◎6本目 『アメリ』
2025/11/09
【あらすじ】
パリ、モンマルトルのカフェで働くアメリ(オドレイ・トトゥ)。
他人とのコミュニケーションは苦手だが、人々をこっそり喜ばせたり、妄想したり、ちょっとイタズラすることは好き。
そんな日々を送っていたが、ある日、他人の証明写真の蒐集家であるふしぎな青年ニノ(マチュー・カソヴィッツ)に出会い、恋心をいだいたことで、すこしずつ変化が始まる。
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[word_balloon id="1" position="L" size="S" balloon="bump" name_position="hide" radius="true" avatar_border="false" avatar_shadow="false" balloon_shadow="true" font_color="#ffffff" bg_color="#000000" border_color="#000000"]りきマルソー:♣R[/word_balloon]
♣R
初めて映画館で観たフランス映画は、母とふたりで観に行った『アメリ』でした。
♥M
お母さんと行ったの?
♣R
そうなんです。
母とよくふたりで映画を観に行ったりしていたので。
♥M
りきちゃんは色々とアメリのグッズを持っているけれど、写真集、ボロボロになってるね(公開当時に出版されたソニーマガジンズ出版『アメリのしあわせアルバム』)。
♣R
年季が入ってますよね(笑)。
私が中学、高校生くらいの時なので、17、18歳くらい…10年ちょっと前くらいのものです。
(実際は日本公開が2001年なので、私が中学生で14歳の時でした。記憶のあやふやさが恐ろしい。)
前から『サウンド・オブ・ミュージック』などのミュージカル作品を観て、映画が好きだな、とは思っていましたが、ちゃんといろんな映画を観るようになったのは『アメリ』がきっかけかもしれません。
『アメリ』を観に行ったことと、その後に観に行ったフランソワ・オゾン監督の『8人の女たち』でフランス映画が好きになり、よく観るようになりました。
フランス映画を観るようになってからは、フランス映画以外のミニシアター系映画も観るようになりました。
そのすぐ後に、『8人の女たち』で好きになったイザベル・ユペール出演の『ピアニスト』を観ました。
『ピアニスト』なんて観ちゃったから、観る映画が偏っているのかも…。
♥M
お母さんがフランス映画好きで一緒に行ったの?
監督が好きだったの?
♣R
フランス映画も含め、映画が好きなんだと思います。
若い頃はよく観に行っていたと聞いていました。
公開当時は話題作品でしたが、落ち着いた頃に観に行きました。
だから映画館もそんなに人がいなかったと思います。
♥M
どこの映画館?
♣R
川崎に昔からあるチネチッタというシネコンです。
駅ビルにチネチッタの別館があって、ミニシアター系を多く上映していたような気がします。
♥M
面白そうな作品があるから一緒に行こう、という感じ?
♣R
そうですね。母とは美術や映画の趣味が合っていたので、たまに一緒に出掛けることがあって、そのひとつです。
♥M
でも『アメリ』と『8人の女たち』がスタートなんて、感動的。
♣R
そのふたつの映画には「皮肉っぽさ」が共通点としてあるような気がします。
♥M
『アメリ』は本当にそういう感じ。
今回観たのは4回目くらいなのだけれど、何度目かのとき、軽井沢にいたときひとりでDVDで観て、すごく刺さって、『アメリ』ってこんな映画だったっけ? って泣いたことをよく覚えてる。
何にそんなに反応したかというと、それこそ「ミスフィッツ(はみ出し者・不適応者の意味)」。
マリリン・モンローと一緒で「ミスフィッツ」な部分にとても共鳴して、『アメリ』はこんなに哀しい映画なんだと。泣けてね。
■オドレイ・トトゥの活躍

♣R
アメリのベッド上にある絵や、ベッドサイドにある豚の人形付きランプを作ったミヒャエル・ゾーヴァの展覧会も観に行ったことがあります。
♥M
アメリオタクね(笑)。
♣R
そうですね、大好きでした。
♥M
アメリの部屋も可愛いよね。
いわゆるパリジェンヌのアパルトマン、という感じ。
♣R
今度、ブロードウェイでミュージカル化するんですって。
ジャンピエール・ジュネ監督はミュージカル化に嫌悪感を抱いてるけど、子どもの医療を支援する慈善事業に携わっている関係で権利を売った、という記事をこの間読みました。
ミュージカルはちょっと違いますよね。
音楽もヤン・ティルセンではないらしいです。
♥M
ヤン・ティルセンの音楽がいいのにね。音楽だけで泣けてきちゃうくらいに。
♣R
『アメリ』で流れる音楽は、私も大好きです。
初めて買ったDVDも、初めて買った映画のサントラも『アメリ』でしたよ。
♥M
サントラに収録されている曲は、私が持っているヤン・ティルセンのCDと結構かぶってた。
あの音楽が映像と一緒に流れるだけでも、せつなくなっちゃう。
監督は『アメリ』の後に何を撮ってるの?
