◆思いがけない、けれど最高の、贈り物
2016/06/28
これは書き残しておきたい。
私が大好きなアーティストの方から、贈り物をいただいた。
送り先の確認で、事前に「なにかいただける」ことは知っていて、それが彼女も同じものをもっている、そういうものであることはわかっていて、なんだろうなんだろう、って推理したけどぜんぜんわからなくて、だからその包みを発見したとき、わあ、と胸で声をあげてすぐに開けた。
虚を突かれた。
そこには、私の小説『女神 ミューズ』があった。
お手紙があって、それを読んだ私は、目と胸のあたりがぐわっと熱くなって、しばし、たたずんでしまった。
以前、このブログに、『女神 ミューズ』が出版社から連絡がないまま絶版になっていたこと、在庫が一冊もないこと、当時は数万円の値がついていて中古での購入も難しかったこと……などの恨みつらみを書いた。
ああいうことは書かないほうがいい、と注意する人もいたけれど、削除はしていない。
その記事を彼女はお読みになって、心いためていて、そしてたまたま、中古で一冊入手できたから、まだ『女神 ミューズ』を読んでいない方に、ぜひお譲り下さい、と送ってくださったのだ。「私も大好きなミューズ、いつか復刊されますように」という言葉とともに。
私がどれだけ感動したか、おわかりでしょうか。
私は、彼女が私のこの小説をほんとうに愛してくれているんだ、って、そのことがとっても嬉しかった。
そして、それをこのような形で表現してくださったことが、その気持ちが、ほんとうに嬉しかった。
私は恵まれすぎている。このような方々に、どのようにして、私が受けた愛情をお返ししたらよいのだろう、本気で考えてしまう。
そして、彼女との出逢いを思い返す。
いまからちょうど一年くらい前に、とある画廊のグループ展で知り合ったのだった。
彼女の作品を観に行ったわけではない。別の目的で訪れた画廊だった。
彼女は入口近くにいて、綺麗な方だなあ、と私は見惚れて、それから、いろんな流れで、彼女を紹介されて、そうしたら彼女は、山口路子さんって、あの山口路子さんですか。私、『女神 ミューズ』大好きです、っておっしゃったのだった。
私は、しばらく信じなかったように思う。なにかの間違いではないですか、みたいなことを言ったのだと思う。だって、ほんとうに嘘みたいだったから。
でも、嘘じゃなかった。それは小さな奇跡だった。
私の大切な大切な本を、大切に読んでくださっている方に私は出逢ったのだ。
彼女はいまでもミューズのラストを目に浮かべると、せつない気持ちになる、自分にとって大切な物語です、と言ってくださる。
彼女は、私よりずっと年下で、とっても美しい。
彼女の創作に対する、懸けているものの重さ、形が私はとても好きだ。ほんものを創ろうとしているひとだと思う。
そんな彼女が「大切な物語」と言ってくれる『女神 ミューズ』の作者として、私、恥じないような作品を書き続けてゆかなければ。