲もあるので、それを弾いてひとりで楽しんだりしていました。
りきマルソー
路子
りきちゃん、色々とアメリグッズを持っているけれど、写真集が結構ボロボロになってたわね(公開当時に出版されたソニーマガジンズ出版の『アメリのしあわせアルバム』)。
そうそうそう。年季が入ってますよね(笑)。
私が中学、高校生くらいの時ですかね。だから、17、18歳くらい? 10年ちょっと前くらいのものです。(と言いましたが、日本公開は2001年なので、私が中学生で14歳の時でした。記憶のあやふやさが恐ろしい。)
私が中学、高校生くらいの時ですかね。だから、17、18歳くらい? 10年ちょっと前くらいのものです。(と言いましたが、日本公開は2001年なので、私が中学生で14歳の時でした。記憶のあやふやさが恐ろしい。)
りきマルソー
それでフランス映画を好きになったし、フランス以外のミニシアター系映画を観るようになったきっかけにもなりましたからね。その前から『サウンド・オブ・ミュージック』などのミュージカル作品を観て、映画が好きだな、とは思っていましたが、ちゃんといろんな映画を観るようになったのは『アメリ』がきっかけかもしれないです。
りきマルソー
路子
お母さんがフランス映画好きで一緒に行ったの? 監督が好きだったの?
監督が好きとかでは無いと思います。公開当時って、話題作品だったじゃないですか? で、話題になって落ち着いた頃に行きました。だから映画館もそんなに人がいなかったと思います。
りきマルソー
路子
どこの映画館?
川崎のチネチッタが、まだ駅ビルの中にも映画館を持ってた頃に、そこで。
りきマルソー
路子
シネコン?
川崎に昔からあるシネコンです。
りきマルソー
路子
じゃあ大きなところでやっていたのね。
駅ビルにあった映画館は、ミニシアター系を多く上映していた小さな別館だったかと思います。
りきマルソー
路子
面白いのがあるから一緒に行こう、という感じかしら?
そうですね。母とは美術の趣味や映画の趣味が合っていたので、たまに一緒に出掛けることがあって、そのひとつです。
りきマルソー
路子
アメリが関わる人…例えばルノワールを模写しているおじいちゃんや、八百屋のちょっとぬけてる男の子、旦那さんが死んじゃった管理人のマダムとか。同じ悲劇や、たっぷりの哀しみを持った人物というのでも、描き方によっては全然違う。だから、おじいちゃんも、管理人のマダムも、全然違う描き方をされていたら、凄く悲惨な人生だったし、救いがなかったと思うの。だけど、それが一切省かれた感じで、どれだけ寂しい日常なのか、というのを全部観る者の想像力に委ねてる。そういう描き方をされているのが好き。その人達に対する描き方というか、光の当て方が多分あの映画を一見ポップな感じにしてるのだと思う。
寂しい中にも、一筋の光のようなものを持って生きていますよね。
りきマルソー
路子
そうそう。完全に絶望している訳ではないのよね。相当寂しいとは思うけれど、それでも生きていけるんだ、という励ましみたいな感じかしら。アメリからビデオが送られてくるみたいに、日々少しずつの楽しみや、ちょっとの喜びで人は生きていけるのね。
路子
あとは自分の忙しさや、アメリほど旺盛でない好奇心のせいで、どれだけのものを見落としているんだろうって思う。
例えば、ダイアナ妃が亡くなったニュースをアメリが観ている時に、缶の入れ物を見つけて持ち主を探そうと思う場面。そこまでにはアメリがずっと人との関係を遮断している、というのが前提にあるけれど、その缶の持ち主を見つけられたら自分の世界から飛び出そうと思っているのよね。それで探し始めるけれど、自分が缶の入れ物を見つけても、そうは思わないよな…と、まず思ってしまったの。
例えば、ダイアナ妃が亡くなったニュースをアメリが観ている時に、缶の入れ物を見つけて持ち主を探そうと思う場面。そこまでにはアメリがずっと人との関係を遮断している、というのが前提にあるけれど、その缶の持ち主を見つけられたら自分の世界から飛び出そうと思っているのよね。それで探し始めるけれど、自分が缶の入れ物を見つけても、そうは思わないよな…と、まず思ってしまったの。
うわぁーなんだろう! わあー凄い! とは思う。
りきマルソー
路子
どうしたら誰かに届けられるのかなー? と、置いておいておしまいかしら。届けてあげたら喜ぶだろうなとか、そこまでは思うかしら…。
