◎17本目 『ドン・ジョン』
2026/03/02
【あらすじ】
伝説のプレイボーイ、ドン・ファンにちなんでドン・ジョンと呼ばれてるジョン(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)は、呼び名の通り、女性に関して負け知らずの人生を送っていた。けれどそれでは満足せず、ポルノ鑑賞によって欠けているものを埋めている。そんな彼が最高にセクシーな女性バーバラ(スカーレット・ヨハンソン)と出会い、真剣につきあい始めるが、自分本位同士の恋はうまくいかない。その後出会った年上の女性エスター(ジュリアン・ムーア)によって人生と愛を知ってゆき…。

♥M
一方的なセックスだったのが、ああいう風に変えられる。
♣R
相手への埋没によって。
♥M
埋没。「とろん」ね。
♥M
ふたりで「とろん」。
(映画の前に性愛と気持ちについて話していた私たち。「とろん」はその時のキーワードのひとつ)
字幕の「埋没」って、もうちょっと違う言い方なかったんですかね。
♥M
何という英語を使っているのかな…我を忘れるみたいな感じかな。
♣R
ジョセフ・ゴードン=レヴィット、かわいくないですか?
♥M
りきちゃん好みね。彼はロバート・デ・ニーロの若い頃の表情に似ていると思った。
ジョセフ・ゴードン=レヴィットは他の色々な作品に出てる?
♣R
ちょこちょこ出てるみたいです。
彼のことは『(500)日のサマー』という映画で知りましたけど、それと『消された暗号』しか観たことがないです。DVDをいくつか持ってはいるのですが、まだ観てないです。
キャリアはすごく長い俳優みたいです。
♥M
本当に面白かった…ちょうどこの作品を観る前に話していた内容とすごくリンクしていたね。
観る前の予習話をして、さて観よう!と、観たような、そんな感じがするくらい。
私たちは本当に素晴らしい映画のチョイスをしていると思いませんか?
♣R
たしかに…すごくリンクしていました。
♥M
B級、C級、D級くらいの映画だと思っていたし、そういうくだらないのが観たかったのだけれど、まずビックネームの女優がふたりも出てる。
♣R
アン・ハサウェイもちらっと出ていましたよね。
あれそうだと思います。
♥M
映画を観るシーンで出てきた映画の中のショートカットの人?
友情出演みたいな感じかしら?
♣R
ジョセフ・ゴードン=レヴィットと仲がいいみたいですけどね。
♥M
そうなのね。
ジュリアン・ムーアが出てきた時は、友情出演っぽいちょっとした登場で終わりなのかな? と、思っていたの。そうしたら最後にメインを持っていくくらいの役柄だった。いやー面白かった。
要するにこれは陳腐な言い方をすれば、本当の愛を知らなかった人が、エスター(ジュリアン・ムーア)に出会って愛を知りました、という作品。
見た目ではオバサンと言っていたくらいの意識でのスタートだったけれど、外見ではなく中身に惹かれたという、つまらない言い方しか出来ないけれど。
■素質があるか、素質がないか
♥M
ジョンは、元々素質を持っているのよ。
出会いがあったり、教えてくれる人がいたとしても、素質がないと開花しないでしょ。
欲望のままに動くし、そういう素質を全然持っていないように見えるように描かれているけれど、エスターと出会ったことによって何かに気付き始める。それはやっぱり彼自身が持っている才能のひとつだと思う。エスターも最初はそういう関係になるとは思っていないはず。
♣R
丁寧にベットメイキングをしたり、床掃除をするとかの私生活のちょっとした仕草で、彼自身のそういった中身が表現されていましたね。
♥M
そうそう。あとは教会に行くとか。
やっぱりストイックな人物なのよ。
自分を愛しているから肉体作りもするんだろうけれど。
これはもうみんなにオススメしたい。万人受けはしないかな?
私は最高に気に入った。希望の映画だわ。
♣R
観始めは本当にそんなことが起こるという感じが全然しないのに。
♥M
スカーレット・ヨハンソンは演技が上手ですねえ。
すごく自己中で、くっちゃくっちゃくっちゃくっちゃガムを噛んでる人物を演じてる。
♣R
ジョンの実家にいる時もくちゃくちゃしてますよね。
♥M
そうそう。
あの感じとか、自分のことしか考えてないと言われても、何も気付きがないところとか。
♣R
何言ってるのこいつ? ぐらいにしか思っていないですよね。
♥M
そう。ああいう人こそ、素質がない人。
エスターに「あなたのセックスは一方的なの」と、言われるけれど、彼はそれを受け止めてショックを受ける。同じシチュエーションでバーバラがそう言われたとしたら、きっとそんなことない、何言ってるの?、という感じになると思う。
素質がないからそれに気付くことなく、受け止められない。
♣R
ジョンの妹の最後の一言も秀逸でしたね。
♥M
そう! 彼女は全員を見ている。
ずっと携帯を弄っているのに、見る目を持っている人を代弁してね。
♣R
一番見ていなさそうで、周りに無関心みたいな感じなのに。
♥M
あれが唯一の発言だった。
■エスターの分析
♥M
役者がいいと見入っちゃうね。彼もすごく魅力的。
何歳くらいの設定かな?