♣R
第一次世界大戦を題材として描かれた『ロング・エンゲージメント』という作品です。
オドレイ・トトゥと私の好きなギャスパー・ウリエルが出演しています。
オドレイ・トトゥ演じる主人公もちょっと変わった子でした。
その後は『ミックマック』ですかね。
ブラックユーモアな話。
♥M
ジャン=ピエール・ジュネ監督の作品は、あまり観てないかもしれない。
その中でも『アメリ』はすごく評判になったのよね?
♣R
フランス映画というと、みんな『アメリ』と答えるくらい有名ですね。
♥M
うん。フランス映画を知らない人でもね。
終わり方がハッピーエンド過ぎたかな、という感じはするけれど。
オドレイ・トトゥはこれで人気が出たのよね?
♣R
そうですね。それまではフランスではセクシー女優みたいな扱いだったらしいです。
♥M
え!
♣R
だから過去の作品を観ると、脱いでいたりします。
それが、『アメリ』に出演したことで『アメリ』のイメージがついてしまったから、そういう風にしか見られなくなってしまい悩んだ、みたいなインタビューを以前見たような気がします。
日頃から言っていますが…最近の活躍を見ていると、良い干からび方をしてきたなって思います(笑)。
♥M
最近は何に出演しているの?
♣R
最近は『スパニッシュ・アパートメント』シリーズ3部作目の『ニューヨークの巴里夫(パリジャン)』ですかね。あれは割と最近だと思います。
フランスでは『青いパパイヤの香り』のトラン・アン・ユン監督が撮った『エテルニテ』にオドレイ・トトゥが出演しているみたいですが、まだ日本では公開が決まっていないです(後に『エタニティ 永遠の花たちへ』という邦題で公開)。
『ナタリー』も最近の作品ですかね(2011年公開作品でした)。
♥M
『ナタリー』はすごくいい映画よね。
♣R
あまり評判にはならなかったけれど、よかったです。
♥M
『ナタリー』は『アメリ』と並んで、おしゃれでポップ、テイスト的には似てるわね。大好き。
あの主人公の俳優(フランソワ・ダミアン)はマヌケな顔で、苦手だけれど、いろんな作品で見かけるの。この間もあー出てきた!! お前かー!!みたいな感じで(笑)。
♣R
本当ですか?
たしかコメディアンなんですよね。
私も最近観たような気がする…『神様メール』だ!
『エール』にも出ていますね。
♥M
きっと人気があるのよね。
あとは何に出演している?
♣R
『タンゴ・リブレ』という作品。
♥M
そうだ、『タンゴ・リブレ』で観たんだ!
私、タンゴの映画全部観なおしてるから。
今、タンゴをやっているからそう思うのかもしれないけれど、『タンゴ・リブレ』もいい映画よ。
♣R
主人公がフランソワ・ダミアンなんですか?
