ふたりの映画鑑賞記/よいこの映画時間

◎20本目 『ブエノスアイレス』

2026/03/02

【あらすじ】
激しく愛し合いながらも別れを繰り返してきたウィン(レスリー・チャン)とファイ(トニー・レオン)。
関係を修復するイグアスの滝へ向かうが、途中で道に迷って言い争い、そのままケンカ別れしてしまい…。




♥M
私のアルゼンチンタンゴのプレイリストを流しながら話します。

♣R
自分は観るのが2回目でした。

♥M
前はいつだったの?

♣R
路子さんと知り合った後だと思います。
で、最近、台湾人の友人と一緒に観ました。
台湾ではものすごく有名な作品らしく、だからこそ観てなかったと、友人は言っていました。
むこうでは芸術性が強いという認識があるみたいで、ちょっと難しいとされてるみたいです。

♥M
難しい映画とは思わないけど。

♣R
タンゴのシーンはありますが、先日観た「愛されるために、ここにいる」とは反対な感じ。
あちらはタンゴ=セックスには繋がらないけれど、『ブエノスアイレス』はタンゴ=セックスに繋がる感じがしました。

♥M
セックスの延長線上にあると言ってもいいくらいね。

♣R
そうですよね。
ファイが働いているのがタンゴバーだし、本人たちも踊っているけれど、タンゴ映画というより、タンゴはオマケ要素ですよね。

♥M
そうそう、オマケ。ちょっとした小道具。

■撮影上の理由で



♣R
フォーカスされているのは男3人。
自分は、3人の中だったら中華料理屋で知り合う3人目の男のチャンがいいです。

♥M
あの俳優さんは何ていう人?

♣R
チャン・チェンですって。
台湾では有名な俳優みたいですよ。

♥M
ちょっと金城武の雰囲気に似てる。
私はトニーかな。
でも金城武も同じくらい好きだから、雰囲気が似ていて、チャンもいいなって思った。

♣R
急にチャンとの話になるんですね。
だからレスリー・チャンが演じているウィンとの話が置いてけぼりになってしまっているような気がしました。

♥M
それには理由があるのよ。撮影上の理由。
メイキングも観たのだけれど、この作品はウォン・カーウァイがノープランのもと、ブエノスアイレスでトニー・レオンとレスリー・チャンの映画を撮るというだけで行っているみたいなの。だから全然撮影が進まなくて、ああでもないこうでもないとやっているうちに撮影期間が延びて、レスリー・チャンが他の仕事の関係で帰っちゃったんですって。
レスリー・チャンがいない状態での中、考えて、それで第三者を出したの。

♣R
そんな理由があったとは。

♥M
私も最初観た時に、ウィンはどこに行っちゃったんだ―? って思った。
まあ、レスリー・チャンとトニー・レオンの映画なのに、これじゃダメだという焦りの雰囲気はあったよね。だけど発想の転換で違う人を出してくることによって、トニー・レオンを中心とした人間関係の物語に持って行ったんじゃないかな。

♣R
チャンとのシーンで、ファイが泣きながらカセットに録音するシーンがすごく好きでした。

■ファム・ファタールのようなファイ


♥M
作家にしても監督にしても、同じようなエピソードが出てくるんだなと思った。
金城武が出演している『天使の涙』か『恋する惑星』だと思うけれど、買ったばかりのホームビデオで息子が父親を映しているシーンがあって、それとカセットが重なった。
あとは世界の果ての灯台に行って自分の苦しみをそこで吐き出すシーンと『花様年華』で木に穴を開けてそこに秘密を話すシーンが重なった。
「花様年華」については最近ブログ(「花様年華」)でも書いた。

男同士の愛情世界という部分から見て、描き方はどうだった?

♣R
性欲が…というのも、他の男にいくというのも、よくある話かもしれません。

♥M
違和感はなかった?
監督自身もたしかゲイなの。
男同士だけど、レスリー・チャンが悪女というか…。

♣R
私が観たのがたまたまそういう役柄ばっかりだったからかもしれませんが、レスリー・チャンはそういう役が多いですよね?
ちょっと短気でわあっていって、相手の男を困らせるみたいな役。

