ゆかいな仲間たち よいこの映画時間

◎54本目『私の知らない わたしの素顔』

2020/02/06


【あらすじ】
ヒロインは精神分析を受けているクレール(ジュリエット・ビノシュ)。彼女が精神分析医に語り始めた物語。
年齢を偽って若く美しい女性「クララ」になりすまし、
Facebookを始める。はじめて踏み入れたSNSの世界。そこで知り合った男性アレックス(フランソワ・シビル)と恋に落ちてしまい…。

※公開したばかりの作品です。ネタバレもありますので、ご注意ください。

この映画、最近予告でよく流れてましたが、観たいと思わせるような良い予告でしたよね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
予告の方が良くて、実際に観てみたら残念…という作品が多いけれど、これは裏切りがなかったわね。
考えさせられる映画だったから、おうちに帰ったら、あれはどうだったとか、色々と考えそう…。
その割には、分かりやすかったですよね。
細かく途切れている訳でもなく、大きなくくりでまとまっていましたし。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
ひねっているわけでもないのよね。
カミーユ・ロランスという作家の作品が原作なんですって。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
原作も面白そうね。原題は何かしら?
『Celle que vous croyez』…『あなたが思うもの」ですかね。英題は『Who you think I am』。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
クレールは、ビノシュでなくては演じられなかったと思う。
すごく良かったですよね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
久しぶりに面白いと思えた!
やっぱりビノシュは、若い頃よりも最近の方が良いなぁ。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
「良い具合に枯れてきた」というやつね(笑)。
そうです(笑)。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
ニコール・ガルシアも凄かった。ビノシュと拮抗してたわね。
ニコール・ガルシアといえば…。

私たちが観られなかった、カトリーヌ・ドヌーヴ の『ヴァンドーム広場』の監督をしていますよね。あとはフランス映画祭で一緒に観た『愛を綴る女』の監督でもあります。
ニコール・ガルシアの出演作って観たことありますか?
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
どうかしら…きっと、そんなにメインで出てくる女優ではないのよね。

クレールは、男にしても、SNSにしても、とにかく「依存」をしてしまう女性でしたね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
精神分析依存でもあるわね。
精神ものの映画って、極端な感情表現シーンが多いような気がしますが、あまりそういうシーンはなかったですね。そういうのは、アレックスに別れ話を切り出す電話のシーンぐらいでしたもんね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
うん、そうね。
路子
路子
クララの使っている写真が、姪の写真だと分かった時、元夫の相手、というのは読めた?

全然!(笑)。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
私はそうかな、とちょっと思ってた。
その事実が、クレールをふかく傷つけていて、ずっと引きずってる。
全てのコトの発端ですもんね。しかも、姪の両親が亡くなった後、娘同然に育てていた人に奪われたんですもんね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
それは傷が深くなるわね。
路子
路子
愛情と依存の違いはあるけれど、夫だった人に対して、愛情が強かったのかな。依存も強かったのだろうけど…。

「人生のすべてだった」みたいに話していましたよね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
社会的地位もあるし、やるべきこともあるけれど、すごく寂しさや孤独を感じている。クレールは、よっぽど欠落感を抱いているのね。
側から見れば、仕事が全ての人に見えますよね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
でも、それほど仕事に夢中という訳ではないような気もする。