♥M
そうなの。タンゴ踊るの。全然感じない(笑)。
■強烈なマイノリティへの共感

♥M
家族でフランスに行く予定だということもあって『アメリ』を改めて観たのだけれど、割とハードなシーンがいくつかある。
そういう目で普段観ないけれど、家族で楽しめるような映画ではないね。
♣R
たしかに…世間では、可愛く、ポップで、おしゃれな映画と思われているけれど、結構きわどいシーンもあるし、暗いというか、ダークな部分を持つ女性の話ですよね。
♥M
そうそう。
描き方でそうではないように見えたりしてるけど、世間とコンタクトの取れない、とても暗い女性の話。
そして、きわどいシーンも。
♣R
ポルノショップのシーンもありますね(笑)。
♥M
ポルノショップで「いろんな形」の小物がピュンって飾ってあったり、すごいのよね。
アメリも、今この瞬間、何人が絶頂に達した、なんて考えていたり…でも、私もまるっきり同じことを考えてたことがあるの。
大学生の頃、ロマンティック系な女の子みたいに、夜景フェチで夜景が大好きだったの。
何処にドライブへ行っても、とにかく夜景を見るというのが自分の中にあった。
誰もいない暗いところで、夜景が広がっているのを見るのがとても好きだった。
でもその時に、今、あの明かりのなかで、どれくらいの人たちがセックスしてるんだろうって考えたの。
その中で、すごくいい感じでしてる人はどのくらいだろう、嫌だなと思いながらしてる人はどれくらいだろう…と、いうのを自殺したいと思ってる人は今どれくらいだろうと、同じ並列でいつも考えてた。
だから『アメリ』を観た時、「あっ、私と同じ風に思ってる人がいる!」と、思った。
♣R
そう考えるようになったきっかけがあるんですか?
♥M
ううん、ないと思う。
でも、昔からそういうことを思ってた…思考がそういう感じ。
だから、ホテルの窓を見てても、何組の人がしてるんだろうとか。
♣R
ホテルの窓は、私もあります(笑)。
♥M
あるよね!
それの延長線上だと思う。
♣R
アメリは、両親の影響と、お父さんが決めつけた心臓病という理由で、学校に行かずお母さんから勉強を教えてもらっていた。
だから外の世界との繋がりがなく、自分の殻に閉じこもったり、空想の世界に入り込んだりして、自分なりに楽しんでいた。
でも、外に出なかったから友達もいない。
だから、自分自身が友達みたいな生活を小さい頃からしてたんですかね。
♥M
環境はあるけれど、学校に行っていたとしても、アメリの変なところはあったと思う。
「あの子ちょっと変わってるよね」、というものは持っていたはず。
多くの人があまり反応しないところに反応したり、気付いたりする。一方で普通の人が普通にしていることが出来ない。
アメリの嫌いなものの中に「アメリカ映画のわき見運転」があったけれど、あれも私と一緒!
特に古いアメリカ映画は、ずーっと横を見て話しているから、ぶつかるよっていつも思う。
私、あれが本当に嫌で、それが一緒だったから、そう思っているのは私だけじゃなかったんだ! って笑った。
♣R
自分は、他の映画で「アメリカ映画のわき見運転」を観る度に、アメリのことを思い出してます。
アメリの好きなことは、注目されていましたね。
クレームブリュレのカラメルをスプーンで割るとか、そういう部分はすごく…。
♥M
フォーカスされてるね。
♣R
裏の部分というか、ダークな部分こそ面白いのに、そこはあまりフォーカスされないですね。
♥M
自分が選ばれた人間みたいな言い方をしてしまうといけないけれど、この作品に含まれている強烈なマイノリティへの共感や、そういう物に気付いてる人はどれくらいいるのかな。
誰にも分かってもらえないから自分の中で昇華して、自分の中で物語を作ったりする感じ。
♣R
きっと、そこに気付く人が少ないから、キラキラ映画みたいに言われているんですよね。
♥M
そこに気付かなくても楽しめる作品だからね。
りきちゃんは、初めて観た時にどう思った?
♣R
私も、当時はおしゃれでカワイイ映画だと思っていました。
アメリのやることがいちいち面白いし、かわいいなと。
♥M
何回くらい観てるの?