♣R
ネットでは、彼は20代後半の設定だと書いてありました。
彼はエスターと出会って間もない頃、彼女に対して怒ったじゃないですか?
♥M
ノートを貸したシーンね。
何でこの講義を取ったかを聞く場面。
♣R
それで言い当てられたということですよね?
♥M
別に言い当てられた訳ではないけれど、彼女の質問によって、自分からのアクションではなく、バーバラの希望で動いているということが分かった。そうは思いたくないのに、エスターからの質問で考えたくないことや見たくないことが見えてしまったから怒ったのだと思う。
エスターは、14ヶ月前に車の事故で夫と息子を亡くしている。よく生きているな、という感じ。しんどいわ…実はとても重たい話だったのね。
そういう傷も持っていて、ふたりは結婚の約束とかそういうのは全然関係ないけれど、気持ちが通い合ってる。
♣R
その傷すら愛おしいという目線でしたね。
♥M
うん。いいなあ、あんなに愛されて。
彼女が彼に教えたことは、正に私が映画を観る前に言っていたこと。
気持ちがあって、その先にセックスがある。それがないと気持ちよくない。
でもあそこでちゃんと「あなたのセックスは一方的なの」、と言ってあげるのがいい。
セックスのことはデリケートだから中々言えないもの。
年の差があるから、いうのもあるかもしれない。
♣R
そういう意見を受け入れない人もいますが、意見をちゃんと受け入れるということはやっぱりジョンには…。
♥M
素質があるの。
エスターも何かを持っていそうな女性よね。レアなポルノビデオを貸したりするような、何か普通の人じゃないような感じ。
そういう人が彼に何かを言うということは、彼女もジョンの素質に気付いていたのかもしれないね。
こんな馬鹿に言ってもしようがないっていう奴には、きっと言わないもの。
♣R
ジョンは、多分、初めて女性に理解してもらえたと思っていて、そういうのでエスターとの壁がなくなったというのはあるかもしれないですね。
♥M
うん。だって初めて女性に自分はポルノ中毒だとカミングアウトしているんだもの。
でもエスターはそれをえっ!? みたいな反応ではなく、どうして観ちゃうの? とか、ポルノなしでイケる? とか聞いて、ちゃんと分析してくれてる。
それはジョンにとって、今までにない経験。
言うとおこがましいけど、私もそういう分析とかするの。いやんとかではなく、どうしてそんなに観るの? そこに何があるの? それによってあなたは何を得ているの? 普通のセックスと何が違うの?、と、分析していく。だからエスターの分析の仕方が自分に似ていると思った。
♣R
それはね、思いました(笑)。
♥M
そうでしょう? りきちゃんは分かるよね。
自分を見ているみたいだなって思ったから、すごく楽しかったのだと思う。
おばさんと言われてしまう年齢で傷を負っている人でも、あんな風に最後ハッピーになれる映画ってサイコー!
そういう意味では私の中ではとってもいい映画で5つ星です!(笑)。
♣R
ジュリエット・ビノシュの『アクトレス』でも言われていましたね。
「どんな馬鹿げた映画でも、真実がある」と。
全然そんなに期待していなかったですもんね。
♥M
本当に真実があったと思う。今の私のメインテーマがあった様な気がする。
それってすごいよね?
♣R
そうですね!
たまにはこういうの観なきゃダメですね(笑)。
♥M
本当ね。
私、何度もアマゾンプライムでこの作品をスルーしていたの。
♣R
存在は知っていたんですね。
♥M
うん、オススメとかで出てくるもの。内容も見ないでいた。
♣R
おバカなアメリカの青春映画みたいな感じですもんね。
♥M
そうそう。で、ドン・ファンをもじったりしているから、本当にくだらないラブコメディーとかお色気コメディーみたいなのかなと思ってスルーしていたの。
それがこんなに素晴らしい映画だったなんて。
■罪の意識がないセックス
♣R
この映画、多分ジョセフ・ゴードン=レヴィットがプロデュースをしている作品なんですよね。
監督・脚本ですって。
♥M
彼、すごいじゃないの。
♣R
そう、彼はすごいんです♥。
♥M
実年齢は何歳?
♣R
36歳です。
♥M
ということは、32歳の時の作品なのね。
りきちゃんと同じくらいね。
ジュリアン・ムーアは何歳くらい?