例えば、りきちゃんに会った時に、こういうのが見つかったのだけれど、どうしたら良いと思う? どうしたら良いんでしょうねー? と、いうやりとりはするかもしれないけれど(笑)。
例えば、りきちゃんに会った時に、こういうのが見つかったのだけれど、どうしたら良いと思う? どうしたら良いんでしょうねー? と、いうやりとりはするかもしれないけれど(笑)。
路子
もうひとつは周りの人との関わり方。
ずっと閉ざしていたからこそなのだけれど、みんなをちょっとでもハッピーにする為に動くとか…。何か見落としてるものがあるだろうなって。だから、アメリの視線を忘れないでいたいと思った。
ずっと閉ざしていたからこそなのだけれど、みんなをちょっとでもハッピーにする為に動くとか…。何か見落としてるものがあるだろうなって。だから、アメリの視線を忘れないでいたいと思った。
見落としてるだけではなく、更に行動も加わるじゃないですか? 行動に移すのって難しいですよね。
りきマルソー
路子
難しいわよ。『メンタリスト』なんて観てるうちは余計難しい。余裕が無い。
路子
アメリは自分の中だけで完結していくけれど、視線は他人に向いてるのよね。閉ざしながらも他者を見ていて、他者に対する好奇心は常にある。それを行動に移して、他者と実際に関わりを持てるのか持てないのかは映画の中盤ぐらいから変わってくるけれど、それまでの20年くらいは関わりを持ってこないできた。
それが23歳でちょっと変わろうと思い、ようやくコンタクトを持ち始めるけれど、持ち始める前も凄い人を見てる。
人に対して好奇心を持つ、というのも私には無いなあ…。しかも、愛情ある好奇心というか、面白いな人間ってみたいな。それがこの映画を面白くしているんだと思う。普段、みんなが同じ景色を見ながら、あなた見落としてるでしょう?というのがよく見える。
それが23歳でちょっと変わろうと思い、ようやくコンタクトを持ち始めるけれど、持ち始める前も凄い人を見てる。
人に対して好奇心を持つ、というのも私には無いなあ…。しかも、愛情ある好奇心というか、面白いな人間ってみたいな。それがこの映画を面白くしているんだと思う。普段、みんなが同じ景色を見ながら、あなた見落としてるでしょう?というのがよく見える。
他者との関わりがなかったからこそ、今そういう好奇心が出ているんですかね? 幼い頃を補うというか。
りきマルソー
路子
うん、多分そうよね。
子どもって「なんで? なんで?」っていうのがあるじゃないですか。そういうのにも近いと思うし、余裕があるというか、きっと彼女の出来る範囲なんですよね。
彼女は、余裕があるとかはきっと考えていないと思います。自分が出来る範囲で動いているだけなんじゃないですかね。
彼女は、余裕があるとかはきっと考えていないと思います。自分が出来る範囲で動いているだけなんじゃないですかね。
りきマルソー
路子
なるほど。
そこに、缶の入れ物を見つけたことで、プラスしてちょっと一歩進んでみようと思った。それにも、自分が出来る範囲で成功したらっていう前提がある。自分なりの人生の進み方。
りきマルソー
路子
出来ないことは、しようと、最初から思っていない訳だ。変な高望みというのは確かに無いわね。なるほど。
じゃあ、あの缶の入れ物を見つけて、これを届けられたら自分の世界から飛び出そうと思うのは、人間の成長でその時が来たからとしか言いようがないの? でも自分でそう思っているんだものね。
じゃあ、あの缶の入れ物を見つけて、これを届けられたら自分の世界から飛び出そうと思うのは、人間の成長でその時が来たからとしか言いようがないの? でも自分でそう思っているんだものね。
水風船が割れたみたいな感じなんですかね。自分の中で急にパン!って。
りきマルソー
路子
でもそういうことってあるわよね。いろんな要素が混ざり、何がきっかけとは言えないけれど、何かが出てきてパン!って割れるみたいな感覚。あれが誰にでもあるようなその瞬間なんだろうなぁ。
恋の一目惚れはどう思う? 心臓がドクンっていうシーン。
恋の一目惚れはどう思う? 心臓がドクンっていうシーン。
ありますよね、そういうの。
りきマルソー
路子
やっぱりあるわよね。
路子
監督は『アメリ』の後に何を撮ってるの?