♥M
男を翻弄する女。

♣R
ファム・ファタールですね。

♥M
そう。それを男と女の恋愛におけるファム・ファタール的な女以上に、レスリー・チャン演じるウィンが小悪魔ちゃんというか悪魔ちゃんに見える。いるよねーこういうのっていう感じで、ジェラシーなほどに魅力的だった。
だってファイが翻弄されているもの。パスポートを隠しちゃったりして。他の男と会ってるんじゃないかって疑って、煙草を買いに行かせないようにどっさり買ってきたり。恋愛の悦びと苦しみがぎっちり詰まってると思った。
ゲイの人たちの中では浮気は公認みたいに聞くけど…

♣R
人によりますよ(笑)。

♥M
やっぱりそれは人それぞれなのね。

♣R
でも、そういう話はよく聞きますね。

♥M
でも、男女の恋愛よりは公認率、多いのね。

♣R
多いような気はします。

♥M
ファイは許さない感じ。やきもち焼いたり。

♣R
そうやって、わあって離れても、結局「やり直そう」のひとことで許してしまうんですよね。

♥M
惚れた弱みってやつね。

♣R
やだー。本当に。負けた感じがするってやつですよね。

♥M
あっはは!(笑)。
まあねぇ…。

♣R
相手が優位に感じてしまうというか…結局逆らえなくなってしまう。
負けた感じがしてしまう。恋愛は勝ち負けではないですが。

♥M
そう。そんなことを言っているうちは愛を語ってはいけないとか言うけれど、でもやっぱり優位に立ちたいとかあるよね。

私が大好きな中山可穂が映画のエッセイを2本書いていて、それが『ブエノスアイレス』と『花様年華』だったの。
『ブエノスアイレス』は何度も観る映画のひとつみたいで、その当時の恋人と初めて一緒に観に行った映画でもあるんだって。そのエッセイのタイトルが「もう一度だけやり直そう」。
さっきりきちゃんが言っていた部分ね。
一緒に観た恋人との会話があって、おもしろかった。ざっくりだけどこんなかんじ。

恋人「あのふたりはまた巡り合ってやり直すと思う?」
中山可穂「やり直すわけがない」
恋人「やり直してほしい、あのままだとレスリー・チャンがかわいそう過ぎる」
中山可穂「そうはいかないよ。恋はいつか必ず終わる。終わるから美しいんだ。美しいから映画になるんだ」

■ダメな自分が許されるから


♣R
路子さんはどうです?
3人目に気持ちが向いている状態で、恋人と再会してやり直そうと言われたらやり直しますか?

♥M
恋人としての関係が復活するとは思わないけれど、時間をおいて3回くらい寝るかもしれない。その後、時間を空けて、その後は会わないと思う。

♣R
宙ぶらりんな感じですか?

♥M
その時の状況や体調にもよるけれど…あのウィンが心を入れ替えた風に戻ってきて、やり直そうと言ってきたら、ふらっと行ってしまうんじゃない? 人間はそんなに強くないもの。
ウィンが怪我をして戻ってきた時も絶対拒否して一緒に寝なかったのも、自分の中で誘惑されたらアウトだと思っているから。いいや、1回くらい寝たって大したことない、という相手ではないから。だから頑なに防備している。そこがまだ全然終わっていない感満載!

♣R
その後にふたりはタンゴを踊るんですよね。
あんなに拒否していたのに、タンゴを踊ったことでコロッとまたウィンとやり直してしまってる。ウィンが真面目な感じでまた言ってきてやり直したとしても、同じことを繰り返すような気がします。

♥M
そうそう繰り返す。繰り返すのが分かっているから拒否するのだけれど、気持ちがあれば人間だから何らかのタイミングで拒否出来ない瞬間もあるはず。だから3回くらい寝るかもしれないというのはそういうことなの。

♣R
この間職場の人がこんな言葉を教えてくれたんです。
「ダメな人にひっかかるのは、ダメな自分が許されるから」って。

♥M
それ何? 映画の台詞? 自分の言葉?

♣R
前に読んだBL漫画に書いてあったんですって。

♥M
名言ね。次の私の名言集に入れよう。
でもそうなのよ。

♣R
このふたりもそういう感じがあるのかなって思いました。
ファイはお父さんの友達の会社で働いていたけれど、金を盗んだりとかしているし、自分がちゃんとしているとは思ってない。後悔があってか、お父さんに電話をするけど、あまりいい反応ではなかったから切ってしまったり。
だから自分のダメなところを分かっている感じがするんですよね。

♥M
そうね。ダメな自分が許されるからかあ。
ダメな人というのは、恋愛が終わった頃に気付くでしょう?

