路子先生との時間

みればみるほどかっこいい、ゴダール

2017/02/21

お気に入りの猫をいつも連れて歩いていたら、「ついに、ぬいぐるみにはまったの?」と知人から心配されてしまった。

「違うの。これにはわけがあってね……」 
「ゴダールの『気狂いピエロ』って映画に出てくる女優のアンナ・カリーナが持っている犬のポーチがすっごく可愛いの。でも犬より猫派だから、猫のポーチを持ち歩いてるのー」
そう説明(弁解)するわたし。



路子先生によると、「アンナ・カリーナ」という芸名はあのシャネルが名付け親。 
なのでオマージュの意味もこめて、シャネルの口紅を入れている。

なぜアンナ・カリーナづいているかといえば、現在新宿K'sシネマで公開中の『勝手にしやがれ』『気狂いピエロ』を観にいったから。
公開された60年代には「難解さを知ったかぶって楽しむ映画」と批評されたゴダール。2連チャンはきついかなぁ……と思ったけど、逆に続けてみることで、2つの映画のつながりや違いがわかって面白かった。  


『勝手にしやがれ』は観るのは2回目。はじめて観た3年前の感想は「よくわかんないけど、なんかオシャレ!」 
意味は理解できず、ジャンポール・ベルモンドの、超絶美男子ってわけでもないのにセクシーなところとか女を金づるにするダメンズっぷり、そして何よりジーン・セバーグのマスキュリンな可愛さが印象に残った。 
なので今回みたときも、ストーリーはまったく覚えておらず、新鮮な気持ちで鑑賞。 かみ合っているのか、かみあっていないのかよくわからない。けれど流れるような二人の会話が詩的でかっこいい。
言葉の意味というよりは、言葉自体の持つ美しさに惹かれる。
ゴダールは会話のなかに深い意味をこめたのかな。うーん、わからない自分は映画とか芸術がわからないのかも、ぐすん。と3年前も今回も思ったけど、あとで台本なしで映画を撮ったと知って驚いた。そうか、細かい文脈を理解しようとしなくてもいいんだ。もっと本質に目をむけよう。 

あとは、なんといってもジーン・セバーグ! 同性のわたしからみても、ほんとに可愛い(むしろ女子うけするタイプ?)。
映画のなかで、ジャンポール・ベルモンドがかぶってた山高帽を、ジーンが何気なくかぶるシーンがあるのだけど、それがまた似合うの! 
こういうシーン(男のひとがかぶっている帽子を、女性がかぶる)、マレーネ・ディートリッヒが出ている昔の映画とか見ても、しびれるくらいカッコいい。 あの髪型にしてみたい、と魔が差したけど、ぜったい後悔するんだろうな……。



「ゴダールののミューズたち」と題して路子先生がパンフレットに寄稿しているので、珍しくパンフレットも購入。 
『勝手にしやがれ』『太陽がいっぱい』などヌーヴェルバーグを代表する名作を日本に輸入した秦早穂子さんや新訳を担当した翻訳家の寺田次郎さんも寄稿していて、充実の内容。秦早穂子さんについては、幸運にも映画を見た翌週にイベントでお会いする機会があり、その記事はまた別途。

『気狂いピエロ』ははじめて見た。こちらのほうが個人的には好き。わかりやすいから(笑)。 
古い映像のほうは見ていないからわからないけど、今回のデジタル・リマスター版は半世紀前の映画とは思えないほど色鮮やかで美しい。これはぜひ大画面でぜひ見てほしいな。 

ストーリーは「ありえないでしょ!」というハチャメチャな内容だが、けっしてゴダールに論理性を求めてはいけない。 

個人的には、アンナ・カリーナがあんなに魅力的な女優だったと知らず、驚いた。
いままでアンナ・カリーナのことは、単なるキュートなファッションアイコン、でも強烈な個性はあまりない、今の時代にも多いちょっと可愛いモデル的存在なのかと思ってた(失礼)。その魅力と破壊力たるや、とんでもなかった……。 

ジャンポール・ベルモンドを虜にして意のままに翻弄し、あとで裏切る女性の役で、あきらかにファムファタール的要素満載なんだけど、妖艶な色気で落とすファムファタールではない。天真爛漫で子どものような無邪気さと、はつらつとした美しさ。 
例えば見るからに計算高そうな、淫靡な女性だったら警戒するかもしれないけど、まさかアンナ・カリーナみたいなひとが極悪だとは、ふつう思わないもん。 でもやることはきっちりやるからすごい。油断させておいて実は……みたいなギャップを狙う典型で、これはもう最強といってもいい。 


アンナ・カリーナの犬のポーチ。ここから口紅を取り出して、アンナ・カリーナぬりぬり。

あとは印象的だったのは、ロビンソンクルーソーみたいに自給自足生活をしていたときに浮き彫りになる二人の対照的な性格。 
「君とは会話できない 思想がない 感情だけだ」 「違うわ 感情の中に 思想がある」 
ジャンポール・ベルモンドは常にノートに詩のようなメモを書き付け、本をよみ、どこでも自分の世界に入ることができる。
かたやアンナ・カリーナは、音楽や踊りが好きで、外部の刺激を求める感情派。周りになにもない環境ですることがなくなった彼女は「私に何がでーきーるーのー 何をすればいいのー」と欲求不満をつのらせ、ついには「踊りに行く 殺されていい」とまで。 

あなたはどちらのタイプ?  わたしはジャンポール派だと思っていたのに、さいきん家にこもっているとそこはかとない退屈さ(やることはあるのに)を持て余していて、実はアンナ派なのかと思ったりする。 



映画のあとは、毬谷友子さんとヴィヴィアン佐藤さんのトークショー。
ヴィヴィアン佐藤さん、ビジュアルがすごい……。頭が、おおきい……。 

毬谷友子さんがお芝居以外で話しているのを見たのが初めてだったので、個人的にはそれが収穫。 浮世離れした「ふわふわふわっ」とした喋り方。俗世のことは、よくわかりません……みたいな。自分の好きな、自分が信じる世界に耽溺している人が出す空気感。

エリ付きのワンピースにカーディガンのコーディネートが『勝手にしやがれ』のジーン・セバーグと通じるところがあって、きゅん。 トークショーの内容も、なんか二人の話がかみ合ってないような感じだったけど、それはそれで面白い。
毬谷友子さんは、アルファロメオに乗っているんだって(映画に車がたくさん出て来る話の流れから)。 あの風貌でアルファロメオ乗り回してたら、相当かっこいいな〜なんて、わたしも映画と関係ないことを想像してふわふわ。



Tシャツやバングルなどの映画グッズのなかで、注目は『気狂いピエロ』アンナ・カリーナモデルの水色のバスローブ by (バスローブ専門店「affetto」
買い損ねてしまったけれど、海外の映画を見てると男性も女性もバスローブの着こなしがほんとうにオシャレで、憧れる。


映画の公式サイトはこちらから。
◆「勝手にしやがれ
◆「気狂いピエロ

-路子先生との時間