☆35本目『ハンガー』
2020/02/06
【あらすじ】
人間の生き血を吸う吸血鬼のミリアム(カトリーヌ・ドヌーヴ)。
ミリアムにより永遠の美と不老不死を与えられたものは、吸血鬼となり、彼女の恋人として人生を送る、そんなことを何世紀もの間繰り返してきています。
ある時、現在の恋人であるジョン(デヴィッド・ボウイ)に老化現象が現れ始めました。ジョンは老化現象を研究するサラ(スーザン・サランドン)を訪ねましたが、全く相手にされず…。
『インドシナ』の約10年前ぐらいに作られた作品なんですね。
りきマルソー
路子
そうね。40歳ぐらいの時のもの。
『インドシナ』よりも、若く見える時と、老けて見える時がある、不思議な映画でした。
りきマルソー
路子
この役、きっと10年前ぐらいにやりたかっただろうなあ。
ドヌーヴかっこよかったですね。黒いサングラスも妙に似合っていましたね。
りきマルソー
路子
かっこいいし、とにかく綺麗だったわね。ちょっとパンクな革のミニスカートも似合ってた。凄みのある役を演じさせたら、やっぱりピカイチね。ウットリしちゃった。部屋着にしている中央がベージュになっている黒の衣装も素敵。
あとは、サラが抗議した時に、暴力を振るうシーンがあるでしょう? その時の髪の振り乱し方は、ゾクゾクしたわ。
あとは、サラが抗議した時に、暴力を振るうシーンがあるでしょう? その時の髪の振り乱し方は、ゾクゾクしたわ。
路子
この映画は、カトリーヌ・ドヌーヴとスーザン・サランドンが主演の映画だったわね。
そうですね。私、デヴィッド・ボウイがメインの映画なのかと思ってました。
りきマルソー
路子
私もそう思ってたの。デヴィッド・ボウイ共演とは言えないくらいにチョイ役だったわね。いきなり老けていくし。だから、デヴィッド・ボウイのファンは、きっと、おいおいおい、もう一回若返って!って思うわよ。
最初のミュージックビデオ的なデヴィッド・ボウイの世界でずっと映画が続いていくのかと思っていました。
りきマルソー
路子
そうね。老化していくのと同時に、普通の映画の空気感になるわね。
デヴィッド・ボウイは、老いていくジョンのかすれ声を出すために、毎晩ジョージ・ワシントン・ブリッジに立って、自分が知っているパンクロックの歌を絶叫したんですって。
りきマルソー
路子
じゃあ、あれ地声で演じていたのね。
オープニングのドヌーヴとデヴィッド・ボウイのシャワーでのキスシーンは綺麗だったわね。
オープニングのドヌーヴとデヴィッド・ボウイのシャワーでのキスシーンは綺麗だったわね。
うん、とても綺麗。エロティシズムを感じました。
りきマルソー
路子
美しいふたりがこんな風に映されると、こんなに綺麗なものが出来上がるのか、と思った。この世のものとは思えない。
前半は前半で楽しめるし、後半部分とは違った美しさがありますよね。
結構デヴィッド・ボウイが、自分の映りに対して、色々と注文してたんじゃないですかね? だいぶ色味が違いますもん。
結構デヴィッド・ボウイが、自分の映りに対して、色々と注文してたんじゃないですかね? だいぶ色味が違いますもん。
りきマルソー
路子
うん、テイストが違う。出演者みんなうるさそう(笑)。
監督大変だったんじゃないかしら…。
監督大変だったんじゃないかしら…。
トニー・スコット監督は、この作品がたしか初監督だったような気がします。
りきマルソー
路子
そうなの? もう嫌だ…って映画監督辞めてない?