♣R
52歳です。
♥M
私と同じくらい。52歳と32歳だから、20くらいの歳の差か。十分有り得る。
作り方もよかったね。古典的な方法なのかもしれないけれど、同じシーンを繰り返していく方法ね。教会のシーン、車のシーン、家族のシーンを1週間ごとにね。
それでちょっとずつ変化がある。スポーツジムのシーンもそう。最後は…。
♣R
いつものマシーンではなく、バスケットに行きましたね。
♥M
というのは、自分ひとりの世界からコミュニケーションを取る方に行ったということね?
♣R
あとは懺悔と祈りの必要性がなくなったからですよね。
♥M
そうそう。
自分にとってはエスターとの婚前交渉は全然罪ではないと思っているのに、懺悔室で10回祈れと言われたから。
♣R
どういうカウントのシステムなんだってね(笑)。
♥M
本当ね(笑)。
♣R
彼にとっては本当に特別なものだったんですよね。
それなのに懺悔室で侮辱されたみたいな感じなんですかね。
♣R
侮辱されたとまではいかないけれど、今までにあった一夜限りの関係や、ポルノ鑑賞を何十回も観てしまうことは自分自身も罪だと思ってる。
でもエスターとの関係は、罪という意識が全然ない。それなのに10回も祈れと言われたから、自分の中で何かが違うと思ったのね。
■アメリカのセックス事情と友人・知人のセックス
♥M
それにしてもアメリカは本当に禁欲的…というかなんだろう…しばりが日本よりもあるような気がする。
セックスについて話している時に、愛の行為という言葉を使う時は正常位オンリーだって言ってたね。バーバラとの関係は、愛情がある関係だから正常位。あんなに遊びの関係が多い人でも正常位が多くて、ファリュスを口で愛することはあまりせず、ミネットすることを要求する女が多いというのが、彼の性経験の中でもパーセンテージを占めてる。そういう女が多いということに私は驚いた。
♣R
一般的にそうなんですか?
でも、自分もそう思いました。
♥M
思ったよね。
まありきちゃんの場合は男と男だから、男と女のセックスとはちょっと違ってくると思うけれど、それにしてもそう思わない?
♣R
うん、嫌いなんだ…って思ってしまいます。
例えばミネットされるのが嫌いな人もいるわけですよね?
♥M
そうね…でもミネットするのが好きな人って多いみたい。したがる人が多い。
だけどそれが嫌いという人と、しないで済むならラッキー、という人と、どうしてもしたいという人に分かれる傾向があるの。これをしないと興奮しないって人ね。
それを要求するというのは、アメリカの女性の特徴なのかしらね。
日本とは違う結果が出そうね。
♣R
そういうことはなかなか聞けないし、聞かないですよね。
♥M
よっぽどじゃないとね。
♣R
以前知人と、友人とかのセックスを見てみたいよね、という話になったことがあるんです。
♥M
じゃあ、りきちゃんがしてるのをとか、私がしてるのとかを、ということ?
♣R
まあ言っちゃえばそういう話なんですけど(笑)。
やっぱりどういうことをしてるんだろうとか、ポルノじゃないものとして。
♥M
だからラブホテルの盗撮みたいなのが出回ってるのよ。
♣R
そういうポルノではなく?
♥M
本当にあるみたいよ。需要があるのよ。
例えばカップル喫茶みたいなところでというのは、人に見られることを意識してしているからちょっと違う。人に見られることを意識していない人たちがどういう風にしているか。つまり隣の寝室というやつね。あそこの夫婦はそういう風にセックスしているのか? とか。
そういうのはみんな共通に思ってるかもしれない。でも私はそんなに興味がない。そういうのは私のメインテーマだけれど、実際の性行為、特に知人のは見たくはないなあ。
♣R
性行為自体を見たい訳ではないんです。統計みたいな感覚で知りたい。
でへへへっていうので見るのではなく
♥M
ここはこう、ここはこうみたいなね!
♣R
そうです。ここはこういうことをするんだ、みたいなのを知りたい。
言葉だとやっぱりちょっと違うじゃないですか。
♥M
うんうん、なるほどね。でもすごそうね。
普通のカップルがコスプレとかしながらやってそうだものね。
それがそのカップルの普通だったりする。
♣R
いわゆる「みんなの普通」というものが知りたい。そういうのを話す場がないじゃないですか。聞く場とか。だからこそ、こういう映画を観た時でも一般的な常識が分からないから分からない。
♥M
『セックス・アンド・ザ・シテイ』が爆発的な人気を博したのは、それを女性の目線で語ったからなのだと思う。りきちゃんは全部観た?