路子
路子
フランスなのに、クレールは若さに固執していたわね。

私も思いました。若さや容姿をすごく気にしてましたよね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
でも、若さを気にしているのは、夫を奪ったのが、若い女(姪)だったからなのよね。同年代の人に奪われていたとしたら、そこまで若さに執着していないと思う。
容姿に関しては、場面場面でクレールの表情が全然違いましたね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
とっても綺麗になる時があったわね。
元旦那がびっくりするくらい。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
そうそう。
あとは、彼女が書いた小説の中で、自分のポートレートを撮影してもらうシーンの時は本当に綺麗だった。マイナス15歳くらいに感じたもの。
逆に、ものすごく老けて見える時もありましたよね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
でもSNSだけで、あんなに相手の人にハマるものなの?
(即答で)ハマりますよ!(笑)。
マッチングアプリが流行っているくらいですからね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
結婚相手を探すものとかでしょ。
でも、相手が本気かどうか、わからないでしょう?
アプリにもよりますよ。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
遊びだけとかもあるの?
そうですね。
そうは言っても、惚れた腫れたみたいなのは、いつ、どんなタイミングでくるか分からないじゃないですか。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
でも、実際に会ってからそうなるでしょう?
いやいやいや(笑)。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
私。そういう経験がないから分からないけれど、会わなくてもそうなるの?
長い間やりとりを続けていれば、ハマってしまう時もありますよ。
会わないからこそ、肉体への期待が高まるというか、より一層欲しくなるというか…。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
映画のなかでも会わないうちは、テレフォンセックスのみだものね。
SNSで、こんな風に似たような状況になってしまった人、世の中にたくさんいると思います。そういう事件もよく聞きますもん。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
それを聞くと、自分が出遅れているような気がする…。
(笑)。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
現実で大変だから、それどころじゃないもの。
現実以上に、SNS上だけの関係だけだと、想像が膨らむから…。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
思い込みは増えそう。
ヴァーチャルであろうと、現実であろうと、恋をしているという感覚が、どれだけ必要かということよね。
人生ががらっと変わりますもんね。人間も変わるし、表情も変わる。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
けれどあれね、若い女性になりすますのもたいへん。SNS上でやりとりをするのに、本当の年齢がバレないように、若い子が使うような言葉遣いをしなくてはならないし。
アレックスにメッセージを送る時も、難しそうな言葉を使わずに、簡単な言葉で返信をしていましたもんね。そこまでしても、めんどくさいと思わず、夢中になれるものなんですね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
きっと、めんどくさいと思っていないし、そういうものを求めているのよ。
恋のときめき。電話に夢中になって、周りの目も気にせずに図書館で喋ったり。
行動がすっかり20代なんですよね。50代が集まるパーティーの時だって、確実にクレールの心は20代になってましたね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
だから急に踊り出したりするのよね。それに、近くに息子たちがいるのに、ずっと携帯を見ていたり。
自分の授業の時でさえ見ていましたもんね。ずっと見てる。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
子どもたちが軽く扱われていたわね。

肉付け程度ぐらいで。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
子どもが待っているのに、電話を切りたくないから、車で同じところをぐるぐる回ったりね(笑)。
そのシーンはおかしかったです(笑)。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
下の子なんて、まだ小さいから、もっと手をかけてあげれば良いのに、そういうのが全然ないもの。
一緒に生活している感じもないですよね。ずっと元旦那の家に預けている感じがしました。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
クレールにとって、子どもの存在に重きを置いていないのかも。
「子どもを元旦那に預けている方が、クララになりきれる」とは、言っていましたよね。いないほうが、クララとしての心を、より解放できるのかもしれませんね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
自分だったら、どこまで解放できるかなあ。
でも、物語に子どもの話が入ったら、生活に密着した話になり、身近な話にはなったかもしれないですけど、主題がずれてしまいますよね。だから、ない方が…。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
狂気が際立つ。
私は、子ども部分がカットされているのは、良かったと思います。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
クレールは、とてもクレイジーな人ね。結局、精神が破綻するギリギリのところにいる、ということかしら。

最初からそういう素質を持っている人なのかもしれませんね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
離婚してから、精神分析にかかり始めたのよね?
精神分析は、アレックスが自殺したことを知った後だと思っていました。アレックスとのことを前の精神分析医に話していたのに、急遽、新しい先生(ポーマン)になってしまったから、また一から話始めなくちゃいけない、と言っていましたよね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
そうかそうか。アレックスの自殺を知り、自分もおかしくなっちゃって、入院の順か!
路子
路子
整理すると、入院してカウンセリングを受けているクレールが、Facebookで知り合った写真家のアレックスとの過去の関係性を、精神分析医のポーマンに話している。そして、アレックスが自殺したことがあまりにもショックだったから、自分を救うために自分を殺す小説を書く。
そして、カウンセリングをしていくうちに、ポーマンは思うところがあり、クレールの元カレを訪ねてみると、実はアレックスは死んでいないことと、結婚をして子どもがいることを知る、ということね。
路子
路子
そういえば、ポーマンが「患者の話の中に失われていたものを思い出すことがある」と、言っていたわね。そのことについては語ってはいなかったけれど、女としての欲望などを言っているのかしら。

クレールと話しているうちに、このままの人生ではいけないと、その時に思ったから、そう言ったのかもしれませんね。ポーマンはその後、仕事を辞めるっぽいですもんね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
クレールの欲望や、ドロドロしたものを知ることで、自分の中でそういったものが失われていたことに気付いたのかもね。