第一次世界大戦が題材として入っている『ロング・エンゲージメント』という作品です。オドレイ・トトゥと私の好きなギャスパー・ウリエルが出演しています。オドレイ・トトゥ演じる主人公もちょっと変わった子でした。
りきマルソー
路子
でもテーマは戦争なの?
婚約者の彼が戦争に行って戦死したと、周りが言っている中で、絶対に死んでいない、彼に何かあれば自分には分かるはずっていうの信じ続けてる。
りきマルソー
路子
観てないわ。私、多分戦争映画だから避けたのね。
その後は『ミックマック』ですかね。ブラックユーモアな話。
りきマルソー
路子
ジャン=ピエール・ジュネ監督の作品は、あまり観てないかもしれない。
その中でも『アメリ』は凄く評判になったのよね?
その中でも『アメリ』は凄く評判になったのよね?
フランス映画というと、みんな『アメリ』と答えるくらい有名ですもんね。
りきマルソー
路子
うん。フランス映画を知らない人でもね。
『アメリ』は流しておくだけでも良い作品。別に深く考えなくても、色彩とか動き的にも眺めてたい。終わり方がハッピーエンド過ぎたかな、という感じはするけれど。
『アメリ』は流しておくだけでも良い作品。別に深く考えなくても、色彩とか動き的にも眺めてたい。終わり方がハッピーエンド過ぎたかな、という感じはするけれど。
路子
オドレイ・トトゥはこれで人気が出たのよね?
そうですね。それまではフランスではセクシー女優みたいな扱いだったらしいです。
りきマルソー
路子
嘘!?
だから過去の作品を観ると、脱いでいたりします。
それが、『アメリ』に出演したことで『アメリ』のイメージがついた。そうしたら今度はそういう風にしか見られなくなってしまい悩んだ、みたいなインタビューを以前見たような気がします。
だから、最近の活躍を見ていると、日頃から言っていますが、良い干からび方をしてきたなって思います(笑)。
それが、『アメリ』に出演したことで『アメリ』のイメージがついた。そうしたら今度はそういう風にしか見られなくなってしまい悩んだ、みたいなインタビューを以前見たような気がします。
だから、最近の活躍を見ていると、日頃から言っていますが、良い干からび方をしてきたなって思います(笑)。
りきマルソー
路子
最近は何に出演しているの?
最近は『スパニッシュ・アパートメント』の続きの『ニューヨークの巴里夫(パリジャン)』じゃないですかね。あれは割と最近だと思います。フランスでは『青いパパイヤの香り』のトラン・アン・ユン監督が撮った『エテルニテ』にオドレイ・トトゥが出演しているみたいですが、まだ日本では公開が決まっていなくて(後に『エタニティ 永遠の花たちへ』という邦題で公開されました)。『ナタリー』とかも最近の作品ですかね。(といっても、2011年公開作品でした)
りきマルソー
路子
『ナタリー』は凄い良い映画よね。
うん、良かったです。あまり評判にはならなかったけれど。
りきマルソー
路子
『ナタリー』は『アメリ』と並んで、おしゃれでポップ、テイスト的には似てるわね。大好き。あの男優(フランソワ・ダミアン)はマヌケな顔で苦手だけれど、いろんな作品で見かけるのよね。
本当ですか?
りきマルソー
路子
この間もあー出てきた!! お前かー!!みたいな感じで(笑)。
コメディアンなんですよね。私も最近観たような気がする…。『神様メール』だ!
