MODEな軽井沢 特別な物語

◆アール・デコも好き◆2009.7.6

2020/04/22

前回の「プチ・ファッションコラム」、部屋の大整理で「アール・ヌーヴォー」の本を発見したことを書きました。同時に発見したのが「アール・デコ」の本で、今回はそのご紹介です。

 

「アール・デコ」というのは、「アール・デコラティフ」の短縮バージョンで、直訳すれば装飾芸術という意味になります。
1925年に開催されたパリ万博、正式名称が「現代装飾芸術・産業芸術国際博覧会」なのですが、すっごく長いから、中の二つの単語アール・デコラティフをとって、「アール・デコ展」と呼んだのです。
ここからこの時代、1920年代を中心に流行した装飾スタイル全般を「アール・デコ」と呼ぶようになりました。
                                                             

ファッションの世界では、ポール・ポワレに始まって、ココ・シャネルへと引き継がれてゆきます。
ポワレについては以前にこちらで書きました

 

第一次世界大戦があって、それを機に社会が変わって、女性がどどどっと社会に進出します。
そうです。
仕事をする女性たちが増えたのです。
彼女たちは、しとやかなよちよち歩きをやめて髪を切り、活動的になりました。
そして声を大にして要求しました。
                                                             
「機能的で、しかもエレガントな服が欲しい!」
                                                             

 

この要求にポール・ポワレ、ココ・シャネル等のデザイナーがこたえてゆくわけですが、モードが変われば、アクセサリーも変わります。

                                                             

それまでは、長い髪を結い上げていたから、アクセサリーといえば髪飾りの類が中心でした。
けれど、いまや女性たちは髪を切っています。
そして胸元が広くあいた直線的な服を着ています。

                                                             
さて、次に何が必要でしょうか。そうです。短い髪に似合うイヤリング、広くあいた胸元を飾るネックレス、あらわになった腕を飾るブレスレット、なのです。

***

やっぱりいいなあ、アール・ヌーヴォーもいいけど、アール・デコも好きだなあ。
とため息まじりでページを繰り、はっと指を止めました。

そこには「シガレット・ケース」がありました。

 

シンプルでシックなデザインのシガレット・ケースに、むかしむかし、15年くらい前に出会った女性のことを思い出しました。

彼女は、当時おそらく40前後、今の私くらいの年齢だったと思います。
腰まであるまっすぐな黒髪と、くろぐろと縁取られた目が印象的なアーティストでした。

何人かのひとたちと、私は緊張しながら、お酒を飲んでいました。
そして煙草を吸おうとバッグから煙草の箱を取り出したとき、彼女が言ったのです。
ほかのひとに聞こえないように、私のほうに口を寄せて。
                                                             
「あなた、煙草吸うならシガレット・ケースを持ちなさい」
                                                             
そして、彼女は小さな黒いビーズのハンドバッグから、シガレット・ケースを取り出して見せてくれました。
赤と黒の渦巻きみたいなデザインでした。

そして、そのシガレットケースから煙草を一本取り出して、吸ってみせたのです。
その一連の流れが、圧倒的で、私はほとんど動かないまま彼女を見つめていました。
                                                             
現代では、こんなやりとりは、はやらないのでしょうね。

「あなた、煙草からだに悪いから、おやめなさい」

と、なるのでしょうね。
(念のため(誰に対する念なのかな)、現在の私は喫煙者ではありません。)

ハンカチにしても(以前、ヴァレンティノのところで書きました)、シガレット・ケースにしても、小物関係のこだわりに、私は弱い。

そんなことを確認して、「装飾デザイン アール・デコ装飾の世界」を閉じました。

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