路子
路子
クレールが書いた小説の中のストーリーは、アレックスに愛されているのが強調されていて、悲しい内容だった。
現実ではないからこそ、幸せに描かれるほど、苦しくなっちゃいました。ガラス扉のところでじゃれあったり、一緒に自転車で走っているシーンを観て、泣いちゃいましたもん。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
「君を捨てたあいつはバカだ」とか、「こんなに綺麗なのに」と、自分で書いているんだものね。現実世界で叶わなかったことを、小説で表現するという部分は、自分もやっているから、すごくよく分かる。
現実でも傷ついているのに、小説の中でも自分を傷つけてしまう。夫に捨てられた自分を罰したいのかしら。ポーマンから、何に傷つけられたかを尋ねられて、ようやく話すけれど…。
姪に旦那を奪われたからですかね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
どうなのかしら…。
路子
路子
「恐れるのは死ではない」と言った後に、すごく間があってから「見捨てられることよ」と、言うシーンが印象的だった。
長い「間」があったから、どんなセリフがくるのかと思っていたの。映画の文脈からすると、「若さを失うこと」がくるとも思った。でも、「見捨てられることよ」というセリフだった。

ありましたね。
でもそうすると、姪のこと云々ではなく、「見捨てられたこと」が一番の理由だって思えますね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
別れた後に付き合った、若い恋人 リュドにも捨てられるものね。
捨てられるというよりは、ちょっと心が離れてきている、という感じですかね。
元々SNSも、リュドのことをもっと知りたいから始めたんですよね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
そうそう。
リュドを知るために、名前や年齢を偽ったアカウントを作り、彼の仕事のパートナーであるアレックスと繋がったのよね。

路子
路子
アレックスは好みだった?
かっこいいですよね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
優しい顔をしてる。
リュドは、なぜ、電話の声の主がクレールと分かっていたのに、エスカレートしたふたりの関係を止めなかったんですかね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
きっと、あまりにもふたりが夢中になっているから、衝撃を与え過ぎてはいけないと、思ったのよ。それとも、リュドは、クレールのことを狂ってると、思っていたのかしら。
「冗談だと思っていた」とは、言っていましたよね。だから、入院するほどひどいとは、思っていなかったのかもしれませんね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
ラストは、小説も書き直している最中で、違った未来も選べると、先生を明るく送り出すクレールのシーン。希望を感じさせるようだけれど…。
怖かったですね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
クララの電話から、アレックスに電話を掛けているということでしょう?
何をまたしようとしているのかしら。
しかも、微笑んでいるんですよね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
そうそう。ニコニコしてるの。気が触れてしまった人の感じ。不穏な音楽で盛り上がって終わるのよね。
すばらしい終わり方!
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
本当にすばらしいぐらい怖い終わり方。
クレールは、このまま退院するのかしら。
まだ退院出来るような雰囲気ではなかったですが、治るというものでもないような気がします。彼女の元々の素質ですもん。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
そうそう。病気という程ではないもの。
クレールは、このままどんどんエスカレートして、クレイジーになっていくのかしら。
絶対にそうなりそうですよね。
りきマルソー
りきマルソー

路子さんの前に座っていた男の人、多分、アレックスが自殺したとクレールが聞いたあたりで、もう映画終わると思っていたような気がします(笑)。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
そわそわしていた?
身支度をし始めていたので(笑)。
そのシーンの後、結構長かったですよね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
あのシーンが中盤くらいだったでしょう?
そうですよね。アレックスの自殺を聞いたところでもし映画が終わっていたら、よくある話でしたよね。
こういうのってミステリーとは言わないんですか?
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
チラシには、サイコロジカルサスペンスと書いてある。
サイコルジルカル?
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
サイコ…。
サイコロ? サイコ?(笑)。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
サ・イ・コ・ロ・ジ・カ・ル(笑)。
心理サスペンスということね。
一筋縄でいかないような、こういう話は面白いですね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
うん。
この間の『冬時間のパリ』にしても、現代の映画を観ている感じがする。

SNSとか、電子書籍の話ですもんね。でもそれはそれで良いと思います。
りきマルソー
りきマルソー
昔の映画も、もちろん素晴らしいですが、今の時代に沿った映画は、現在進行形で作られているから、そちらの方が現代人にとって感情移入しやすいような気がします。過去にすがってばかりじゃダメなんですよね(笑)。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
私もそう思う(笑)。


~今回の映画~
『私の知らない わたしの素顔』 2019年2月 フランス
監督:サフィ・ネブー
出演:ジュリエット・ビノシュ/ニコール・ガルシア/フランソワ・シビル/シャルル・ベルリング

-ゆかいな仲間たち, よいこの映画時間