◎19本目 『ラ・ピラート』
2026/03/02
【あらすじ】
かつての恋人アルマ(ジェーン・バーキン)を、現在の夫であるアンドリュー(アンドリュー・バーキン)から奪おうと企てるレズビアンのキャロル(マルーシュカ・デートメルス)。
その様子を見守る謎の少女(ロール・マルサック)と探偵(フィリップ・レオタール)。
5人の男女が織り成す激しい愛憎劇。
カンヌ国際映画祭で物議を醸した、カルト的人気のあるジャック・ドワイヨン監督の問題作。

♣R
共感があまりできない作品でした…。
♥M
意味不明な部分も多かったね。
怒鳴ってばかりで、クレイジーだということはわかった。
♣R
でもそこが目立ってしまうと、他のみんなが芋っぽく見えてしまいますね。
♥M
オーバーアクションの演技が多くて、まるで舞台を観ているような感じだった。
♣R
きれいだとは感じなかったです。
♥M
でも、映像的には色彩や暗いところの…。
♣R
影とか…。
♥M
そうそう。そのあたりは美しいと思った。
バーキンのことをとてもきれいで美しくて素晴らしいと思っている監督が作った映画なのね。
♣R
似ているようなシーンを観たことがあると思っていたら、同じ監督でした。
♥M
何という映画?
♣R
『ラブバトル』です。
その映画も言い争いのシーンが目立っていました。
♥M
作品名からして『ラブバトル』だものね。
■主役のジェーン・バーキン
♥M
『ラ・ピラート』は何か受賞していたような気がする。
♣R
第37回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品作だそうで、その時はブーイングを受けて受賞も逃したみたいです。
でもフランスで公開されると高評価で、アルマ役のバーキンがセザール賞の主演女優賞、キャロル役のマルーシュカ・デートメルスが助演女優賞にノミネートされて、子ども役のロール・マルサックが有望若手女優賞を受賞したんですって。
♥M
評価されてるのね。
♣R
ほぉ…。
『ラ・ピラート』とは、女海賊や略奪する女を意味するんですね。
特にこの映画を観たパトリス・シェローは、ジェーンの演技に感銘を受け、彼女を舞台『贋の侍女』のヒロインに起用し、舞台デビューさせたと書いてある記事がありました。
あの演技だったから舞台なんですね。舞台の感じだったから。
♥M
私たちは間違っていなかったね。
♣R
ジェーンの代表作はあまり思い浮かばないですよね
♥M
一般的にはね。でも、観ようと思うとごっそり出てくる。
セルジュ・ゲンズブールとの作品が有名かな。
♣R
そうですよね。
昔の作品は少し知られているけれど、そんなには…という感じなんですかね。
私はバーキンがフランス映画祭の団長で来た時に、『テルマ、ルイーズ・エ・シャンタル』という作品を観ました。(この年の映画祭レッドカーペットで、私はバーキンにサインを貰いました。その時に私のマッキーを持って行ってしまったバーキン。映画祭オープニング時の舞台袖で、蓋のないマッキーを持ったまま立っているバーキンがいたとかいないとか)。
♥M
その作品は日本で一般公開されていないよね?
『テルマ、ルイーズ・エ・シャンタル』は、60歳になって恋をする女性の話。
ふたりの娘が出演している『カンフーマスター』という作品もあるよ。
それは日本で公開されたみたい。
■謎めいた子ども

♣R
日本での評価はどうだったんですかね。
いわゆる映画好きの人の感想とか評価高いのかな。
最後の船のシーン、ちょっと笑ってしまいました。
♥M
どこどこ?
♣R
船の上でみんなでじゃれ合っているシーンです。
♥M
じゃれ合ったり、下行ったり、上行ったりするシーンね。
何でそんなに船室に戻ったり、甲板に出たりするんだろうって。
♣R
出たり入ったり、出たり入ったり。
倒された時に風が強いせいで、股がおっぴろげになってしまったり。
主な3人の人物像は分かりましたが、子どもの存在が分からなかったです。
♥M
あの子どもは多分、謎めいた人物として存在している。
そこが文学的なのかな。
♣R
死神的な役割ですか?
♥M
天使や死神の化身的な存在。
♣R
運命を左右する者ということですね。
♥M
そうそう。そのあたりは全然明かされていなかったね。
子どものようにも見えるし、子どもではないようにも見える。
■どうしたらいいか分からない