♣R
その時は見えないですからね。
要素はあったとしても、それすらフィルターがかかってしまうぐらい盲目になってしまう。

♥M
うん、確かに言えてる。
私は自分のある恋愛を今思い出して、正にそれだったと思った。

■未練


♥M
中山可穂は、映画に出てきたタンゴバーにも行ってるんだって。

♣R
観光でみんなが立ち寄るところですよね?

♥M
そうそう。映画の撮影場所だから行ってみたかったって。よっぽど好きな映画なのね。
イグアスの滝にも行ってるみたい。

♣R
あそこって、あんなにびっしょびしょになるんですか?

♥M
なるんじゃない?
ナイアガラもそうだし。

♣R
あそこで死んだらあっという間でしょうね。
滝のシーンでそんなことばっかり考えちゃいました。

♥M
そのことも中山可穂が書いていた。
実際にいるみたいよ。そうとう激しいみたい。

♣R
あんなに勢いがすごいと、地の果てに繋がってるのではないかと思ってしまいますよね。

♥M
ファイがイグアスの滝にひとりで行くというあたりが、「未練」なのよね。

♣R
完全に断ち切っていたら行かないですよね。
一緒には行ってないけれど、思い出の地みたいな場所だから行った感じ。

♥M
別の人と観光で行くというのも考えられるけれど、ひとりで行くというところにまだまだ…

♣R
彼の中に引っ掛かりが。

♥M
愛憎、諍い、好きだからこそ束縛したいとか、ああいうのは切ないね。

■欲望が見えるか見えないか


♥M
『ブエノスアイレス』が名作だと言われているのはどう思う?

♣R
うーん…音楽もすごく好きですし、いい映画だとは思うのですが、何かが引っ掛かってるんですよ。
もやもやと。
何回か同じ曲が使われていますけど、それも頭に残りますよね。

♥M
音楽とか映像はさすがウォン・カーウァイという感じだけど、やっぱりウィンが途中でいなくなったのが大きいんじゃない?

♣R
話が突然飛んでしまったから?

♥M
監督が撮影期間内でしっかりとしたシナリオで終えていればもっと違うストーリーになったと思うし、あのふたりの関係も違ったものになっていたかも。

♣R
3人になるというのは全然いいのですが、急にすっぽり話が抜けて、間の説明もなく中華料理屋のチャンをいいなと思ったり、写真を盗んだりしているから、多分しっくりきてない部分はあるのかもしれないです。

(と言いつつよく考えてみると、自分はゲイ関連の作品に触れるとなんだかモヤモヤとした気持ちになるらしい。よしながふみの『きのう何食べた?』を読んだ後、姉に「それ読んだ後いつももやっとした顔をしている」と言われたことがある。それに近い感覚なのだろうか。近いからこそしっくりこないというか。しっくりき過ぎているというか。)

♥M
最初からいきなりラブシーンで始まるけれど、あれをよーく観ていると、レスリー・チャンは登場人物になりきっているけど、トニー・レオンはいまいち乗ってないように見える。
『ラストコーション』とかは…。

♣R
色っぽかったですよね。

♥M
うん。欲望が見える。
でもこちらは、男好きじゃないし…みたいなのを感じた。

■男によって付けれらた傷は、男でしか癒せない


♣R
別れた後に、ゲイの人が集まる映画館でファイがそこで出会った人に口でされるシーンは、ちょっと気持ちが分かりました。

♥M
それは私も何となくわかる。

♣R
何て言えばいいんだろう…違うことで解消したいみたいな

♥M
失恋の傷…男によって付けれらた傷は、男でしか癒せないというものの自虐版。
新しく愛する人ではなくて、愛がない性を処理するということだから、そこには自虐とか自傷行為的な意味合いが入っているということじゃないかな。その感覚は分かる。
好きでもない男に抱かれることによって忘れたいとか、自分の身体や心までをも塗り替えたいみたいな。

♣R
結局、思い出しちゃうんですけどね。

♥M
そうそう、逆効果なの。
だってそれをすることによって…。

♣R
走馬燈のように…。

♥M
そうそうそう、思い出しちゃうの。(笑)。
だったらよっぽどフィットネスクラブに行っていた方が健康的よ。

♣R
でもやっちゃうんですよね。

♥M
同じことでしか解消出来ない気がするけれど、やってみると逆効果。
仮にそうだったとしても、自分を痛めつけることによって少しでも相手を失った苦しみから逃れてる。だから本当にそれを表すようなシーンだった。

■恋愛の醍醐味


♥M
やっぱりウィンがかわいそうだと思う?