♣R
一時期、DVD付きのブックレットが発売されていたのですが、誰かの誕生日だったり、プレゼントとしてそれをあげていたんです。
あげる度に観なおしていたので、結構な回数を観ていると思います。
■自分が出来る範囲で行動する

♥M
アメリが関わる人…例えばルノワールを模写しているおじいちゃんや、八百屋のちょっとぬけている男の子、旦那さんが亡くなった管理人のマダムとか、同じ悲劇や、たっぷりの哀しみを持った人物というのでも、描き方によっては全然違う。
おじいちゃんも、管理人のマダムも、違う描き方をされていたら、すごく悲惨な人生だったし、救いがなかったと思うの。だけど、それが一切省かれた感じで、どれだけ寂しい日常なのか、というのを全部観る者の想像力に委ねている。そういう描き方が好き。
その人たちに対する光の当て方が、あの映画を一見ポップな感じにしているのだと思う。
♣R
寂しい中にも、一筋の光のようなものを持って生きていますよね。
♥M
そうそう、完全に絶望している訳ではないの。
相当寂しいとは思うけれど、それでも生きていけるんだ、という励ましみたいな感じ。
アメリからビデオが送られてくるみたいに、日々少しずつの楽しみや、ちょっとの喜びで人は生きていけるのね。
あとは自分の忙しさや、アメリほど旺盛でない好奇心のせいで、どれだけのものを見落としているんだろうって思う。
例えば、ダイアナ妃が亡くなったニュースをアメリが観ている時、缶の入れ物を見つけて持ち主を探そうと思いつく場面。
そこまでにはアメリがずっと人との関係を遮断している、というのが前提にあるけれど、その缶の持ち主を見つけられたら自分の世界から飛び出そうと思っているのよね。
私は、たぶん、自分が缶の入れ物を見つけても、そうは思わないよな…と、まず思ってしまったの。
♣R
うわぁーなんだろう! わあーすごい! とは思いますが…。
♥M
どうしたら誰かに届けられるのかなー? と、置いておいておしまいかな。
届けてあげたら喜ぶだろうなとか、そこまでは思うかな…。
例えば、りきちゃんに会った時に、こういうのが見つかったのだけれど、どうしたらいいと思う? どうしたらいいんでしょうねー? と、いうやりとりはするかもしれないけれど(笑)。
もうひとつは周りの人との関わり方。
ずっと閉ざしていたからこそなのだけれど、みんなを少しでもハッピーにするために動くというところね。
そんなアメリを見ていると、私には見落としてるもの、見えないものがあるんだろうって思う。
♣R
見落とさず、行動までしている。
行動に移すのって難しいですよね。
♥M
難しい…海外ドラマを観る毎日を過ごしているうちは余計難しいし、余裕がない。(笑)
アメリは自分の中だけで完結しているようだけど、じつは視線は他人に向いている。
閉ざしながらも他者を見ていて、他者に対する好奇心を常に持っている。
それを行動に移して、他者と実際に関わりを持てるのか持てないの。これは映画の中盤ぐらいから変わってくるけれど、それまでの20年くらいは関わりを持ってこないできていた。
それが23歳でちょっと変わろうと思い、ようやくコンタクトを持ち始めるけれど、持ち始める前もすごく人を見てる。人に対してここまで好奇心を持つ、というのも私にはないなぁ…。
しかも、愛情ある好奇心というか、「面白いな、人間って」みたいな感じでしょ。
それがこの映画を面白くしているのだと思う。
♣R
他者との関わりがなかったからこそ、今そういう好奇心が出ているんですかね?
