ふたりの映画鑑賞記/よいこの映画時間

☆35本目『ハンガー』

2026/03/02

【あらすじ】
人間の生き血を吸う吸血鬼のミリアム(カトリーヌ・ドヌーヴ)。
ミリアムにより永遠の美と不老不死を与えられたものは、吸血鬼となり、彼女の恋人として人生を送る、そんなことを何世紀もの間繰り返してきている。そんな彼女が18世紀に選んだのがジョン(デヴィッド・ボウイ)であり、現在の恋人だが、突然、ジョンに老化現象が現れ始め、ジョンは老化現象を研究するサラ(スーザン・サランドン)を訪ねるが、全く相手にされず急速に老化してゆく。ミリアムは、ジョンの後釜としてサラに近づくが…。




♣R
『インドシナ』の約10年前ぐらいに作られた作品なんですね。

♥M
そう、40歳ぐらいの時の作品。

♣R
『インドシナ』よりも、若く見える時と老けて見える時がある、不思議な映画でした。

♥M
この役、きっと10年前くらいにやりたかっただろうなあ。

♣R
ドヌーヴがとてもかっこよかったです。
黒いサングラスも妙に似合っていましたね。

♥M
かっこいいし、とにかくきれいだったし、ちょっとパンクな革のミニスカートも似合っていたね。
凄みのある役を演じさせたら、やっぱりピカイチ。ウットリしちゃった。
部屋着にしている中央がベージュになっている黒の衣装も素敵だったし、サラが抗議した時に、暴力を振るうシーンでの髪の振り乱し方は、ゾクゾクした。

♣R
前半は前半で楽しめるし、後半部分とは違った美しさがありますよね。
結構デヴィッド・ボウイが、自分の映りを色々と注文してたんじゃないですかね?
だいぶ色味が違いますよね。

♥M
うん、テイストが違う。出演者みんなうるさそう(笑)。
監督大変だったと思う…。

♣R
トニー・スコット監督は、この作品がたしか初監督だったような気がします。

♥M
そうなの?
初めてがこの作品だったから、もう嫌だ…って映画監督辞めてない?

♣R
(笑)。

♥M
こういう映画は苦手だけれど、それを越えるぐらいの映像美があった。

♣R
ドヌーヴも、衣装も、家の内装も美しかったですね。

♥M
音楽も美しい。ドヌーヴはああいう役が似合うね。

♣R
演技がノッてましたよね。

■美しいふたりによる映像


♥M
この映画は、カトリーヌ・ドヌーヴとスーザン・サランドンが主演の映画だったね。

♣R
そうですね。デヴィッド・ボウイがメインの映画なのかと思ってました。

♥M
私もそう思っていたけれど、デヴィッド・ボウイは、共演とは言えないくらいにチョイ役だった。いきなり老けていくし。
だから、デヴィッド・ボウイのファンは、きっと、えー、、もう一回若返って!って思ってしまうだろうなあ。

♣R
最初のミュージックビデオ的なデヴィッド・ボウイの世界でずっと映画が続いていくのかと思っていました。

♥M
そうね。老化していくのと同時に、普通の映画の空気感になるね。

♣R
デヴィッド・ボウイは、老いていくジョンのかすれ声を出すために、毎晩ジョージ・ワシントン・ブリッジに立って、自分が知っているパンクロックの歌を絶叫したんですって。

♥M
じゃあ、あれは地声だったのね。
オープニングのドヌーヴとデヴィッド・ボウイのシャワーでのキスシーンはきれいだったね。

♣R
とてもきれいでした。エロティシズムを感じました。

♥M
美しいふたりがこんな風に映されると、こんなにきれいなものが出来上がるのかと思った。
この世のものとは思えない。

■話題となったレズビアンシーン


♣R
スーザン・サランドンはちょっとなあ…この女優さん、初めて知りました。

♥M
『テルマ&ルイーズ』が有名かな。私が観る映画によく出演しているけれど、あまり好みではないかな。でも、この作品ではきれいだと思った。

♣R
ベッドシーンはよかったですが、黒いパンツだけの時、すごく滑稽に見えました。
セクシーさが感じられないし、魅力的ではない。

♥M
なんであのシーンだけ履いたのかな。
だったら、シーツで隠すとかすればよかったのにね。

♣R
たしかに…でもだからこそ、そのシーンのドヌーヴがより美しく見えました。
レズビアンシーンは違う人がやっているというのは本当ですか?

