MODEな軽井沢 特別な物語

◆衣装としての「服」◆2009.5.25

2020/04/22

軽井沢図書館を、娘とよく利用します。一つのカードで10冊借りられるので、二人で行くと20冊までオッケーですが、重たいので、「一人7冊ね」とあまり意味のない決め事をしたりしています。

一週間ほど前、別の本を探していたら、美輪明宏さま(注①)の「おしゃれ大図鑑」を発見。7冊のうちの一冊にすることにしました。

(*注①*私は常日頃、独断で「このひとはすごい」と思う表現者の名前に「さん」とか「氏」とか、そういうのをつけないようにしています。たとえば、私はピカソのことを「このひとはすごい」と思っています。岡本太郎のことも「このひとはすごい」と思っています。そして、ピカソや岡本太郎に「さん」も「氏」もつけません。それと同じなのです。この流れでゆけば「このひとはすごい」に思いきり入る「美輪明宏」に対しても、名前四文字ずばりで表現すべきなのです。でも、なぜか……どうしても、「美輪明宏さま」になってしまう。なぜでしょう……とにかく「さま」をつけないと落ち着かない……不思議なエナジーがあるのでしょう。以上、くどい説明でした)
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家に戻り、リビングで図書館から借りてきた本を並べて、「どれから読もうかな」と考える、あの瞬間が好きです。
娘と互いに互いの本をチェックしたりします。

彼女、その日はやはり「おしゃれ大図鑑」に目をみはって、私が借りる本としてはたいへん意外だ、という趣旨のことを言いました。読んで良い旨を伝えると、中原淳一の絵などに反応しながらページを繰っていました。

 

この本、私が小学校の教師だったら(ありえませんけど!)、「この夏の推薦図書」にしたいです。そうよ、
★「美」とは何か。
★自分はどんな人間になりたいのか。
★一に美意識! 二に美意識! 三も美意識! とにかく美意識! 
……といったことを、小学生の頃から強く教えてあげれば、

「どんなにそれが醜い姿であろうと周囲がやっているからする」人や「それが醜いことすら気づかない」人や、「人と違うって何? 美意識って何?」とあまり美しくない表情で言う中学生、高校生、それ以上の年齢の人たち……が多少、減るのではないか、と期待してしまうのですが、いかがでしょうか。

さて。
最初のページ、見開きからして圧倒されます。
渋谷の街を背景に闊歩するのは中原淳一が描いた女性たち。美輪さまの意図が痛いほどに伝わってきます。

あんまりきれいな街ではないけれど、きれいな服を着た人たちが歩けば、ほら、こんなに美しい……。とおっしゃるのです。

私は色彩が咲き乱れるようなその絵に、ほおっ、と吐息をつき、次の瞬間、わが目を疑いました。というのは、中原淳一の少女たちの靴に、びっくりしたのです。
これ、欲しい、と思ったのです。そこにあるものは、いま私が「欲しいなあー、でも、なかなかないのよね」と思っているイメージの靴に、ひじょうに近かったのです。

がぜん、興味が高まって、すぐにネットで中原淳一の作品集を購入しました。
そしてもう一冊購入!
はい、それはもちろん、図書館で借りてあまりにもすばらしい本だったので永久保存版とすることにした、「おしゃれ大図鑑」です。
(*というわけでこのコラムにも再登場の可能性大です)

↓ 一冊は図書館に返却予定の本、一冊は購入した本です。

「プロローグ」で美輪さまは、詩人、寺山修司の「人はみな、自分の人生を演じている」という言葉を引いて、おっしゃいます。
***
そうです、世の中の人はみな、
人生という舞台の上で、自分の役柄を演じているのです。
そしてあなたの役柄は、
ほかでもない、あなた自身が選び取ったもの。
あなたが着ている服は、あなたが選んだ衣装
あなたが話す言葉は、あなたの台詞。
あなたのしぐさは、そのままあなたのキャラクターを表すもの。
***
に……にている。だなんておこがましいにもほどがあるというものですから、言えませんけれど、私は上記の美輪さまの御意見に、ほぼ同調します。目新しい意見ではないのですけれど、やはり真実なので、重みがあります。
特に、
あなたが着ている服は、あなたが選んだ衣装
この言葉とじっくり向き合えば、クローゼット再点検を余儀なくされること、間違いなしでしょう。

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