ふたりの映画鑑賞記/よいこの映画時間

☆41本目『逢いたくて』

2026/03/02

【あらすじ】
美術書の編集を仕事にしているファネット(カトリーヌ・ドヌーヴ)。
時間のある時は映画館へ足を運び、大好きな映画『めぐり逢い』を観て、昔好きだったフィリップを想い続ける日々を送っている。そんなある日「エンパイアステート・ビルの上で会おう」というフィリップからの手紙を見つける。
偶然仕事でアメリカへ行くことになっていたファネットは、フィリップとの約束を胸に、ニューヨークへ旅立つが…。




(ラストに関する重要なネタバレがあります。お気を付けください。)

♥M
監督は、ドヌーヴが出演をOKしなかったら、この映画を撮らなかったと言っていたみたい。

♣R
特典のドキュメンタリーでも、ドヌーヴありきの映画だと言ってましたね。

♥M
ほとんどのシーンにドヌーヴが出演していたもの。
彼女のプロモーションビデオみたいだった。

♣R
監督もそのあたりを意識していたみたいですね。

♥M
ドヌーヴの見どころは59歳の現役っぷり? ツッパリっぷり?

♣R
ほかの映画で描かれているような、男から言い寄られた時にするドヌーヴの冷たい素振りというのを、この監督は昔からたくさん見ていると思います。
だから、そういう部分も影響して、こういう人物像になったのかもしれないですね。

♥M
きっとそう。監督はドヌーヴ・ラブだもの。

■“R”で終わる月しかキスしない


♣R
アメリカで出会う写真家のマット(ウィリアム・ハート)はふつうに言い寄ってくる男とは少し違うタイプでしたね。
ファネットに対して嫌なこともズケズケ言うし、たまに優しいことも言う。飴と鞭状態。

♥M
かなりきついことも言ってたし、「髪が多くてヘルメットみたいだ」とも言ってた。
ドヌーヴは、あのボリュームのある髪を売りにしているし、豊かな髪というのを美しさの象徴と自慢にしているのに…。
アメリカとフランスでは考え方が違うのかな。

♣R
マットがカフェで、ファネットのミネットに触れるシーンはすごかったですね。
息も荒くなって、顔も本当に紅潮していて、目もトロンとなって。

♥M
かわいかったね。

♣R
そのカフェでの出来事があってから、マットへの態度が一気に変わりますよね。
それ以前は「“R”で終わる月しかキスしないの」なんて言ってキスされるのを嫌がっていたのに、頬へのキスも受け入れるようになったりして。

♥M
娘が母親であるファネットにするキスのことをどう思った?
驚いているファネットに対して、娘が「前はしてくれたでしょ?」と、言っていたけれど…。

♣R
ラ・ロシュフーコーの「キスを安売りすれば 唇の味わいが消えるわ」という言葉を返してましたね。

♥M
「唇は恋人のものだわ」とも言っていた。
単純に子供から母親へのキスという感じだったのかな。

♣R
後半に、レズビアンっぽい娘の同居人が出てきますよね。
「母親」への懐かしみや甘えも含んだような気持ちの他にも、「女」に対する性的な意味合いも多少はあったような気がします。

♥M
そうね。私もそう思った。

■ラストシーンの真実


♣R
ラスト、どういう意味か分かりました?
2回観たのですが、最初に観た時は気付かなかったことがありました。

♥M
えっ? なになに?

♣R
エンパイアステート・ビルでファネットがエレベータを待つシーン、一瞬だけ男の人が映るのを覚えていますか?
あれ、ベルナールだったんです。

♥M
ベルナール…最初のシーンでファネットを叩いた男でしょう?
いつもつきまとってくる嫌な奴だとりきちゃんが怒ってた人。

♣R
そうです。本当に一瞬だったので、写真を撮って比較をしてみました。
そうしたら服も顔立ちも同じでした。
そうすると、ベルナールがフィリップと偽ってファネット宛に手紙を書いて呼び寄せた、という話なのかなって思ってしまって…。

♥M
全然気付かなかった…。

♣R
(写真を確認しながら)同じ夜の時の写真なんですけど、バーで会った時のベルナールと、エレベーターの男の服は、同じ青シャツとグレーのスーツ。
その後にファネットが外に出た時に、フィリップの後ろ姿みたいなものを見送るシーンがありますが、その時の服とは違うんですよね。

♥M
じゃあフィリップのことをずっと想っているというのを知っているベルナールが、一芝居を打ったということ?

♣R
その可能性が高いような気がします。

♥M
真実はそっちじゃない!
すごい発見よ、りきちゃん!

♣R
気付かなければ、フィリップを断ち切って、マットを選んだという話ですよね。

♥M
私は今の今までそう思っていた。

♣R
そっちの方がきれいな終わり方でしたが、気付いてしまって…。

♥M
素晴らしい…ということは、ベルナールは本当に嫌な奴だったということじゃない!

♣R
そうなんですよ!
もしエレベーターの男がベルナールだとしたら、フランスにいた人と、ニューヨークのバーでばったり会うのはおかしくないか、という疑問も解決しますよね。

♥M
たしかにね!
ファネットがベルナールの姿をエレベーターで見ずに上にあがっていたら、フィリップではなくベルナールがいるということでしょう?
翻弄したくてベルナールはそんなことをしたのかな。

♣R
ベルナールの執着は相当なものですよね。

♥M
ほとんど趣味みたいなものになってしまってるね。

♣R
映画館にもいるし、同窓会での再会云々の前から執着していたような気がします。
きっとファネットが『めぐり逢い』の映画が大好きで、よく観ているのも知っているんですよね。だから、『めぐり逢い』のシーンを絡ませて、待ち合わせ場所をエンパイアステートビルのてっぺんにしたのかもしれないですね。

♥M
それに同窓生だから、ファネットがフィリップを想っているのも知っている訳ね。
でもそうすると、単純な恋愛話とは違う結末で面白いかも。
この映画の裏テーマは「ねちっこい男の執着」だったのね!
分かる人にしか分からないシーンに気付けなかったなんて、くやしー!

♣R
でも全然違うかもしれないから、違ったら恥ずかしいー(笑)。

♥M
ファネットは純粋にマットに対する恋を選んだ訳ではなく、騙されていたと気付き、上に行くのを止めたということね。

♣R
自分はそうだと思っています。
今まで幻想のような存在を追っかけていましたが、これがきっかけで、彼女はひとつ区切りをつけた気もします。
上に行かずに外に出た時、フィリップの幻想を見送るようなシーンもありましたし。
もう少し現実を見ようと心に決めた瞬間だったのかもしれませんね。



~今回の映画~
『逢いたくて』
2002年11月 フランス
監督:トニー・マーシャル
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/ウィリアム・ハート/ベルナール・ル・コク/
パトリス・シェロー

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