♥M
見ていたら、割とふたりが実際に絡んでるシーンも多かったけれど、ふたりの肉体が横たわる上からのカットは、明らかにドヌーヴの身体ではなかったね。

このシーンがきっかけで、ドヌーヴはレズビアンの人に崇められたらしく、『Deneuve』というレズビアン雑誌まで発売されたけれど、結局ドヌーヴがそれに対して抗議をして、雑誌名は変わってしまったみたい。
アンドレ・テシネ監督の『夜の子供たち』でもレズビアンを演じているし、『8人の女たち』でも、ファニー・アルダンとの絡みがあったから、そういう意味では同性愛の人にウケがいいみたい。

■それでも生きたい


♣R
ジョンは老いを止めるために、レッスンに来ている女の子を殺して、血を飲むけれど、結局老いは止まらなかった。
でも、ミリアムはそんなに驚いてはいませんでしたね。
今までの恋人たちも同じようなことをしていたのかもしれないですね。

♥M
エジプトの頃から生きているくらいだから、何度もそういうことがあったでしょうね。

♣R
ミリアムは毎回、不老不死と永遠の若さが手に入るという嘘をついて、吸血鬼化することで自分の恋人にしているということですよね?

♥M
そうね。あれだけ老化した人がいるし、ずっと若いままで生きている人はいない。
適合さえすれば不老不死と永遠の若さを手に入れられる人もいるんじゃないかな?

♣R
若いままの人が残っていないということは、今までに適合した人はいないということですか?

♥M
そうか…。だから睡眠や老化現象に興味を持って、本を読んだりしているのかもしれない。
自分はできているのに、他の人はなぜそうならないの? と思い、吸血鬼なりに研究しているし、愛しているから、老化を止めたいとは思っている。
でも、ジョンもロココの頃の衣装を着ているシーンがあるから、かなり長く生きているということでしょう?

♣R
かなり長いですよね。

♥M
1700年代ぐらいからだとすると、200年以上生きてる。

♣R
それでもまだ生きていたいと思う欲がすごい。
私は早く死にたいと思っている人間なので、永遠に生きたいという気持ちが全く分からないです。

♥M
私も。しんどいし、可哀想だと思ってしまう。

♣R
自分の周りの人はどんどん死んでいくんですもんね。
今でも「永遠の命」をテーマにした映画はたくさんありますが、なんなんでしょうね。
日本の昔話にも、人魚の肉を食べると不老不死になる、というのがありますよね。

♥M
そうなの?
人魚の肉って魚? 人間?

♣R
知らないですよ(笑)。

■吸血鬼は存在するのか


♥M
吸血鬼は本当にいると思う?

♣R
これだけ今も話が作られているくらいだから、いてもおかしくないですよね。
この映画の中の吸血鬼は、一般的な吸血鬼のような、太陽の光や十字架が苦手、というのはなかったですね。

♥M
血を吸う時に使うナイフ付きのペンダントも十字架だった。

♣R
魔女は水で溶けるみたいに、私たちが勝手に苦手なものはこれだと思っているだけなのかもしれませんね。

♥M
そうそう、そういう設定がないだけ。
この作品のなかでは、1日に6時間眠り、1週間に1回血を飲めば大丈夫という設定だったけど、その決まり事が健康に生きるためのハウツーみたいで、おかしかった(笑)。
サラに血を与えるために、若いお兄ちゃんの生き血を吸いながら、階段下から「獲物よー!」みたいにサラを呼んでる姿もちょっとおかしかった。

♣R
あんな男の血を飲むのやだー。
家の中でガムをぺっ! って吐き捨てるような男。
血が汚れてそう。

♥M
私も飲みたくない。飲む人を選びたいな。
血によっても質が違っている気がするけれど、どうでもいい人を連れてくるくらいだから、それはあまり関係ないのだろうね。
でも、自分の意思とは無関係に吸血鬼にされるのは嫌。
永遠の生命や若さが欲しい人ならいいけれど、そうではないのに勝手にされたら嫌だな。

♣R
余計なことを…と、思いますよね。
そういえば、この吸血鬼は、血を吸う時に噛まないですね。

♥M
カプっと噛むのではなくて、ナイフで切って、チューって吸ってる。
噛むシーンにすると、牙がピッと出てきて、ちょっとコミカルになってしまうかも。
だからこっちの方がリアルでいいのかな。

■永遠の若さ


♥M
すっかり忘れていたけど、最後はああいう終わり方だったのね。楽しめた。
ラストのゾンビたち以外は、私の好みの映像だった。
この作品に関しては、誘惑して惹かれあっていくところが描かれていたから、吸血鬼抜きにしても本当にきれいだった。

♣R
ゾンビたちは妙にリアルでしたよね(笑)。
こういう映画をあまり観ないので、新鮮でした。

♥M
私も。絶対避けるもの。

♣R
なんでゾンビたちは、最後だけあんなに元気だったんですかね?

