ゆかいな仲間たち よいこの映画時間

☆46本目『しあわせの雨傘』

2019/12/08


【あらすじ】
スザンヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)は、雨傘工場を経営する夫 ロベール(ファブリス・ルキーニ)から、長い間、飾り壺(お飾りの妻)扱いをされているブルジョア妻。
夫が心臓発作で倒れ、急遽工場の経営をすることになったスザンヌは、若い頃から付き合いのある市長のババン(ジェラール・ドパルデュー)や子供たちに協力をしてもらい、次第に経営者としての才能を発揮していく。

路子
路子
『ミス・ブルターニュの恋』のベティとは全然シチュエーションは違うけれど、芯の強さが似てるわね。

そうですね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
2人とも何かになろうという野心を持っているわけではないけれど、何かの拍子に栓みたいなものが抜けて、人生が劇的に変化する。だから『ミス・ブルターニュの恋』で受け取った印象と観た後の感覚がすごく似ているの。

終わり方も似てますよね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
そうなの。『ミス・ブルターニュの恋』のラストは「人生は続く」というセリフ、こちらのラストのセリフは「人生は美しい」。


路子
路子
りきちゃんは初めて観た?

ディスクで持っているのでいつでも観られるのですが、随分昔に1回観ただけでした。なので久々。
少し前に路子さんと話している時「水があふれて」という風に言っているのを聞いて、どういう意味だろうって思っていたんです。花瓶から水があふれるように、感情があふれるという意味だったんだと、この作品を観て今更理解しました(笑)。
りきマルソー
りきマルソー

女性の自立もテーマのひとつだと思うのですが、家族との絆や、年齢を重ねても自由に恋愛を楽しむことも描かれていますね。自分の気持ちに従って行動していくことに、終わりはないんだな、と思いました。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
原題の『Potiche』が…。

花瓶、飾り壺という意味なんですよね。(公式サイトによると、棚や暖炉の上に飾られる贅沢で豪華だが実用性のない花瓶を指し、それが転じて、夫に隠れてしまう美しい妻や自分のアイデンティティーを持たない女性に対して軽蔑的に用いられる言葉だそうです。)
映画の中では「飾り壺からあふれて」をはじめ、「飾り壺」を使ったセリフがたくさんありましたね。だいたいが皮肉を含んだ表現でした。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
娘が当選中継のテレビを見ながら、(母親は)「“飾り壺”と思ってた」って言うのに対して、夫は「飾り壺 だが空じゃない」と言うシーンもあるわね。
邦題の「雨傘」は原題に関係ないのね。

雨傘工場を経営しているのと、かつてドヌーヴが『シェルブールの雨傘』に出演をしていたからという理由で、日本側がそういうタイトルにしたんですかね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
インタビューを見ると、「また雨傘ね、私はいつも雨傘に追いかけられてるのね。」なんて言っているんだけど。


スザンヌは結婚する前からいろんな男と寝るような奔放な性格だったんですよね?
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
いきなりの告白よね(笑)

元々そういう性格なのに、何もしなくていいよと言われ続け…。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
ずっと「家庭の主婦」だっだ。

そうですね。軟禁とまではいかないけれど、閉じ込められた状態。そんな生活をおくっていたのに、夫の病がきっかけで、動きのある世界へ飛び込んでいく。それからはいきいきとしていますよね。
りきマルソー
りきマルソー


路子
路子
カーラーを巻きながらジャージでジョギングをする「家庭の主婦」時代を見たときから、スザンヌは、人生を楽しむ術を知っている人なんだなって思ったの。
(ヘアバンドだと洗練されすぎてしまうから、カーラーを巻いたらどうか、と、ドヌーヴが提案をしたとのこと。)

路子
路子
リスに話しかけたり、詩とは言えないようなメモ書きをしたり、湖を見て綺麗だと思ったり、全然不機嫌な主婦ではない。今の環境を自分なりにすごく楽しんでる人。
もちろん認められていない部分はあるし、夫は横柄だからカチンとくることもあるけれど、そこで問題を大きくしないし、暗い諦めではないよのね。

娘に「見ないフリして パパはやりたい放題」と責められても、重く受け止めている感じではないですよね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
うん。夫に対しては、家族の情愛のみで、嫌悪感も愛情もないと思う。夫が秘書と浮気をしていることを知っていても、秘書に対して感謝もしているから、男として夫に執着をしているようにも見えない。

路子
路子
輝き始めて、魅力的に人生を生きているのを見ると、丸で別人に見える、という見方があるけれど、まさにそんな感じ。
自分の夫との息子ではないかもしれない子を産んでおいて、それをずっと隠しながらいても、あんなに人生を楽しめるスザンヌは、いろんなものから自由なんだと思った。

そう思うと、変なことでグジグジ考えているのが、なんだか馬鹿らしくなってきますね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
本当にそう思う。