(笑)。
りきマルソー
路子
私、こういう映画は苦手だけれど、それを越えるぐらいの映像美があった。
ドヌーヴも、衣装も、家の内装も綺麗でしたよね。
りきマルソー
路子
うん。音楽も美しい。ドヌーヴはああいう役が似合うのね。
演技がノッてましたよね。
りきマルソー
スーザン・サランドンはちょっとなあ。この女優さん、初めて知りました。
りきマルソー
路子
歳をとってからよく映画に出演しているイメージ。『テルマ&ルイーズ』が有名かしら。私が観る映画によく出演しているけど、あんまり好みではないかな。でも、この作品で綺麗だと思った。
ベッドシーンは良かったですが、黒いパンツだけの時、すごく滑稽に見えたんですよね。セクシーさが感じられないし、魅力的ではない。
りきマルソー
路子
なんであのシーンだけ履いたのかしらね。だったら、シーツで隠すとかすれば良かったのにね。
たしかに。だからこそ、そのシーンのドヌーヴがより美しく見えました。
りきマルソー
路子
少女は無駄死にだったのね…。可哀想に。
ジョンは老いを止めるために、レッスンに来ている女の子を殺して、血を飲むけれど、結局老いは止まらなかった。でも、ミリアムはそんなに驚いてはいませんでしたね。今までの恋人たちも同じようなことをしていたのかもしれないですね。
りきマルソー
路子
エジプトの頃から生きているくらいだから、何度もそういうことがあったでしょうね。
ミリアムは毎回、不老不死と永遠の若さが手に入るという嘘をついて、吸血鬼化することで自分の恋人にしているということですよね?
りきマルソー
路子
そうよね。あれだけ老化した人がいるし、ずっと若いままで生きている人はいないものね。適合さえすれば不老不死と永遠の若さを手に入れられる人もいるんじゃないかしら?
でも若いままの人が残っていないということは、今までに適合した人はいないということですか?
りきマルソー
路子
そうよね…。だから睡眠や老化現象に興味を持って、本を読んだりしているのかもしれない。自分はできているのに、他の人は何故そうならないの?と思い、吸血鬼なりに研究しているし、愛しているから、老化を止めたいとは思っている。でも、ジョンもロココの頃の衣装を着ているシーンがあるから、かなり長く生きているということよね。
かなり長いですよね。
りきマルソー
路子
1700年代ぐらいからかしら。そうすると200年以上生きてる。
それでも生きたいと思う欲ってすごいですよね。私は早く死にたいと思っている人なので、永遠に生きたいという気持ちが全く分からない。
りきマルソー
路子
私も。しんどいし、可哀想だな、と思ってしまう。
自分の周りの人はどんどん死んでいくんですもんね。
今でも「永遠の命」をテーマにした映画ってたくさんありますけど、なんなんでしょうね。日本の昔話にも、人魚の肉を食べると不老不死になる、というのがありますよね。
今でも「永遠の命」をテーマにした映画ってたくさんありますけど、なんなんでしょうね。日本の昔話にも、人魚の肉を食べると不老不死になる、というのがありますよね。
りきマルソー
路子
そうなの? 人魚の肉って魚? 人間?
(笑)。
りきマルソー
路子
吸血鬼は本当にいると思う?