♥M
なぜお元気に、と、私も思った。
でも、最初に踵を返して去っていくのは、ジョンのゾンビ。
ミリアムのそんな姿を見てられないから? それとも未練?

♣R
まだ老い始めたばかりで、愛していたからですかね。
エジプトの頃からの人たちの恨みつらみに比べれば…。

♥M
ゾンビたちはかつての愛人だから、「愛してるのよ みんなを」と言っているけれど、襲われると「NO」と言うなんて…やっぱり見た目が大事ってことね。

♣R
(笑)。
サラはミリアムのナイフで自殺を図ったように見えましたが、死んでいなかった、ということですよね?
しかもミリアムを閉じ込めた。

♥M
吸血鬼になったあとでも、まだ人間としての理性が残っていて、こんなのはダメだと思って死のうとしたのよね。

♣R
ヨボヨボになった今までの恋人たちがミリアムを襲った後、ミリアムが階段から落ちたら、みんな朽ちちゃうじゃないですか。
アメリカのドラマとかで、根源を殺すと、仲間にしたやつがみんな死ぬ、というのがよくあるんです。それに似た感じなのに、じゃあなんでサラは死ななかったんですかね?

♥M
たしかにそうね…新しいから?
新しい命だからじゃない?

♣R
上手く適合したということですか?

♥M
ミリアムによって葬られた人たちは、ミリアムが絶えることによって絶えるけれど、サラは老化現象も起こっていないし、まだ生きていたから、引き継いでいく感じなのかな?

♣R
そもそも、吸血鬼は不老不死と言っているはずなのに、階段から落ちたくらいで死んでしまうものなんですか?

♥M
知らない(笑)。
でもきっと死んではいないよね。

♣R
そうか…。

♥M
死んではいないけれど、何かの効力を失うのはたしか。
究極の老化というのが、吸血鬼にとっての「死」なのね。
まあ、ちょっとそのあたりの設定は甘いかな。

♣R
それにしても、エジプト時代から吸血鬼をやってるなんてすごいですよね。

♥M
ずっと生き続けてね。
人間の老化、老いへの恐怖、若さを保つ、というのも、ひとつのテーマになっているけれど、この時代からそういうことが考えられていたと思うと面白い。
だからこそ、永遠の若さをという話ならば、この作品が作られる10年前ぐらいのドヌーヴの方が、より説得力があったと思うし、『昼顔』の頃の美貌だったら、永遠の若さがもっと引き出されたと思う。

♣R
まあ、でもそれだと普通にきれいだなぁ、で終わってしまいそうな気もしますよ。

♥M
そうね…凄みは出てこないか。

■ドヌーヴ不作の時代


♣R
この映画が公開された頃、ドヌーヴは不作の時代と言われている時期でしたが、『ハンガー』の人気はどうだったんですかね?

♥M
デヴィッド・ボウイが出演しているから、カルト的な人気はあったかもしれないけれど、賞は受賞していない。でもこの作品、オススメね。

♣R
そうですね。思っていたよりも面白かったです。

♥M
たしかドヌーヴはこの作品に出演したがっていたのよね?

♣R
自分が好きな吸血鬼の話だったから、出演を決めたみたいです。
最近のインタビューでも、「私は女吸血鬼を演じるのを楽しみました」と語っていたぐらいです。

♥M
演技がのっていたもの。
ドヌーヴは、普段の自分が投影されているものよりも、実生活と切り離された役柄のほうが演じるのが好きと言っているけれど、まさにぴったりな作品。
『ハンガー』の約10年後に『インドシナ』が公開されているけれど、その間に代表作はある?

♣R
うーん、ないかもしれませんね。

♥M
やっぱり不作の時代なのよね。
むしろ今の方がガンガン映画に出演して、話題になっているくらいだから珍しいパターンだね。

♣R
この時代の作品は、あまりレンタルなどで借りられないので、貴重な作品のひとつですね。



~今回の映画~
『ハンガー』
1983年 イギリス
監督:トニー・スコット
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/デヴィッド・ボウイ/スーザン・サランドン/
クリフ・デ・ヤング

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