☆36本目『インドシナ』
2026/02/25
【あらすじ】
1930年代、フランスの植民地であったインドシナ。
エリアーヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)は、ゴム農園を取り仕切るフランス人女性。事故で亡くなった王族の友人夫妻の子どもカミーユ(リン・ダン・ファン)を引き取って、可愛がっている。ある時、若い海軍士官の青年ジャン=バティスト(ヴァンサン・ペレーズ)と出会ったことで、人生が大きく動きはじめ…。壮大な歴史大作!

♥M
この作品はドヌーヴの代表作ね。
♣R
様々なドヌーヴの映画を観ましたが、男に言い寄られ続けることなく、一番シュッとしていますね。自分の信念をしっかりと持った女性。今までのドヌーヴとは違う。
衣装も目立ちましたね。あの世界観の中で、周りとは違う目立ち方をしてる。
♥M
農園の中で支配する側の人間だし、フランス人の支配階級も影響していると思う。
この作品は賞を取っているのよね?
♣R
アカデミー外国語映画賞、ゴールデングローブ賞外国語映画賞を取っていますね。
ドヌーヴもセザール賞で主演女優賞を獲得しています。
■エリアーヌはドヌーヴ
♥M
エリアーヌは、ドヌーヴを想定して作られた登場人物なのよね。
♣R
何人かの脚本家が、彼女を想像して書いたらしいですね。
♥M
そうそう。この映画で描かれているのは「カトリーヌ・ドヌーヴ」なの。
映画の登場人物と実生活は切り分けて考えて欲しい、とドヌーヴはいつも言っているけれど、この作品に関しての立ち振る舞いや、言葉、人生の選択の仕方は、きっとドヌーヴそのものなの。
この映画でのドヌーヴの見どころは、きれいなところ、と言っているひとが多いね。
♣R
きれいといっても、女をムンムン出しているようなきれいさではないですよね。
きれいなだけでは終わらない存在…激しい言い争いもするぐらいの人物。
ドヌーヴは実生活で氷の女みたいに言われることもあるみたいですが、映画の中でも熊男みたいな警察長官のギイに対してはそんな感じでしたよね。
一緒に働いていたフランス人夫婦を辞めさせるシーンは一見冷たく見えますけど、それに関しては、危険な目にあわせないための優しさを感じました。
■本当の母、育ての母
♣R
前半はドヌーヴが演じるエリアーヌの話を中心としていて、後半はジャン=バティストと娘のカミーユの話がメイン。
南北ふたつのベトナムが誕生するというタイミングで、エリアーヌが今までのことについて、ジャン=バティストとカミーユの息子、つまり孫に話しているという設定なんですよね。
しかもちょうど独立戦争終結を決めるジュネーブ会談に、本当の母親(カミーユ)が来るけれど、どうしたい? という話なんですよね。
♥M
うん。結局会わないのよね。
♣R
話を聞いたものの、育ててくれたエリアーヌ以外に母親がいるとは、想像出来なかったのかもしれませんね。育ててくれた人への恩義もあるし、そもそもインドシナを離れてフランスで生活をしていたので、世界の違う話にしか思えなかったのかも。
♥M
育ててくれた人への気持ちがあるにしても、エリアーヌにとっては娘だし、息子にとっても本当の母親だから、会ったとしても裏切られた気持ちはしないし、本当にどっちを選んでもいいのよ、という感じだっだのに、結局会わなかった。
長い間フランスで生活をしていたから、息子はフランス的な考えを持ったのかな。
♣R
突然そんな話をされて、じゃあ本当のお母さんに会う? と、言われても…ちょっとためらいますよね。
♥M
きっと、いいや…と、なるよね。
■無関心になること

♥M
ジャン=バティストの人生は本当に激動だった。
最初は規律を守る海軍士官なのに…。
♣R
父親に「心の声に従って生きろ」と言われていたけれど、その結果、父親は情熱と狂気の末に失踪。だからそんな風にはなりたくないから、冷徹に生きたい、と言っていたのに、結局同じ人生を歩んでいましたね。
♥M
血は争えない、ということかな。
ジャン=バティストに対するドヌーヴ、エリアーヌの溺れっぷりもすごかったけど、娘の婚約相手のお母さんに「男を忘れる方法は 知ってるわね」と、言われて…。
♣R
放心状態で頷きながら、「無関心になること」だと答えるんですよね。
♥M
そうそう。「フランス人の恋は理解できないわ 狂気と激情と苦悩の恋 戦争とよく似てるわ」、と言われてしまうあたりのやりとりが面白かった。ジャン=バティストにも似たようなことを言われているけれど、そこにはエゴイズムな側面があるような気がする。
自分の思い通りに全てを動かそうという性格
♣R
工場が火事になった後に、作業を再開させるシーンは、まさにそんな感じでしたね
♥M
エリアーヌの娘に対する執着もすごく感じた
♣R
そうですね。娘に土地や屋敷を残すために銀行に掛け合ったり、とにかく自分の元へ帰ってきて欲しいという想いを伝えていますよね
♥M
エリアーヌにとって、自由にさせることが愛というよりは、自分なりになにかをしてあげることが愛情表現の仕方なのかな
♣R
最終的には、自由にしてあげたということですよね
♥M
というよりは、娘はもう手の届かないところに行ってしまったという方が近いかもしれないね。
■命を救うために

♥M
りきちゃんは好きなシーンあった
♣R
海域に迷い込んだ時に、ジャン=バティストがカミーユに水を飲ませるシーンですかね。
♥M
唾をあげるところ…が好きなんでしょう?
♥M ♣R
(笑)。
♥M
水がなくなってしまったからね。
♣R
なんてエロティックなシーンなんでしょう。
♥M
私もあのシーンはハッとした。
♣R
この映画は、そういうシーンが全然ないですよね。
♥M
うん…性愛のシーンみたいなものはなかったね。
♣R
その中であのシーンだけひょいっと入ってきて。
♥M
命を救うためにやっていることだけれど、私もすごいと思った。
あのシーンにとても愛を感じた。
♣R
巻き戻して見直しました(笑)。
♥M
『インドシナ』はそういう映画ではありません(笑)。