これだけ今も話が作られているくらいだから、いてもおかしくないですよね。
この映画の中の吸血鬼は、一般的な吸血鬼のような、太陽の光や十字架が苦手、というのはないんですね。
この映画の中の吸血鬼は、一般的な吸血鬼のような、太陽の光や十字架が苦手、というのはないんですね。
りきマルソー
路子
血を吸う時に使うナイフ付きのペンダントは、十字架よね。
そうです。私たちが勝手にそう思っているだけかもしれませんね。魔女は水で溶けるみたいな。
りきマルソー
路子
そうそう、そういう設定がないだけよ。
路子
この作品のなかでは、1日に6時間眠って、1週間に1回血を飲めば大丈夫という設定だったけど、その決まり事が健康に生きるためには、みたいで、おかしかった(笑)。
サラに血を与えるために、若いお兄ちゃんの生き血を吸いながら、獲物よー!みたいに階段下からサラを呼んでる姿もちょっとおかしかった。
サラに血を与えるために、若いお兄ちゃんの生き血を吸いながら、獲物よー!みたいに階段下からサラを呼んでる姿もちょっとおかしかった。
あんな男の血を飲むのやだー。家の中でガムをぺっ!って吐き捨てるような男。
りきマルソー
路子
飲みたくないわよね。飲む人選びたい。
血が汚れてそう。
りきマルソー
路子
血によっても質が違っている気がするけれど、どうでもいい人を連れてくるくらいだから、それはあまり関係ないんでしょうね。
自分の意思とは無関係に吸血鬼にされるの嫌よね。永遠の生命や若さが欲しい人なら良いけれど、そうじゃないのに勝手にされたら嫌だな。
自分の意思とは無関係に吸血鬼にされるの嫌よね。永遠の生命や若さが欲しい人なら良いけれど、そうじゃないのに勝手にされたら嫌だな。
余計なことを…って思いますよね。
そういえば、この吸血鬼は、血を吸う時に噛まないですね。
そういえば、この吸血鬼は、血を吸う時に噛まないですね。
りきマルソー
路子
カプって噛むのではなくて、ナイフで切って、チューって吸ってる。噛むシーンにすると、牙がピッて出てきて、ちょっとコミカルになってしまうかも。だからこっちの方がリアルで良いのかしら。
レズビアンシーンは違う人がやっているというのは本当ですか?
りきマルソー
路子
見ていたら、割とふたりが実際に絡んでるシーンも多かったけれど、ふたりの肉体が横たわる上からのカットは、明らかにドヌーヴの身体ではなかったわね。
このシーンがきっかけで、ドヌーヴはレズビアンの人に崇められたらしく、『Deneuve』というレズビアン雑誌まで発売されたんですって。結局ドヌーヴがそれに対して抗議をして、雑誌名は変わっちゃったみたい。
アンドレ・テシネ監督の『夜の子供たち』でもレズビアンを演じているし、『8人の女たち』でも、ファニー・アルダンとの絡みがあったから、そういう意味では同性愛の人にウケがいいらしいわよ。
このシーンがきっかけで、ドヌーヴはレズビアンの人に崇められたらしく、『Deneuve』というレズビアン雑誌まで発売されたんですって。結局ドヌーヴがそれに対して抗議をして、雑誌名は変わっちゃったみたい。
アンドレ・テシネ監督の『夜の子供たち』でもレズビアンを演じているし、『8人の女たち』でも、ファニー・アルダンとの絡みがあったから、そういう意味では同性愛の人にウケがいいらしいわよ。
路子
すっかり忘れていたけれど、最後はああいう終わり方だったのね。楽しめた。ラストのゾンビたち以外は、私の好みの映像だった。この作品に関しては、誘惑して惹かれあっていくところが描かれていたから、吸血鬼抜きにしても本当に綺麗だった。
ゾンビたちは妙にリアルでしたよね(笑)。
こういう映画をあまり観ないので、新鮮でした。
こういう映画をあまり観ないので、新鮮でした。
りきマルソー
路子
私もよ。絶対避けるもの。
なんでゾンビたちは、最後だけあんなに元気だったんですかね?
りきマルソー
路子
なぜお元気に、って私も思った。でも、最初に踵を返して去っていくのは、ジョンのゾンビ。ミリアムのそんな姿を見てられないから? それとも未練?
まだ老い始めたばかりで、愛していたからですかね。エジプトの頃からの人たちの恨みつらみに比べれば。
りきマルソー
路子
ゾンビたちはかつての愛人だから、「愛してるのよ みんなを」と言っているけれど、襲われると「NO」と言うなんて…やっぱり見た目って大事なのかしら。
(笑)。
りきマルソー
サラはミリアムのナイフで自殺を図ったように見えましたが、死んでいなかった、ということですよね? しかもミリアムを閉じ込めた。
りきマルソー
路子
吸血鬼になったあとでも、まだ人間としての理性が残っていて、こんなのはダメだ、と思って死のうとしたのよね。
ヨボヨボになった今までの恋人たちがミリアムを襲った後、ミリアムが階段から落ちたら、みんな朽ちちゃうじゃないですか。アメリカのドラマとかで、根源を殺すと、仲間にしたやつがみんな死ぬ、というのがよくあるんです。それに似た感じなのに、じゃあなんでサラは死ななかったんですかね?
