☆49本目『3つの心 あのときもしも』
2026/03/03
【あらすじ】
出張でリヨンに来ていた税理士のマルク(ブノワ・ポールヴールド)は、終電に乗り遅れ、仕方なく立ち寄ったバーで、シルヴィ(シャルロット・ゲンズブール)と出会う。街を歩くうちに、ふたりは心を通わせ、「金曜19時パリのチュイルリー公園で待っているから」と口約束だけをして別れる。しかし、連絡先を交換していなかったため、わずかなすれ違いで約束の場所での再会は叶わなかった。マルクはシルヴィを探し求め、やがてシルヴィの妹ソフィー(キアラ・マストロヤンニ)と出逢い…。

♥M
ドヌーヴはシルヴィと、シルヴィの妹ソフィーのお母さん役で、主人公ではなかったね。
♣R
脇役でしたね。
♥M
実の娘であるキアラ・マストロヤンニが出演しているから、演技をしなくても真実味があるね。
♣R
シャルロット・ゲンズブールもキアラとは昔から交流があったみたいで、「とても仲がよくてやりやすかった」と、どこかで言っていました。
♥M
ドヌーヴとジェーン・バーキン(シャルロット・ゲンズブールの母)は仲がいいからね。
ジェーンが「カトリーヌ・ドヌーヴがうちの事務所によくタバコを吸いに寄るのよ」と、言っているくらいに交流があるから、娘たちもそれなりに交流があるのかもしれないね。
■姉妹の絆
♣R
ソフィーは、マルクに出会ったことで、どんどん性格が変わっていきますね。
最初は、姉がいないと不安だったり、「さあね」が口癖だったり、いつも最悪を想像してしまうようなネガティブな存在だったのに、マルクと結婚したことで、口癖もなくなり、マルクに「君は最高を求めすぎている」と言われるくらいに変化する。
子どもができたことで、さらに開かれた感じがしました。
逆に、シルヴィはずっと変わらず、自我を突き通しますよ私! みたいな感じでしたね。
嫌がる素振りを見せつつ…。
♥M
妹の夫になったマルクを誘惑しているものね。
♣R
坂道を転げ落ちたら止まらないぐらいの勢いで、マルクにのめり込んでいきますよね。
でも根の部分には、妹には絶対にバレたくないし、バレたら死ぬ、と言うぐらいのものを持っている。
♥M
お互いに必要としているよね。
異常なぐらい、ふたりの絆が強い。
♣R
ふたりとも指で口角を上げるポーズをしていましたけど、姉妹の習慣なんでしょうね。
♥M
笑うやつね。
♣R
シルヴィがやった時はそんなに気にならなかったのですが、レストランでの集まりでソフィーがやっているのを見た時は、何故かゾワっとしました。
印象的な動作でしたよね。
♥M
姉妹の共通点として示される重要なシーンで、私もすごくドキッとした。
どちらかといえば、ソフィーの方がお姉さんに見えたの。
♣R
自分もはじめはそう思っていました。
シャルロット・ゲンズブールという女優になにか危うさを感じるからですかね。
♥M
キアラも他の映画では脆い人物を演じたりはしているけど、基本的に存在自体に安定感があるから、危うくて脆い人物を演じていても、そんなに心配にならないのよ。
♣R
シャルロットは、何かをするとしたらこいつだと思ってしまうんですよね。
自分は、その部分に彼女の女優としての安心感や安定さを感じています。
■すべてを察する母
♣R
ふたりの娘の母親は、話を聞いたり、相談されたりしているわけではないのに、娘の恋愛事情を早い段階で全て察知しているんですよね。
そういう部分が、演じているドヌーヴのまなざしでよく分かりました。
♥M
うん。全然口を出さないのよね。
♣R
最後ぐらいでしたね。訪ねてきたマルクに対して一言物申す程度。
♥M
知っていても何も言わないような母親というのは、フランス的なものなのかな?
♣R
フランスとは関係なく、言う人は言いますよね。
♥M
もっと早めに釘をさすとかね。
♣R
マルクとの関係性について、娘ふたりを近づけるのは危険だというのを、親として育てているからどうなるか予測が付いていたのかもしれませんね。
ソフィーには姉と夫がそんな関係になっているなんて絶対に言えないし、だからといってシルヴィに言ったら、彼女は彼女で何かが爆発しそうですし…。
♥M
うん、たしかに。
■「死ぬわ」の解釈
♥M
さっき、りきちゃんちょっと言ってたけど、シルヴィが、マルクとの関係をソフィーに知られたら「死ぬわ」と言うじゃない?
あれって、どちらが死ぬという意味?
私はソフィーが死ぬと言っているのだと思っていたのだけれど…。
♣R
自分は、知られたら生きていけないという意味だと解釈したので、シルヴィが死ぬのかと思っていましたが、私たちのフランス語の理解力じゃ…(笑)。
あの時のシルヴィの泣き叫びは、尋常じゃないですよね。
自分の旦那に対しての謝罪というよりは、ソフィーに絶対にバレたくないという気持ちの方が大きいような気がします。
♥M
もちろん。シルヴィの夫は存在感がないもの。
そうか…自分が死ぬという意味なのか…。
■恋に落ちた理由

♥M
マルクとシルヴィは偶然街で出会って、タバコを吸いながら街を散歩するだけで恋に落ちたでしょう?
ふたりはお互いにどんなところに惹かれたのかな。そこの説明がいっさいないよね。でも、よくわからなくてもなぜか惹かれて、また逢いたいと思う…。じっさいはそうだものね。
♣R
どのタイミングで、何に引っかかって相手を好きになるのかなんてわからないですよね。
些細なことかもしれないし、突拍子のないことかもしれない。
♥M
それにしても、マルクと出会って、パリで逢いましょうと約束をして別れ、家に帰って、夫と一緒にアメリカには行かないと決断するまでの展開が早い。
♣R
即確信した感じでしたね。
♥M
元々夫とは上手くいっていなかったから、後押しをするような出会いだったということだと思うんだけど。
パリで結局逢えなくて、そこから再会するまでに空白の時間が多いでしょう?
気持ちが再燃したのかな。
♣R
そうですね…でもずっと…。
♥M
思い続けていたの? 諦めていたの?
マルクとシルヴィに肉体関係があったのなら、その気持ちも分かるけれど。
♣R
何もないですもんね。
♥M
そうなの。身体の関係のあるなしはすごく大きいと思うから、あったのなら気持ちが戻るのも分かる。でも関係がない状況で、そこまでになるのかな?
ふたりには恋に生きるクレイジーさがあるってこと?
♣R
ずっと好きだったというわけでもないですもんね。
♥M
絶対違うよ。忘れていた時の方が多かったと思う。
でも、再会後のふたりを見ると、純粋に相手を求めていたのかな、とも思うし。
♣R
たぶん本当に純粋に…。
♥M
この人でなくてはダメ! という感じ…。
♣R
「恋に落ちる」とはまさにこういうことを言うんだというくらい。
もちろん旦那と一緒にアメリカに行くか行かないかの迷いに、新しい刺激が欲しかったというのはあるかもしれないですが、好きになるきっかけは、本当にわからないですよね。
♥M
「人生のタイミング」というものはあるよね。