♣R
全部観ましたよ。
♥M
私はあまりにも観ているから、その本を書いてくださいと言われたくらい。
でもあれは本当に女から見たセックスを赤裸々に語っている。下手だけど気付かない男とか、そういうのがあったから面白かったんだと思う。へぇ…というのと、代弁してくれているところとかがあったから面白かった。性というのは日常会話の中ではあまり出てこないからね。
♣R
タブー視されていますからね。
♥M
色眼鏡で見られる。
『軽井沢夫人』を書いただけでもそうなのだから。
彼はポルノに夢中になっているけれど、現実の女とも寝ている。満足はしていないけれどね。
だからまだ現実世界との繋がりを持っているけれど、今はネットで満足しているという人たちが増えている。それも実写ではなく、アニメーションもある。でもそう考えてしまうのも分かる。ドンが言っている通りに、本当にそこには理想があるんだもの。自分が動いたり、相手を満足させようと思わなくてもいいからね。
♣R
いわゆる一方通行のってやつですよね
♥M
うん。一方通行の気楽さは私にはないけれど、そういう人が増えているというのも分かるような気がする。めんどくさくない。ぐにぐに言わないし、「愛してー」とも言わない。
そういう今の現実を描いている気もした。
♣R
意外と深い。
探るといろんな方向から観られますね。
■『ドン・ジョン』というタイトルは正しいか
♥M
ドンの家族もみんな身勝手。
バーバラと別れて、お母さんが怒るシーンも、自分のことだけを考えているし、それを思いっきり言っちゃう。私の孫はどうなるのよ! って。
ドンはハートブレイク中なのに。身勝手なのよね。
♣R
たしかに身勝手な両親でしたね。
俺の女だと言う父親とか。
♥M
そうそう。
バーバラを舐めまわすように見たり。
♣R
尻撫でたり。
♥M
ああいう家庭に育っているっていうのもバックグランドとしてある。
コミュニケーションが取れてない。
♣R
コミュニケーションですら、みんな一方通行でしたね。
♥M
妹はずっと携帯を弄っているし。
♣R
お父さんはテレビばっかだし。
♥M
だからそういうのが彼の人格形成に影響を与えている、というのも納得出来る。
いやー面白い映画でした。これオススメです。みなさまに。今アマゾンプライムにて無料で…。
♣R
ご覧いただけます。
♥M
タイトルがくだらなそうだとか、パッケージで判断しないで。
♣R
しない。もうしちゃダメ。
♥M
タイトルがよくないの。
たしかにそうなんだけどさあ…って思うけれど。
日本語にしてタイトルをダメにしてしまうのもあるけれど、これは原題でしょう?
タイトルがドン・ファンに似てしまっていることも誤解を招いていると思う。
♣R
意味があるのかな。
♥M
ドンってあれよ。
♣R
そうか。ドンって、「私の首領(ドン)と呼ばせてくださいー」のドンですもんね。
♥M
それ何だっけ? すごく懐かしい。 リアルタイムで聴いていたような気がする。誰だれ?
♣R
石野真子ですよ。
漢字とカタカナで首領(ドン)って字幕が出てきた時、真子ちゃんしか出てこなかった。
♥M
石野真子か!
だからドンというのは、ナンパの首領(ドン)みたいな感じで呼ばれていたからなのよね。
で、名前がジョンだから…。
♥M ♣R
ドン・ジョン。
♥M
なんだけど、やっぱりタイトルはもう一工夫欲しかった。
♣R
そのまま過ぎましたね。
♥M
名前だもん。名前というか呼び名。
♣R
日本だと『彼のあだ名はドン・ジョン』みたいなタイトルになりそうですね。
♥M
『ドン・ジョンのセックスライフ』とかね。
♣R
ありそう(笑)。
♥M
それだともっとくだらなくなるね。確かに難しい。
♣R
だからと言って真面目なタイトルにしてしまうと面白さが半減してしまう気がします。
そういう映画なんだって真面目に観ちゃう。タイトルって難しいですね。
♥M
そうするとやっぱり『ドン・ジョン』ね。
♣R
海外だと名前をタイトルに付けることが多いですよね。
♥M
たしかに多い。
♣R
海外のアーティストも、自分の名前をファーストアルバムのタイトルにしたりしているし。
♥M
原題が固有名詞なのに、邦題を変えてしまっている作品は結構あるよね。
だからこれは付けようがなかった。どういう風にしても陳腐になっちゃうと思って『ドン・ジョン』にしたのだと思う。
私たちが考えても、ぷっていう陳腐なのしか出てこない。ドン・ジョンが本当の愛に巡り合う物語とか、センスのなさ爆発! みたいな。だからタイトルの件は。
♥M ♣R
許そう。
♥M
今日は本当にナイスチョイスでした。自画自賛な私たち。
みんな、意味不明だと思うけれど。