りきマルソー
路子
そうね。新しいから?
あー、おぉーん?
りきマルソー
路子
違うのかしら? 新しい命だからじゃない?
上手く適合したってことですか?
りきマルソー
路子
ミリアムによって葬られた人たちは、ミリアムが絶えることによって絶えるけれど、サラは老化現象も起こっていないし、まだ生きていたから、引き継いでいく感じなのかしら?
吸血鬼は階段から落ちて死んじゃうものなんですか? 不老不死と言っているはずなのに。
りきマルソー
路子
知らない! でも死んではいないのよね。
そうか。
りきマルソー
路子
死んではいないけれど、何かの効力を失うのはたしか。究極の老化というのが、吸血鬼にとっての「死」なのよね。まあ、ちょっとそのあたりの設定は甘いかしら。
エジプト時代から吸血鬼やってるってすごいですよね。
りきマルソー
路子
ずっと生き続けてね。
人間の老化、老いへの恐怖、若さを保つ、というのも、ひとつのテーマになっているけれど、この時代からそういうことが考えられていたと思うと面白い。
だからこそ、永遠の若さをという話ならば、この作品が作られる10年前ぐらいのドヌーヴの方が、より説得力があったんじゃないかな、と思って観てたの。『昼顔』の頃の美貌だったら、永遠の若さがもっと引き出されたと思うの。
人間の老化、老いへの恐怖、若さを保つ、というのも、ひとつのテーマになっているけれど、この時代からそういうことが考えられていたと思うと面白い。
だからこそ、永遠の若さをという話ならば、この作品が作られる10年前ぐらいのドヌーヴの方が、より説得力があったんじゃないかな、と思って観てたの。『昼顔』の頃の美貌だったら、永遠の若さがもっと引き出されたと思うの。
まあ、でもそれだと普通に綺麗で終わってしまいそうな気もしますよ。
りきマルソー
路子
そうね。凄みは出てこないわね。
この映画が公開された頃、ドヌーヴは不作の時代と言われている時期でしたが、『ハンガー』の人気ってどうだったんですかね?
りきマルソー
路子
デヴィッド・ボウイが出演しているから、カルト的な人気はあったかもしれないけれど、賞は受賞していないものね。でもこの作品、オススメよね。
ですね。思っていたよりも面白かった。
りきマルソー
路子
ドヌーヴはこの作品に出演したがっていたのよね?
自分が好きな吸血鬼の話だったから、出演を決めたみたいです。最近のインタビューでも、「私は女吸血鬼を演じるのを楽しみました。」と語っていたぐらいです。
りきマルソー
路子
そうよね。演技がのっていたもの。ドヌーヴは、普段の自分が投影されているものよりも、実生活と切り離された役柄のほうが演じるのが好きと言っているけれど、まさにぴったりの作品。
『ハンガー』の約10年後に『インドシナ』が公開されているけれど、その間って代表作あるかしら?
『ハンガー』の約10年後に『インドシナ』が公開されているけれど、その間って代表作あるかしら?
うーん、ないかも。
りきマルソー
路子
そうよね。やっぱり不作の時代なのよね。むしろ今の方がガンガン映画に出演して、話題になっているくらい。珍しいパターンよね。
この時代の作品は、あまりレンタルなどで借りられないので、貴重な作品のひとつですね。
りきマルソー
~今回の映画~
『ハンガー』 1983年4月 イギリス
監督:トニー・スコット
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/デヴィッド・ボウイ/スーザン・サランドン/クリフ・デ・ヤング