♣R
ウィンがかわいそうだというのも分かります。
異国の地でパスポートも取り上げられ、男にも見放され、連絡も取れなくなって…。

♥M
かわいそうだけれど、でもああいう人ってなんだかんだ…。

♣R
順応する?

♥M
そう。魅力があるから、誰かがいつも面倒を見てくれて何とかなっちゃうタイプ。
でもいつも徹底的に誰かに愛されたいという孤独は分かる。

♣R
また他の人を捕まえたりして。

♥M
そうそう。最後、ファイはひとつの恋愛を清算したようにスッキリした感じにはなっている。
本当の愛は自由にすることだとか、思いやりを持てだとか言うけれど、あれが現実なんだという感じがする。あれがあってこその恋愛の醍醐味でしょう。
ああいうのがないと実感が湧かない…やっぱり勝ったの負けたのがないとね(笑)。
メールをどっちが送っただの、返ってこないと悶々とするのも含めてね。
仏様やお釈迦様みたいに超然としていたところで何が面白いの? って感じがする。
『ブエノスアイレス』を観直して、自分が最近、きれいごとを一生懸命やろうとしているのではないかという気がしたな。

♣R
そう思うと、今の自分にはとても合っている作品だったかもしれません。

映画の話から脱線。このまま話題は恋愛の話へ。
テーマは「わたしたちの重さ」について。

■わたしたちの重さ


♥M
どんなにセーブしたってしなくたって、なるようにしかならない。
別れるものは別れるし、くっつくものはくっつく。
自分が優位に立つために少し冷めたフリをしていても、それは演技であって、実際の自分ではない。だから本当にその相手と向き合いたいのなら、それをやっている意味はないの。

♣R
結局、作った自分を見せていることになりますからね。

♥M
そう。いつまでそれやるの? いつバラすの? ってなるでしょう?

♣R
それをやると、自分が苦しくなってしまうんですよね。

♥M
自分を出せないままでいて、いざ出し始めたら、「違うじゃないか!」 と、相手に言われてしまう。「じゃあ、本当の私を好きになってくれないの?」となった時、「そういう風に最初見せなかったでしょ?」、と言われてしまう。
だから、このところは最初に自分を見せて、それでもいいという人としか付き合わないようにしてるつもり。

♣R
恋愛ではないところでは、割とそんな感じなんですけどね。
交友関係とかでは、わあーっと出して、こういう人なんですって。
ある意味そこで一回壁を作る感じ。

♥M
でも恋愛になると…。

♣R
なぜかそうはいかない。
ちょっと曲がってしまうし、変な心配をし始めてしまう。

♥M
前に私のことを好きと言ってくれた男性に「私は常に10人の男がいないとダメなんですけどいいですか?」と聞いたことがある。後から、あれは普通ドン引きするよねって言われた(笑)。
10人もいないけれど、誇大広告みたいな感じ。ひとりじゃ満足できない。
1対1で貞節を誓う恋愛は出来ませんよ、というのを実際以上に悪く言って、オッケーだったらいけるかな? という考えが自分の中にあったのだと思う。
割と順調だった恋愛とかが、色々なことで躓いて、痛い思いをしてきているし、つまり、今までのやり方で失敗した訳だから(笑)。

♣R
学びが出来てしまうからですかね?

♥M
学びだったらいいのだけれど、トラウマになってしまうかもしれないのが…。

♥M ♣R
怖い!

♥M
りきちゃんと私が合うのは、とにかく「重い」と思われるのが最大の怖さだということ!

♣R
たしかにそうです(笑)。

♥M
重い…と、思われるのがすごく嫌で、連絡をひかえてみたりするわけだけれど、結局それをひかえたところで、じゃあすごく愛されるのかと言ったら違うでしょう?
自分のやりたいようにやって、重いと思われたらその人とはダメなの。
これから関係性を築いていくのであれば、この程度で重い、ってひかれたらその関係は続かないじゃない? だったらさっさと重さを出しちゃって早めに判断した方がいい…って今喋りながら思った(笑)。

♣R
頭では理解できますが、10年以上引きずっている過去のトラウマがあまりにも引っ掛かり過ぎているんです。
自分がゲイの世界に踏み込んでから割と初期の段階でのことだったので、毎回自問してしまうんです。自分は重くなっていないかと。

♥M
(笑)。
でもね、ごめん、重いのよ!

