ゆかいな仲間たち よいこの映画時間

☆38本目『ポーラX』

2020/02/06


【あらすじ】

アラジンという名で小説を発表し、話題となっているピエール(ギョーム・ドパルデュー)。
母のマリー(カトリーヌ・ドヌーヴ)と共に、何不自由なく生活をしていました。

婚約者のリュシー(デルフィーヌ・シェイヨー)との結婚も決まった頃、姉を名乗るイザベル(カテリーナ・ベルゴワ)という女性が姿を現わし…。

この映画に関しては、ギョーム・ドパルデューを楽しむ映画だと言いたい。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
ドヌーヴは最初しか出てこないものね。
そうなんですよ、ほとんど出てこない。主演の女性も、魅力がある訳でも、美しい訳でもない。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
主演女優は、お姉さんだと言っているジプシーの女性よね?
そうです。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
彼女は有名な方なの?
どうでしょうね。若くして亡くなっているみたいです。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
そうなのね。

路子
路子
『ポーラX』というタイトルはどういう意味なの?

原作の『Pierre ou les ambiguïtés』の頭文字「Pola」に、映画に使われた10番目の草稿を示すローマ字の「X」を加えたものなんですって。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
そういうことなのね。いつポーラが出てくるのかしら、と思っていたわ(笑)。
「ambiguïtés」はどういう意味?
(調べる)曖昧? 「曖昧なピエール」? タイトルをまるっと翻訳サイトにかけると、「ピエールまたは曖昧さ」と出てきました。どっちつかずみたいな感じですかね?
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
優柔不断とか、どうしようもないみたいな?

まあ、たしかにどうしようもない人ですよね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
りきちゃん的にはどうだった? ギョーム・ドパルデューを楽しむ映画なだけだった?

陰鬱な雰囲気は好きでした。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
ピエールが落ちぶれていくあたりが好き? 始めは陽光爽やかな雰囲気だったけれど。
どっちも好きです(笑)。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
イザベルが現れる前のトーンが全然違うのよね。
始めは白いシャツに光がさんさんと降り注いでいて、何も不自由なく暮らしていた人たちが生活しているシーンだし、豊かな金髪の後ろ姿で登場するマリー(カトリーヌ・ドヌーヴ)も輝いているから、素敵だな、と思って観ていたの。でもどんどんカラックスの世界になっていって(笑)。
私はカラックスの映画を観るのは初めてなんです。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
カラックスは、基本的にエキセントリックな人なの。監督なんてみんなそうだけれども、自分の趣味が作品に出過ぎて、ついていくのが大変な作品が多いの。

ドヌーヴの出演シーンは本当に少なかったですね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
ある程度の年齢を重ねると、ゲスト出演的なオファーが増えるんですって。その時「この役は私じゃなくても成立するかどうか」を彼女は考えると言ってるの。なぜかと言うと、「ケーキのトッピングにはなりたくないから」。だから、この映画はドヌーヴ以外だったら成り立つかどうかを考えたの。
存在感は必要ですよね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
ねっ! それと妖しさと。ピエールとどういう関係なんだろうとか。
ふたりでベッドの上でタバコを吸うシーンは…。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
近親相関的だったわよね。あれは息子なのよね?
そうです。でも母親のことを「お姉さん」や「マリー」と呼んだりしていますよね。だから近親相関を思わせるのかな、と、私も思いました。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
そういう意味では、やっぱりドヌーヴは適役だったのね。
そういえば、ヌードシーンがあったわね。
お風呂のシーンですね。ドヌーヴは何歳ぐらいでしたっけ?
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
50代半ば。その年齢でヌードを見せている。
彼女はヌードになることについて否定しているの。積極的にヌードになる人と、自分は違うと言ってる。だからあのヌードシーンはびっくりしたの。
息子にああいう姿を見せてしまえる関係性を表現するためには、必要だと感じたのかもしれないわね。

ピエールが夢に見ていた乱れた黒髪の女性というのは、イザベルのことなんですよね?
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
そうだと思う。
だからイザベルが木の陰から見ているのに気づいた時、追いかけるんですよね? でも、真っ暗な森で見つけた、あんな髪ボサボサの怪しい感じの人について行くものなんですかね? 怖くないですか? ずっとボソボソ話していますし。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
そこにピエールの何かがある。会ってもいないのに、夢で見続けている人だから、少しオカルトチックなところがあると思うの。だから日常的な物語として見てはいけないの。どこかで深層心理のような見方をしなくては、ついていけないのよ。変な交響楽団みたいなレジスタンスだって、訳がわからないじゃない?
(笑)。
他のカラックス映画にはそういうのありましたか?
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
私が観た作品は破滅的で悲しい恋愛ものだったから、そういうのは出てこなかったけれど…妙に変な後味が残る作品ではあったわ。
路子
路子
この映画は何が描きたかったのかしら?