幼い頃を補うというか。
♥M
うん、それもあるかな。
♣R
子どもって「なんで? なんで?」っていうのがあるじゃないですか。
そういうものにも近いと思うし、余裕があるというか、きっと彼女の出来る範囲なんですよね。
彼女は、余裕があるとかはきっと考えておらず、自分が出来る範囲で動いているだけなんだと思います。
♥M
なるほど。
♣R
そんな生活の中で、缶の入れ物を見つけ、今までの生活にプラス要素を加えて、ちょっと一歩進んでみようと思った。もちろん、それにも、自分が出来る範囲で成功したらっていう前提がある。自分なりの人生の進み方。
♥M
出来ないことは、しようとは、はじめから思っていないわけね。
変な高望みというのはたしかにないね…なるほど。
じゃあ、あの缶の入れ物を見つけて、これを届けられたら自分の世界から飛び出そうと思うのは、いわゆる「成長」で、その時が来たからとしか言いようがないの?
♣R
自分の中で急にパン!って水風船が割れたみたいな感じですかね。
♥M
ああ。でもたしかにそういうことってあるよね。
いろんな要素が混ざって、何がきっかけとは言えないけど、何かが出てきてパン!って割れるみたいな感覚。そういう瞬間なんだろうなぁ。
心臓がドクンっていう恋の一目惚れのシーンはどう思う?
♣R
ありますよね、そういうの。
♥M
やっぱりあるよね。
■好きなシーンがいっぱい

♥M
本当にフォトジェニックな作品よね。
『アメリ』で一番好きなシーンはどこ?
♣R
どこだろう…悩みますよね。
豆に手を突っ込むシーンとか結構好きなんですよね。
♥M
私は豆に手を突っ込むのも好き。
実家が商店でね、お店でああいう風に豆を売っていたの。
昔だから缶にそのまま入っていて、漏斗で量ってお客さんに売っていたのだけれど、いつもその豆に手を突っ込んでた(笑)。
だから気持ちが分かる。本当に豆って気持ちいいの。
アメリが一目惚れしたニノがアメリのカフェに来て、写真を見せながら「これ、君だよね?」と、聞いた後、彼が帰ると、水になって溶けちゃうシーンはいつも笑える。
アメリがテレビを観ながらモノクロの画面の登場人物に自分を当てはめるシーンも好き。
私も自分の人生をそういう風に当てはめて、色々とシュミレーションするというのをよくやるから。
♣R
水きりの石をいろんなところで拾ってポッケに入れているところも好き。
♥M
あれはおまじないよね。
どこかに行く時や、何かをする時に、息をフッ!と、やるのは多分何かの願掛けだと思う。
小人が世界中で写真を撮ってくるのも好き。
♣R
各地で写真を撮ってる小人の話って、たしか本当にあった出来事なんですよね。
♥M
えっ? どっちが先?
♣R
分からない…どっちなんですかね。
♥M
映画でみんなが真似したのではなく?
でも、実際にもあった、という言い方をするということは、映画より先よね。
実際にあったのをみんなが知っている前提で、アメリが真似した、ということなのかしら。
お父さんのところに人形から手紙が届き始めた頃に、心ここにあらずみたいなお父さんと食事をするシーンも好き。
「最近どう?」ってお父さんが聞いているのに、聞いてる本人が話を聞く状態じゃないから「妊娠して、中絶を何回したわ」みたいに返しても、「そうか、それだったらよかった。」と、お父さんが何も聞いていないのを証明するシーン。何回観ても面白い。
でもそういう時ってある。私、やっちゃう。
相手が上の空の時、今は何を言っても大丈夫なんだろうなと思って、アメリと同じようなことをやるの。それもやっていることが一緒でビックリした。
「私この間寂しいし、3人の男の人が私のところに来たから、3人いっぺんに相手をしたらすごく気持ちよかった」と、ぼーっとしてる相手に言って、反応を見ようとしたりするのをよくやるから、あれっ? 私と同じって思った。
♣R
路子さんは、アメリに似ている部分が本当にたくさんあるんですね。
まず、路子さんを知りたければ『アメリ』を観ろということですね(笑)。
♥M
違うよー(笑)。
そこまで似てないけど、何だか分かる。