♣R
(爆笑)。

♥M
悪いけど、私たちは重い。一般的な人たちに比べると、いるだけで重いの。
今ちょっと久しぶりに自分で納得する答えを自分で言っているような気がする…。
もう存在自体が重いの。もし私たちが恋愛関係になったとしたら、付き合い始めから同じ匂いを感じると思う。
それで「この人、重いんじゃない? 」って思って、どっちが重いか競争するぐらいに重いと思う。
私たちは恋愛において、勝手に先走ったり、勝手に妄想したり、毎日逢いたいあいたいと思ってしまうけど、そうじゃない人たちも世の中にはいる。
相対評価で見たなら、私たちは確実にトップレベルにいると思う。元々そこにいるのだから、それをいくら隠したって、いつか出るわよ。

♣R
あっははは(笑)。

♥M
だから相手を見つけたいのであれば、そこを隠さずに出して、重いと思われる判断は早い方がいいかな、ってやっぱり思う。

♣R
それで相手が、それでもオッケーってきたらいいんですもんね?

♥M
そう、そういう人としか上手くいかない。
表面上の付き合いとか、軽い相手じゃなくて、がっぷりと付き合いたい相手を探しているのであれば、隠していても意味はない。
いいこと言ったな、自分に対して。
あなたは誰を探して、何を求めてるの? ということ。

♣R
逆のパターンは大丈夫ですか?

♥M
好きな人ならね。だからそれよ!
アナイス・ニンと一緒で、好きな人だったら私はいくら想われてもいい。
とにかく「温度計が破裂するほどのセックスとか、郵便箱から溢れるくらいの手紙」が欲しい訳であって、それをされて心地がいいと思う相手とは本当に上手くいく。
物足りないのがダメな訳だから、それなら過剰な方がいい。過剰で、一度でいいから「あなたからの愛がいっぱい過ぎます」と言って吐いてみたいとずっと思っているから。
でも、私が求める愛情が余りにも多大なので、そこまで満たしてくれる人はなかなかいない。じーっと連絡を待つより、いやん、そんなにたくさんもらっても返事出来ない、と思ってみたいものだ(笑)。

♣R
一日に何度も携帯を見てしまうとか。

♥M
りきちゃんも重たいんだから諦めなさいな。
重たくてもいいと思ってくれる相手を探す。でも、そういう人はそんなにいないはずなの。そこら中に転がっていたら身が持たない。
でも結局「重い」って何なのかな。
りきちゃんは、トラウマの人からずばり重いと言われたの?

♣R
相手にいっぱい連絡をして、寂しいとか言っていました。
そうしたら、本人からではなく、違う人を通して「そんなこと言われると困る」みたいに言われて。

♥M
やだー本当に??
それは傷つく。かわいそう。

♣R
しかもその子は、その当時、彼を好きだった子。
女の子と取り合いまではいかないけれど、同じ人を好きだったんです。

♥M
もしかしたらそれはフィルターがかかっていたのかもよ。
例えば、「寂しいっていうメールが結構来るんだよねー。たまに何て返せばいいか困っちゃうんだよね」って私が言ったのを、違う人が「路子さんちょっと困ってましたよ?」と、言うのはちょっと違う感じでしょう?

♣R
たしかにそうですね。
でも、そこで自分は重いんだと気付きました。初めての自覚。

♥M
私はそういう自覚がすごくあるし、何でもっと冷静になれないんだろうと思う時もある。
それで、相手が同じテンションで来ないとそれだけで落ち込んじゃう。

♣R
温度差があるんですよね。

♥M
私たちは、愛されたいとか愛したいとかの欲望をたくさん持っていると思うの。
だからそれを重いと表現されて逃げられたら、それはそれまで。
だってそこでりきちゃんが寂しいというメールを5回から1回に減らしたところで、いつかはバレる。

♣R
使わないようにしている単語リストのひとつ「寂しい」。あとは「頑張って」。
でも結局似たようなこと言っちゃうんですよね。

 
  ~今回の映画~
『ブエノスアイレス』
1997年 香港/日本
監督:ウォン・カーウァイ
出演:レスリー・チャン/トニー・レオン/チャン・チェン

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