路子
路子
自分で会社を経営し始めると、従業員の気持ちをくみ上げて、夫よりも上手く経営をしていくでしょう? 上手くいったのは、やり手だった自分の父親の遺伝子を受け継いでいるからというのもあるとは思うけれど、映画の前半部分で描かれているような、彼女の感受性や想像力の豊かさ、人生を楽しむような人間性も影響していてると思うの。だから、こういう人が責任ある立場に立った時、こういう風になるよね、というのがとてもよく分かった。

お金のことや直接の経営にも熱心ではあるけれど。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
人間性の方が強い。息子がカンディンスキーの作品をモチーフにした雨傘を作った時も、「見事ね」って褒めているけれど、彼女には固定概念というものがなく、美しいものに対する感受性の豊かさ、そしてそれを言葉としてそのまま口にするてらいのなさがあるのよね。それが映画の中でずっと通底していてブレてない。そういう人は、どんな環境においても、最高レベルでの楽しみ方ができる人なんだと思った。

路子
路子
最終的にお父さん側につく娘のことはどう思った?

お父さん側についたというよりは、自分の夫を助けるためなんですよね?
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
そうね。でも描かれ方としては、母親を認めていないじゃない?

ブルジョア生活で育ったおバカちゃんぐらいに思っていますよね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
息子は違うのよね?

息子はお母さん大好き!みたいな感じ。母親とも信頼関係がある。でも、スザンヌは息子と同様に、娘への愛情を持っていますよね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
そうなのよ。

娘からバカにされているのに、それでも愛情を持っていて、一緒に仕事をしましょうって、提案までする。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
あんなにバカにされているのに確執もない。自分に自信があるとそうなるのかしら?

感情がない訳でもないんですよね。「水がこぼれるのよ 飾り壺からあふれて」って言っているぐらいですし。でもきっと、あふれたら、あふれたなりにどうするかを、回転の早い頭で考えられる人なんですよね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
ラストシーンはもちろんなんだけど、ほかに好きなシーンはある?
私は、湖に置き去りにされた時にヒッチハイクをして、トラックに乗せてもらうシーンかしら。笑いあったり、大した話もしてないし、シーンとしても短い。マッチョな運転手の人と何かをする訳ではないのだけれど、あそこに流れている2人の空気感…人生に対する価値観みたいなものが共鳴しているような空気が流れているの。

乗せてもらって申し訳ない、という感じもないんですよね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
うん、全然。わーいラッキーぐらいね、きっと。


路子
路子
りきちゃんはどのシーンが好き?

私はスザンヌとババンがナイトクラブ・バダブン で踊るシーンが好きですね。変な踊りのシーンがあると、オゾンの映画だっていう安心感があります(笑)。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
よく踊らせるもんね。

路子
路子
それにしてもラストシーンでスザンヌが歌うシーン、良かったわね。
「人生は美しい」という曲で、フランスの偉大なるミュージシャン、ジャン・フェラが、深刻な交通事故を生き延びたシャンソン歌手イザベル・オーブルのために書いた曲なんですって。歌詞も良かった。

路子
路子

「人生は美しい」を歌い終わった後に、「そうよ、人生は美しい」というセリフで終わるのよね。

初めてそれを聞いた時、涙が溢れた。2回目に観た時には、ジョギングのシーンを思い浮かべたの。

選挙に勝ったから「人生は美しい」と思ったのではなく、自然や日々の生活の中で楽しみを見つけることに「人生は美しい」と感じることのできるひと。人間性。だから必ずしも社会的な成功を収めなくても、ずっと思っていた言葉なのだと思う。


路子
路子
オゾン監督の場合、感じるものが感じればいいという作り方をするから、受け取ったものはやわらかくて、おしつけがましくない。人生捨てたもんじゃないな、ぐらいには絶対に思える作品。

オゾン監督は、歌の選択がものすごくうまいですよね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
好きよね! 家事をしながら聞いてるラジオの音楽(Michéle TorrのEmmène-Moi Danser Ce Soirという曲)のチョイスも好きだし、それに合わせて口ずさんでいるのも好き。

最近の作品だと、『彼は秘密の女ともだち』のドラァグクイーンのショーで流れたニコル・クロワジールの「Une femme avec toi」もとても好き。映像との組み合わせが本当にぴったり。
歌ってセリフよりも引き寄せるような力があるので、観客がその映像の世界に入り込みやすくなるような気がするんですよね。特にオゾンの作品に関しては、主人公の心境と歌詞がとてもマッチしているので、なおさらそう思います。ドヌーヴもヴェネチア映画祭の記者会見で、「歌は演技では感じられない喜びをもたらしてくれる」と言っていました。
りきマルソー
りきマルソー




~今回の映画~
『しあわせの雨傘』 2010年11月 フランス
監督:フランソワ・オゾン
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/ジェラール・ドパルデュー/ファブリス・ルキーニ/カリン・ヴィアール/ジュディット・ゴドレーシュ/ジェレミー・レニエ

-ゆかいな仲間たち, よいこの映画時間