社会的な人間として適応しなきゃいけないという意識があるから、一生懸命ブレーキをかけたり、ここの部分は出さないようにする、というのは私の中で働いてる。
でも、そういう部分を取っ払ったら、おもいっきりアメリみたいになれるはず。
だって、そういう部分を持っているんだもの。妄想好きなところも似ているもの。
すごく共感する。
「キャラクター的にも私ってアメリに似てるの」と、みんなに言うと、きっと、ブー!って吹き出されそうなのは分かるけど、すごく共通点がある。
何度目かに観た時に大泣きしたというのはそういうところなのよ。
もう、気持ちがわかってわかって堪らなかった。
今はもうちょっと汚れて摩耗しているから、そこまで泣けなかったけれど…。
あの時は『アメリ』ってこういう映画だったんだと思ってボロボロ泣いた記憶がある。
全員不器用だから、多分、全員に共鳴したのかもしれない。哀しくてかなしくて堪らなくなった。アメリにも共鳴するけれど、いつも薬を飲み続けている人や、ストーカー紛いの愛情表現が下手な彼、そういう人たち全員に共鳴していたような気がする。
♣R
アメリは、そういう人たちの全部を手伝う訳ではなく、最初のきっかけをポンって投げるだけ。全部御膳立てするような人とは違いますよね。
♥M
そうそう、そういうのではない。
それがさっき、りきちゃんが言ってたことでなるほどな、と思った「自分の出来る範囲でやる」ということにも繋がると思わない?
♣R
うんうん、そうですね。
♥M
あくまでも自分が動ける範囲、無理のない範囲でというところなのよね。
■「半身」との出会い
♥M
野イチゴを指に付けてピピピピって食べるとか?
♣R
それはきっと、大人になってからもやっていますよね。
♥M
やってる、やってる!
♣R
小さい頃、隣人に嫌なことを言われて、仕返しに意地悪するところとか。
♥M
サッカー中継の決定的場面でテレビの電源を切っちゃうシーンね(笑)。
♣R
そういうのは昔からやっているし、大人になっても意地悪な八百屋の親父に、靴のサイズを少し小さくしたり、扉の取っ手を逆にしたりだとか、ちょっとした嫌がらせみたいなイタズラをしますよね。
♥M
最高の嫌がらせだと思う。
♣R
地味にダメージを受けそう…。
アメリもニノも似てますよね。
♥M
そっくりで双子みたい。
♣R
アメリが変装して作った「あなたは私に逢うことを望む?」という写真に対して、彼女のおへその写真に「いつ、どこで?」と書き加える部分なんて、特にそう思います。
♥M
そうそう、ニノが写真を集める前は笑い声を集めていたというのを知って、アメリが「何て面白い人なんだろう」という感じですごく嬉しそうにするの。
自分の感性と一致するということでしょう?
♣R
そうですよね。
実は小さい頃から同じことを考えていたというシーンもありますね。
窓際で鏡に光を反射させてキラキラさせるのをふたりともやっていましたね。
♥M
アメリとニノはずっと仲良しのまま続くと思う?
♣R
喧嘩はしないけれど、お互いに何かあると落ち込みそう。
♥M
殻に閉じこもったり。
♣R
そうそうそうそう!
♥M
これはお互い殻に閉じ込もるパターンね(笑)。
喋らなくなりそう。それで人形とかに話しかけてそう。
ふたりのやってることを見ていると、私がよく恋愛論で使うプラトンの話を思い出す。
天上の世界では完璧だったけれど、地上に落ちて半分になった。半分になったから、自分の半身、片割れを探さなくてはいけない。探した時に、初めてひとつの人間として完璧になる、それが運命の相手だみたいな言い方をするのだけれど、このふたりは正にそうよね。
だから一目惚れとか惹かれていくことに納得がいく。
♣R
私もそんな片割れが欲しい…。
舞台でもその話は使われていました。
野田秀樹の作品かな。
♥M
有名な話よね。そういう風に考えるとロマンティックだから、みんな使いたがるのよ。
なるほど…だから探すのね。じゃあ、会えない人はずっと一人前にはなれないんですね!ってことになってしまうけれど(笑)。
ずっと半分のままかい!みたいな感じにはなってしまう。
♣R
えーーっ!?
会えるとは限らないのか…。