りきマルソー
路子
そうそうそう! あと他にも出てる。
『エール』にも出ていますね。
りきマルソー
路子
きっと人気があるのよね。あとは何に出演している?
『タンゴ・リブレ』
りきマルソー
路子
『タンゴ・リブレ』だ!
私、タンゴの映画全部観なおしてるから。『タンゴ・リブレ』にもこいつ出てたな(笑)。『タンゴ・リブレ』は良い映画よ。今、タンゴやっているからそう思うのかもしれないけれど。
私、タンゴの映画全部観なおしてるから。『タンゴ・リブレ』にもこいつ出てたな(笑)。『タンゴ・リブレ』は良い映画よ。今、タンゴやっているからそう思うのかもしれないけれど。
主人公がフランソワ・ダミアンなんですか?
りきマルソー
路子
そうなのよ。タンゴ踊るの。全然感じない(笑)。
路子
『アメリ』で一番好きなシーンって何処?
何処だろう…悩みますよね。
りきマルソー
路子
本当にフォトジェニックよね。
豆に手を突っ込むシーンとか結構好きなんですよね。手を突っ込んで、話しかけられてハッ!って手を引くシーン。
りきマルソー
路子
私、豆に手を突っ込むのも好き。
昔、うちが商売をやっていて、そのお店でああいう風に豆を売っていたの。昔だから缶々にそのまま入っていて、漏斗で量ってお客さんに売っていたのだけれど、いつもその豆に手を突っ込んでた(笑)。だから気持ちが分かる。本当に豆って気持ち良いの。
昔、うちが商売をやっていて、そのお店でああいう風に豆を売っていたの。昔だから缶々にそのまま入っていて、漏斗で量ってお客さんに売っていたのだけれど、いつもその豆に手を突っ込んでた(笑)。だから気持ちが分かる。本当に豆って気持ち良いの。
水きりの石をいろんなところで拾ってポッケに入れているところも好き。
りきマルソー
路子
あれはおまじないよね。どこかに行く時や、何かをする時に、息をフッ!と、やるのは多分何かの願掛けだと思う。
路子
私は小人が世界中で写真を撮ってくるのが好き。
あれ本当にあったんですよね。各地で写真を撮ってる小人の話って。確か実際にあった話だったと思います。
りきマルソー
路子
えっ? どっちが先?
分からない…。
りきマルソー
路子
映画でみんなが真似したのではなく?
どっちなんですかね。実際にもあったって何かで聞いたことがあります。
りきマルソー
路子
実際にもあった、という言い方をするということは、映画より先よね。実際にあったのをみんなが知っている前提で、アメリが真似した、ということなのかしら。
路子
あと、アメリがテレビを観ながらモノクロの画面に自分を当てはめるシーンも好き。自分の人生をそういう風に当てはめて、色々とシュミレーションしちゃうっていうのをよくやるから。
アメリと近いことが本当にたくさんあるんですね。
りきマルソー
路子
凄い共感するのよ。そうは見えないでしょ? 私も実際、「キャラクター的にも私ってアメリに似てるの。」と、言うと、みんなにブー!って吹き出されそうなのは分かるのだけれど、凄く共通点があるから、2回目に観た時に大泣きしたっていうのはそこなのよ。もう、気持ちが分かってわかって堪らなかった。今はもうちょっと汚れて摩耗しているから、そこまで泣けなかったけれど…。
路子
あの時は『アメリ』ってこういう映画だったんだって思ってボロボロ泣いた記憶はある。全員不器用でしょう?
だから多分、全員に共鳴したのかもしれない。哀しくてかなしくて堪らなくなった。アメリにも共鳴するのだけれど、いつも薬を飲み続けている人とか、ストーカー紛いの愛情表現が下手な彼とか、そういう人達全員に共鳴していたような気がする。
だから多分、全員に共鳴したのかもしれない。哀しくてかなしくて堪らなくなった。アメリにも共鳴するのだけれど、いつも薬を飲み続けている人とか、ストーカー紛いの愛情表現が下手な彼とか、そういう人達全員に共鳴していたような気がする。
アメリって、全部手伝う訳では無いですもんね。そういう人達に、最初のきっかけをポンって投げるだけ。全部御膳立てする人っているじゃないですか? そういうのとは違う。
りきマルソー
路子
そうそう、そういうのではない。それがさっき、りきちゃんが言ってたことでなるほどなと、思った「自分の出来る範囲でやる」という事にも繋がると思わない?