♥M
「あなたは誰も愛せない」という言いまわしが何回か出てくる。
誰も愛そうとしない。
♣R
戻ったり、戻らなかったり、ずっと行ったり来たりの関係ですよね。
♥M
本人もどうしたいか分からないから激しくなってしまうし、混乱して「私を撃って」とか言ってしまったりする。だから観てる方も、この人はどっちに行きたいのか、わからなくて当然なのかもしれない。
でも、全員が、あまり魅力的ではなかった…。
♣R
男はどっちも…。
♥M
好みじゃない?
♣R
好みじゃないですね。
♥M
レズビアンのシーンも、お互いの欲望が感じられなかった。
♣R
「嘘」みたいなものが見え隠れしていますよね。
だから全然入り込めない
登場人物たちが突然和解するのも、わからない。
♥M
なぜか一緒にご飯を食べに行ったりね。
■一方通行の人間関係
♥M
私、この映画が賞を獲得したり、評価される理由が分からない。
そういうのが分からなくなっちゃっているのかもしれない。
♣R
いや、この作品は分からないですよ!
♥M
先生、そうですか?
私の感性が鈍っているということではないでしょうか? (笑)。
♣R
日本ではジャック・ドワイヨン監督の映画がDVD発売だけされて、あまり一般公開されていない理由はそこなのかもしれないですね。
♥M
私も『ポネット』くらいしか知らない。
♣R
この時代の映画は、こういう作品が多いんですか?
♥M
この時代は80年代?
♣R
1984年の作品です。
♥M
理解できる人にだけ理解されればいい、みたいな。
業界の人たちの中での評価を重視するとか、そういうのかな。
愛ゆえの諍いで、泣いたりわめいたりするけれど、私には愛が見えなかったの。
♣R
憎しみみたいなものばかりが強調されていましたね。
♥M
憎しみすらない。
憎しみは愛と表裏一体だから、憎しみがあれば共感できるけど、なんていうか、誰ひとりとしてコミュニケーションが取れていないかんじがして。
♣R
みんなが一方通行でしたよね。
♥M
そうそう、一方通行なの。本当にそう。
だからちゃんとした会話というものが誰ともなされていない。
♣R
訳の問題なのかな? とも思いましたが、分かる単語とかで拾っていくとそういうわけでもないんですよね。
♥M
そういう作品ということかな。
コミュニケーション不在を描いている…。
♣R
例えば、フランス語とかの音のリズムで詩的に喋ることもあるじゃないですか。
でもこれはそういう感じでもなかったですね。
♥M
ない。
アルマがかなり変わっている人という設定で、それに周りが振り回されている感があるのかな…。
唯一、このシーンは分かると思ったところは、アルマがナイフを渡された時に、トイレで自分以外の周りを傷つける、あのシーンは分かる。あそこは上手いと思った。
♣R
最後の方ですよね?
♥M
そう。ナイフで誰を傷つけるという訳ではないけれど、物に当たるかんじとか。
自分を傷つける勇気もなく、座り込んだ足の間しか刺せないところとか。
ああいうのは自分もやったことがあるから分かる。
空港でずっと待っていたとか、情熱的なことを言うこともあるけれど、みんな気持ちを持て余しているのかな。
依存なのかな…旦那さんやキャロルみたいに、執着する人がいることで生きている感覚を得る人っているから。
♣R
依存があったとしたら、旦那に対して「あなたは戻るのよ」とか言ったりします?
♥M
でも結局思い続けているわけでしょう?
誰ひとりとして、いわゆる一般的なハッピーな形では、満足を得られない人たちの物語ではあるね。平穏になってくると波乱を起こしたくなるみたいな。
♣R
でも観た人の感想は知りたいですね。
(ネットにて感想を調べてみたところ、評価は半々でした。かっこいい、ジェーンが魅力的、構図が美しい等の感想もあったが、ストーリーがわからないとの感想も多くありました。)