彼は小説家として有名で、あんな城みたいな所に住んでいて、生活も裕福。でも、イザベルが姉だと名乗り出てきたことで、自分の中にある闇の部分みたいなものに触れた…みたいな感じですかね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
彼には破滅願望があったのかしら?
破滅願望…あぁたしかに…。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
ピエールがバイクを走らせるシーンも、事故に遭いそうな雰囲気を感じたの。
危うい雰囲気ですよね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
編集者の女性に「この世の陰鬱な真実を暴きたがってるけど感覚が古すぎるわ」「成熟した小説を書こうとしてるけど あなたの魅力は未熟さにある」と、批判されるでしょう? 自分ではとてもよく書けたと思っているから、他の出版社にも作品を送るけれど、けちょんけちょんに言われ、箸にも棒にもかからないようなことを言われる。
でも彼は、姉の出現により生活が激変したことで、傑作を書いているような気になっている。ピエールには自分に対する過大評価があるのよね。「誰かを助けられる」「人間の闇に迫るような作品を書ける」などと思ってはいるけれど、両方実現しない。
単純な言い方をすれば、何の苦労もなく育ってきた人が、闇の部分に触れて、それが本物っぽいと思い、そちら側で何かを成し遂げられるだろう、と今までの経験値で測ってしまうけれど、実際にはそんな能力がないから破滅していく、という感じかしら。
誰も助からないですよね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
救いがない。
姉を助けられないし、マリーも結局死んでしまう。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
ジプシーの子も、ピエールが「臭い」という言葉を教えなければ、死ぬことはなかったのにね。

路子
路子
一番不気味だと思った存在は、ピエールの婚約者であるリュシー。

何か起こすんじゃないかという雰囲気はありましたよね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
ピエールの夢に対して、彼女が心配をしているのが伏線としてあったの。それからフラれたショックで病気になってしまうけれど、後々、彼を心配して訪ねて来るのが、まるで預言者みたいで。彼女は生き残るのよね?
そうですね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
ピエールも死んではいないのかぁ。

捕まっただけですね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
結局この話は、外交官である亡くなったお父さんが、マリーを裏切り、他に子どもを作っていた、という話なのよね。

マリーが泣きながらバイクに乗るかっこいいシーンがあるじゃないですか?
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
マスカラ落としながらね。あのシーン最高。
ミュージックビデオみたいでしたよね。
あのシーンでマリーが泣いているのは、夫が裏切り、他に子どもを作っていたからですか? それとも、ピエールがいなくなったからですか?
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
夫のことを引きずっている感じはしなかったから、息子が自分から離れてしまったからではないかしら。単に心配だったから、という意味だけでは無く、近親相関的な関係があったことも大きいと思う。

路子
路子
ピエールはイザベルに対して、レスキュー願望を感じているし、ひとりの女性としても魅力を感じているのよね。

そのあたりの描かれ方が、少し曖昧ですよね。恋人のような感じでもないですが。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
欲望はあるからセックスはする。
そうそう。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
お互いにズルズル引っ張りあって、破滅へと向かうのよね。
それを象徴しているのが、血の川でふたりが絡み合っているシーンですよね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
うん、多分そう。
イザベルは、「私を信じて」と最後まで言っているけれど、真実を伝えることに対する色々なことを感じたのよね。
でも、真実を伝えることが、必ずしも良いとは限らないですよね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
そうよね。イザベルは、自分の求めているものが分かっていない。ただピエールと一緒にいたい、というだけでしょう? それは弟だから?

お金狙いな感じでも無かったですが、どうなんでしょう…。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
ギョーム・ドパルデューの出演作はたくさん観ているの?

実はほとんど観ていないです。亡くなる直前ぐらいに出演していた『ベルサイユの子』、という作品ぐらいです。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
タイトルはりきちゃんから聞いたことある。
『ランジェ公爵夫人』も有名ですね。代表作はこれ、という作品はあまり無いですが、いつも危うい雰囲気があるんです。危うい感じでバイクを運転するシーンが『ポーラX』の中にもありましたが、本当に彼にぴったりなシーン。あとは小汚い感じもぴったり。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
彼は実生活でバイク事故に遭っているのね。
たしかその影響で、彼は片足を切断しているんです。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
本当だ。ネットに2003年に右足の切断と書いてある。その後も義足の存在を感じさせない演技を続けた。
足を引きずりながら歩くシーンがありましたけど、多分こういうのが関わっているんだと思います。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
お父さんのジェラール・ドパルデューは全然危うい感じがしないのに、なぜ息子はこんなに危うい感じなのかしら。
父親への反発からですかね。 妹のジュリー・ドパルデューも全然違うんですよ。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
妹の出演作は観てる?
『ロング・エンゲージメント』や『正しい恋愛小説の作り方』とか、彼女の出演作の方が観ているかも。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
彼は37歳で亡くなっているのね。
映画の撮影中にですね?
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
そう書いてある。
で、父親のジェラエール・ドパルデューがお葬式の時に、『星の王子さま』の一節を読み上げたことは有名ですね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
惜しいわね。でも、そんなことを知ると、この役は妙に合っているわね。
そうなんですよ。危うさも含め、彼にはぴったりな役。
りきマルソー
りきマルソー

~今回の映画~
『ポーラX』 1999年5月 フランス・ドイツ・スイス
監督:レオス・カラックス
出演:ギョーム・ドパルデュー/カトリーヌ・ドヌーヴ/カテリーナ・ゴルベワ/デルフィーヌ・シェイヨー

-ゆかいな仲間たち, よいこの映画時間