うんうん。
りきマルソー
路子
あくまでも自分が動ける範囲、無理のない範囲でってところなのよね。
路子
あとは、アメリが一目惚れしたニノがアメリのカフェに来て、写真を見せながら「これ、君だよね?」と、聞く場面。彼が帰ると、水になって溶けちゃうシーンはいつも笑える。
路子
アメリとニノはずっと仲良しのまま続くと思う?
喧嘩はしないけれど、お互いに何かあると落ち込みそう。
りきマルソー
路子
殻に閉じこもる。
そうそうそうそう!
りきマルソー
路子
(笑)。
これはお互い殻に閉じ込もるわね。喋らなくなりそう。それで人形とかに話しかけてそう。
これはお互い殻に閉じ込もるわね。喋らなくなりそう。それで人形とかに話しかけてそう。
そういえば私、アメリのベッドの上にある絵や、ベッドサイドにある豚の人形付きランプを作ったミヒャエル・ゾーヴァの展覧会も観に行ったんです。
りきマルソー
路子
そんなのもあったの? 『アメリ』オタクね。
そうですね。好きでしたね。
りきマルソー
路子
アメリの部屋も可愛いわよね。いわゆるパリジェンヌのアパルトマン、という感じ。
アメリって、小さい頃からやることが変わっていないですよね。
りきマルソー
路子
野イチゴを指に付けてピピピピって食べるとか?
それも多分大人になってもやってる。
りきマルソー
路子
やってる、やってる!
小さい頃、隣人に嫌なことを言われて、仕返しに意地悪するところとか。
りきマルソー
路子
サッカー中継の決定的場面でテレビの電源を切っちゃうとかね(笑)。
そういうのは昔からやっているし、大人になっても意地悪な八百屋の親父に、ちょっとした嫌がらせというか、イタズラをしますよね。靴のサイズを少し小さいのにするとか、扉の取っ手を逆にするとか。
りきマルソー
路子
最高の嫌がらせだと思う。
憎めないんですよね。
りきマルソー
路子
そうね。見てて笑っちゃうくらい。でも割と効果的。
地味にきますよね。
りきマルソー
路子
自分が狂ったと思っちゃうわよね。
凄く『アメリ』が好きだった頃、同級生に楠田枝里子、楠田枝里子って言われ続けて凄い嫌だった(笑)。
りきマルソー
路子
その同級生、少し親父くさいわね。 そういう親父っているわよ。ちょっと似てるところがあると、それだけで言う人って嫌いだなー。いるのよね、そういう人。
当時アメリの髪型にして失敗した人、いっぱいいただろうね。
当時アメリの髪型にして失敗した人、いっぱいいただろうね。
いると思いますよ。
りきマルソー
路子
似合う人はほんの一握り。
路子
お父さんのところに人形から手紙が届き始めた時に、心ここにあらずみたいなお父さんと食事をしてる場面も好き。
「最近どう?」ってお父さんが聞いているのに、聞いてる本人が話を聞く状態じゃないから「妊娠して、中絶を何回したわ」みたいに返しても、「そうか、それだったら良かった。」と、お父さんが何も聞いていないのを証明するシーン。何回観ても面白い。
でもそういう時ってあるわよね。私、やっちゃう。相手が上の空だった時に、今は何を言っても大丈夫なんだろうなと思って、アメリと同じようなことをやるの。それもやっていることが一緒でビックリした。「私この間寂しいし、3人の男の人が私のところに来たから、3人いっぺんに相手をしたら凄く気持ち良かった」と、ぼーっとしてる相手に言って、反応を見ようとしたりするのをよくやるから、あれっ?私と同じって思ったの。
「最近どう?」ってお父さんが聞いているのに、聞いてる本人が話を聞く状態じゃないから「妊娠して、中絶を何回したわ」みたいに返しても、「そうか、それだったら良かった。」と、お父さんが何も聞いていないのを証明するシーン。何回観ても面白い。
でもそういう時ってあるわよね。私、やっちゃう。相手が上の空だった時に、今は何を言っても大丈夫なんだろうなと思って、アメリと同じようなことをやるの。それもやっていることが一緒でビックリした。「私この間寂しいし、3人の男の人が私のところに来たから、3人いっぺんに相手をしたら凄く気持ち良かった」と、ぼーっとしてる相手に言って、反応を見ようとしたりするのをよくやるから、あれっ?私と同じって思ったの。
まず、路子さんを知りたければこれを観ろって事ですね!
