軽井沢ハウス

■9話■ 疑問符だらけの「収納」物語  

2017/05/17

あ。その扉は開けてはいけません。ノブがぼってりしていて愛嬌があるから、つい。ですって? 
でも、開けてはいけません。だって、そこにはお見せしたくないものがたくさん……。

■「収納」にエナジーを注ぐ人■

家を建てようと決めたときは、そりゃあもう、ありとあらゆる所から資料を取り寄せたものでした。
大手ハウスメーカーから、小さな工務店まで、広告に目をひくものがあれば、すぐに連絡をとったので、さまざまな会社のパンフが集まったものです。
おそらく時代の流れによる「自然素材」とか「バリアフリー」といったコピーに並んで、「たっぷり収納」的なものも多く目にしました。
その度に、「やはり、やはりなのだわ」と一人つぶやいたのは、次のように考えたからです。
……「収納はあればあるほどいい」と思っている人はきっと多いのだ。だからこのようなコピーが自慢そうに並び、そして主婦向け雑誌には、「収納の達人」みたいな特集が、数多く組まれるのだわ……。

私は「収納」にエナジーを注ぐ人とは気が合わないようです。
というのは、「生活に必要なものなんてそれほどない」と思っているからで、収納スペースにしまわれているもののほとんどはガラクタとしています。よって、その整理に懸命になることに価値を見ないのです。
なんてこと言いながら、悲しいかな、人は(私です)やはり欲深く、思い切りが悪いので「もったいない」とか「思い出に」といった理由をつけて、絶対に後で使うことはないし絶対に後でそれを肴に思い出にひたることはなくても、ガラクタをとっておいたりするものです。
ここで、「ああ、どうして私ってば思い切れないのかしら」と、自分を責めるのは精神衛生上よろしくないので、ここは、何か別のもののせいにするしかありません。そこで私は、こうすることにしました。
「すべては、とっておくスペースがあるからいけない!」
そうです。場所があるから、「とりあえず」とっておいてしまうのです。だから、すっきりとした生活をするためには、収納スペースを狭くするしかない。これが、私の、おそらく賛成少数の、意見です。
というわけで、軽井沢ハウスは収納スペースが比較的少ない家になったはずなのですが、全くつくらないというわけにもいかず、二階部分になぜか割とたっぷりした収納スペースができてしまった、と思っています。けれど、我が家を訪れた友人知人は「収納、これだけ? 少ないって!」とおっしゃいます。

■収納の宿敵は「奥ゆき」■

こんなわけですから、一階にはほとんど収納はいらなかったのです。けれど最低限のスペースは必要でしょう。何を入れるかといえば、掃除機、古新聞等、見えるところに置いておかないほうが、美しいものたちです。
そこで、平凡ながら階段下をそれにあてることにしました。ところが奥ゆきがありすぎる。奥ゆきがあると、取り出しにくい奥の方には結局ガラクタと埃が積まれるだけです。これは困りました。そこで、名案はないものかと「考える人」のポーズをとったら、あっさり名案が浮かんだものですから拍子抜けしました。「我ながらナイスアイデアだわ」と自画自賛したことは言うまでもありません。
私はさっそく、自分の「ナイスアイデア」を丸山さんに伝えました。
「ね? いいでしょ?」
丸山さんは、「うん、それはいい考えだ!」と珍しく(強調)本気で(強調)褒めてくださいました(と思います)。


つまり。階段下収納が可能な部分を真ん中で仕切って、ダイニング側と外側の両方から使えるようにしたのです。
というのも、ここは軽井沢ですから冬はタイヤの交換が必須。かつ、雪かきの道具、ソリなど冬に使うものがけっこうあり、これらを収納するスペースが必要です。けれど物置をつくるのも嫌だし、どうしたものかと考えていたところに「階段下収納、奥ゆきありすぎ」の問題が生じ、ナイスアイデアにつながったのです。
外側の部分には、タイヤや庭掃除の道具、ソリ、雪かきの道具などを、ダイニング側には、掃除機や新聞紙、ゴミ袋等を収納。奥ゆきが浅いので、とっても使い勝手がよいです。扉はもちろんルーバー調。湿気がこもらないようにするためです。

■ダストボックスへの不満■

ダストボックス、ゴミ箱。
これも探したのです。あらゆる方面に手を伸ばして。けれど、これまた気に入ったのがない。
なぜ、どれもこれも同じようなのでしょう! なんて個性がないのでしょう! なんて無表情なのでしょう! どうして、「みんないっしょ」で平気でいられるのでしょう! なぜ「自分自身」と「その他」を分けることの重要性に鈍感でいられるのでしょう!
と、世の中に腹を立てたくなるほどに、全くないものですから、仕方なくつくりました。ダンボールに布を貼って。
……ああ。「手づくりのダストボックス」。どうも、抵抗があります。しょぼいかんじで嫌です。けれどつくるしかないのだから、せめて布にはこだわることにしました。上等な布(カーテンに使った布と色違いの、しっかりとした生地)を使ったのです。用途が「ゴミ箱」だからこその心意気よ! と自分を励ましながらの、精神的に苦しい制作でした。

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