ゆかいな仲間たち よいこの映画時間

☆27本目『反撥』

2020/02/06


【あらすじ】
姉・ヘレン(イヴォンヌ・フルノー)と同居をしているキャロル(カトリーヌ・ドヌーヴ)。
ヘレンは恋人である妻子持ちの男・マイケル(イアン・ヘンドリー)を毎日寝泊まりさせ、毎晩のようにセックスをする。
夜な夜な聞こえてくるその音に、嫌悪感と好奇心を抱くキャロルは、現実と妄想が渦巻く中、次第に追い詰められ、精神状態が不安定になっていく。

路子
路子
監督のロマン・ポランスキーは、『シェルブールの雨傘』を観た時に、『反撥』の主人公はドヌーヴ以外に考えられないと思って、彼女にオファーしたの。ドヌーヴは今までに何本かの映画に出演していたけれど、そのオファーに対しては凄く乗り気で、初めて積極的に出演したいと決めた作品なんですって。女優としては『シェルブールの雨傘』で有名になったけれど、『反撥』は「カトリーヌ・ドヌーヴがショッキングな役柄を演じた最初の作品」と言われてる。ポランスキーの世界観や趣味、ドヌーヴをこう表現したいとか、監督自身が好きなものを自由に撮っている、という感じがしたわね。

路子
路子
ドヌーヴには、『ロシュフォールの恋人たち』で共演した実の姉 フランソーワーズ・ドルレアックがいるでしょう?
ふたりの間には複雑な愛憎の関係があって、この映画でも姉との確執のようなものが描かれているけれど…。
その関係性が実生活での姉妹の関係性に似ていたとか?
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
そうそう。だからそういった事も出演の決め手になったのかもしれないわね。


最初はスローな映像が多くて、写真作品を観ているかのようなイメージがありました。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
オープニングで流れる目のアップも印象的だった。主人公のキャロルは、あまり喋るような人物ではないから、全体的にセリフは少なめね。
どこか上の空で、ずっとポーっとしてますよね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
そうそう。
仕事でも役に立たない感じだし。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
彼女が唯一笑ったシーンは、チャップリンの『黄金狂時代』を観た友達が、彼の真似をする場面くらいよね。すぐに真顔になったけど。


路子
路子
キャロルは、ヘレンの喘ぎ声が気になって、毎日ちゃんと眠れずにいる。そういった事も要因となって、どんどん追い詰められ、幻覚を見ながら発狂していくけれど、彼女には、神経質な部分や潔癖さ、エキセントリックな面という素質が元々あったのよね?

そうですね。幼い頃の家族写真の場面が出てきますが、一人だけそっぽを向いて、何を考えているか分からないような顔をしていますよね。幼い頃から何かしらの不安要素があったような気がします。実は数日前に、ポランスキー作品の『告白小説、その結末』という作品を観たんですが、それも女性がどんどん追い詰められていく話でした。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
監督は狂気な話が好きなのかしら。私はポランスキー作品といえば『赤い航路』を思い浮かべるわ。
監督の奥さん(エマニュエル・セニエ)が出演してますね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
うん。その映画は「過剰な愛」がテーマで、とてもクレイジー。
いっちゃってる女をテーマに映画を撮っているんですか?
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
いっちゃってる女…。 今は精神状態にも病名が付けられている時代だけれども、『反撥』公開当時は病気という扱いでは無かったと思うの。でも、どんどん発狂していくドヌーヴの演技はさすがだった。
まなざしが変化していきますよね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
顔も変わっていく。鼻をいじったり、爪を噛む癖がとても効果的。

そういった部分に潔癖さが表れているんですね。
りきマルソー
りきマルソー


路子
路子
キャロルはセックスに対しての欲望がとてもある人物。だから妄想や幻覚を見ているのね。

レイプされるようなものや、壁から出てくる沢山の手に胸を掴まれたりするような幻覚ですね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
そうそう。
姉の喘ぎ声の事とかを考えると、興味と嫌悪感の狭間にいる感じですね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
嫌悪感の部分だと、恋人からキスをされた時、すぐに歯を磨くシーンがあったわね。


路子
路子
最終的には、自分の彼も、家賃をタダにすると言って襲ってきた家主も殺してしまうけれど、彼女にとっては殺したいという感覚ではなく、自分に嫌な事をするものを排除する、って感覚の方が近いかもしれない。

自分が安心するために。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
「キャロルは綺麗な人」という役どころだし、幼い頃からずっと男達の視線を浴び続けてきた人だと思うの。
街中でも声を掛けられるシーンがありましたね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
そうそう。だからそういったフラストレーションの様なものが積み重なって爆発したのかもしれない。何歳ぐらいの設定なのかしら。

つまみ食いの仕草や、靴をぽんっと投げたりと、幼さの見える部分がいくつもあったので、結構若いような気はします。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
じゃがいもの芽が成長していったり、うさぎの肉が腐っていく様子で、時間の経過を上手く表現していたけれど…モノクロでありがとう!って感じの少し気持ちの悪い映像だったわ。ドラムロールの音とか、壁や道路に亀裂が入ったりと、効果的な場面が多かったわね。
亀裂はキャロルの精神崩壊を表現しているんですかね?
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
うん、きっとそうね。


この映画は全編モノクロの映像でしたが、モノクロって贅沢さを感じるんですよね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
贅沢??
今の時代はカラーが一般的ですけど、そのカラーが当たり前の世界で考えると、全てを白と黒の2色だけで表現するって、本当に凄い事だと思うんです。色の表現に制約がある中で、どれだけのものを表現して、どれだけのものを省いているんだろうって。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
『反撥』の1年前に公開された『シェルブールの雨傘』はとっても色彩にあふれているから、そのギャップが凄いわね。リアルタイムで『シェルブールの雨傘』を観て、ドヌーヴのファンになった人は、『反撥』を観て、どう思ったのかしら。
際立ちますよね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
表現力の凄い女優だとは思ったわよね。『シェルブールの雨傘』とは全然違うから嫌だわ、って思った人もいるかもしれない。『反撥』の2年後に『ロシュフォールの恋人たち』と『昼顔』が公開されているけれど、どの作品も色の違う人物を演じているわね。
演技の幅が凄いですよね。そういうのを知ると、今、ドヌーヴが色々な役を演じているのも納得。最近挑戦し始めたのではなく、昔からずっとそうしてきたんですね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
ゴリラと寝たり(笑)。(*『神様メール』)
そうそう(笑)。
ビョークと一緒に工場で働く役をやったり(*『ダンサー・イン・ザ・ダーク』)、本当に色々。私はドヌーヴを知ったのがフランソワ・オゾン監督の『8人の女たち』だったので、そういう綺麗な役しかやらない人なんだと思っていました。『反撥』は新たなドヌーヴ像を発見させてくれた映画だったな。あと、私、やっぱり揺るがないなって思ったのは、自分は若い女に興味が無いって事!
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
(笑)。
でも今と同じ顔をしていますね。シミとかシワは増えているけれど。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
そうね。クールビューティー的な感じは変わらない。


~今回の映画~
『反撥』 1965年6月 イギリス
監督:ロマン・ポランスキー
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/イヴォンヌ・フルノー/ジョン・フレイザー/イアン・ヘンドリー

-ゆかいな仲間たち, よいこの映画時間