りきマルソー
路子
(笑)。
違うわよー。そこまで似てないけれど、何だか分かるの。
やっぱり社会的な人間として適応しなきゃいけない、という意識があるから、理性というものがあるの。一生懸命ブレーキをかけたり、ここの部分は出さないようにする、というのは私の中で働いてる。でも、そういう部分を取っ払ったら、おもいっきりアメリみたいになれるはず。だって、そういう部分を持っているんだもの。妄想好きなところも似ているもの。
違うわよー。そこまで似てないけれど、何だか分かるの。
やっぱり社会的な人間として適応しなきゃいけない、という意識があるから、理性というものがあるの。一生懸命ブレーキをかけたり、ここの部分は出さないようにする、というのは私の中で働いてる。でも、そういう部分を取っ払ったら、おもいっきりアメリみたいになれるはず。だって、そういう部分を持っているんだもの。妄想好きなところも似ているもの。
アメリもニノも似てますよね。
りきマルソー
路子
そっくりよ。双子みたい。
アメリが変装して作った「あなたは私に逢うことを望む?」という写真に対して、彼女のおへその写真に「いつ、どこで?」と書き加える部分なんて、特にそう思います。
りきマルソー
路子
そうそう。ニノが写真を集める前は笑い声を集めていた、というのを知って、アメリが「何て面白い人なんだろう」っていう感じで凄く嬉しそうにするの。自分の感性と一致するということでしょう?
実は小さい頃から同じことを考えてた、というシーンもありますよね。窓際で鏡に光を反射させてキラキラさせるのをふたりともやってた。
りきマルソー
路子
ふたりのやってることを見てると、私がよく恋愛論で使うプラトンの話を思い出す。
天上の世界では完璧だったけれど、地上に落ちて半分になった。半分になったから、自分の半身、片割れを探さなくてはいけない。探した時に、初めてひとつの人間として完璧になる、それが運命の相手だみたいな言い方をするのだけれど、このふたりは正にそうよね。だから一目惚れとか惹かれていくことに納得がいく。
天上の世界では完璧だったけれど、地上に落ちて半分になった。半分になったから、自分の半身、片割れを探さなくてはいけない。探した時に、初めてひとつの人間として完璧になる、それが運命の相手だみたいな言い方をするのだけれど、このふたりは正にそうよね。だから一目惚れとか惹かれていくことに納得がいく。
私もそんな片割れが欲しい。
舞台でもよくその話聞きます。野田秀樹の作品かな?
舞台でもよくその話聞きます。野田秀樹の作品かな?
りきマルソー
路子
有名な話よね。そういう風に考えるとロマンティックだから、みんな使いたがるのよ。
なるほど…だから探すのね。じゃあ、会えない人はずっと一人前にはなれないんですね!ってことになってしまうけれど(笑)。
なるほど…だから探すのね。じゃあ、会えない人はずっと一人前にはなれないんですね!ってことになってしまうけれど(笑)。
えーーっ!?
りきマルソー
路子
ずっと半分のままかい!みたいな感じにはなってしまう。
会えるとは限らないのかしら…。
りきマルソー
~今回の映画~
『アメリ』 2001年4月 フランス
監督:ジャン=ピエール・ジュネ
出演:オドレイ・トトゥ/マチュー・カソヴィッツ/ドミニク・ピノン/イザベル・ナンティ/ヨランド・モロー