◎61本目『汚れた血』
2026/03/06
【あらすじ】
愛の無いセックスによって感染する病気「STBO」が広まっている中、パリは彗星接近のため暑い日が続く。
アレックス(ドニ・ラヴァン)は、「STBO」の血清を手に入れて密売するため、恋人のリーズ(ジュリー・デルビー)に別れを告げ、父の友人マルク(ミシェル・ピコリ)に手を貸す。そしてアレックスは、そこで出会ったマルクの恋人アンナ(ジュリエット・ビノシュ)に特別な想いを抱くが…。

♥M
映画界にオゾン監督やドラン監督みたいな人が登場すると、嬉しい驚きがあるけれど、カラックスのこの作品も同じ。ちょっと前の作品だけれど。
♣R
同年代にはどんな映画がありましたか?
♥M
例えば、ドヌーヴだと、どの作品あたりかな。
♣R
くすぶっていた時代ぐらいですよね。
『ハンガー』の3年後、『インドシナ』の6年前みたいです。
♥M
カラックスの『ポーラX』は何年公開?
♣R
1999年です。
♥M
じゃあ『ポーラX』は、カラックスが映画界をいったん離れて、復活した後なのね。
『汚れた血』はアレックス3部作の2本目だよね。
※『ボーイ・ミーツ・ガール』 『汚れた血』 『ポンヌフの恋人』 の3作品は、全作品ドニ・ラヴァンが演じるアレックスという名前の登場人物が主人公であるため、【アレックス3部作】と呼ばれている。また、ドニ・ラヴァンはカラックスと身長体重が一緒であり、カラックスの本名が「アレックス」であることから、カラックスの分身とされている。
♣R
どの作品も主人公を演じているのがドニ・ラヴァンなんですね。
♥M
狂気を感じさせる俳優だよね。
■ぷりぷりのビノシュ
♥M
ビノシュが『汚れた血』で注目されたのがよく分かる。
演技がいっちゃっているもの。
♣R
何歳頃ですかね。
♥M
1986年公開だから22歳。
♣R
若い!!
『ランデヴー』の1年後なんですね。
♥M
ぷりぷりした若いビノシュだから、りきちゃんはあまり好きではないかもしれないけれど、やっぱりきれいだね。
♣R
最近観た若い頃のビノシュの中では、一番好きかも。
セリフも少ないから、演技で勝負をしている感じがします。
賞をとっていますよね?
♥M
セザール賞主演女優賞ノミネート。
カラックスも、本当にビノシュはすごいと思ったでしょうね。
♣R
息をフッてするシーンがかわいかったです。
♥M
若いビノシュ、本当に20代のピチピチっとした、素の彼女を見ている気になる。
ビノシュとカラックスはプライベートでも恋人同士だったけど、出会いはこの映画、『汚れた血』だったんじゃないかな。
カラックスはビノシュに骨抜きにされて『ポンヌフの恋人』でも組んで、それから捨てられて精神を病んでしまったか何かで、いったん映画界から離れた、というのを聞いたことがある。
■愛のあるセックス・愛のないセックス
♣R
路子さんは、『汚れた血』を観たことがあると言っていましたが、前回と感じ方は違いましたか?
♥M
記憶があやふやだからね……。
あらためて思ったのは、カラックスの映画は、命と引き換えに芸術を作っている、ってかんじがして、内容が難解であっても引き込まれるし、世界観が確実にあるってこと。難解であってもね。
♣R
近未来的な話でしたね。
♥M
しかもウイルス感染の話。今観るのにぴったりな映画。
映画の中の病気をエイズだという人もいるけれど、きっと違うよね。
愛のないセックスをすると感染する病気という発想が面白い。
自分は愛のあるセックスだと思っていたのに、相手はそう思っていなくて感染してしまう、ということもあるでしょう?
♣R
あり得ますよね。そんなの悲しすぎる!!
♥M
こわすぎるよ(笑)。
■疾走する愛

♥M
この映画は「疾走する愛」というのがひとつのテーマ。
有名なシーンはデヴィッド・ボウイの曲をバックに、町中を疾走するシーン。
あのシーンを観るだけでも面白いと誰かに言われたのを覚えてる。
アレックスの情熱的な生き方が、恋愛というかたちではないけれど、アンナに影響を与えて、彼女もラストで疾走する。
意味を考える映画というよりは…。
♣R
感覚?
♥M
そう。色彩とか映像、セリフのキレとか。
♣R
クローズアップされたシーンが多いですよね。
カラックスはバイクのシーン、好きですよね。
♥M
『ポーラX』でもあったね。
♣R
そうですね。
『ポーラX』で、ドヌーヴが泣きながらバイクで疾走するシーンは、PVみたいでとてもかっこよかったですよね。
バイクのシーンは、カラックスのテーマである「疾走」を表現するのにピッタリですね。
■読書を通じて現実を見る
♥M
アンナはアレックスに惚れているわけではないよね?
♣R
アンナはマルクのことが好きですからね。
♥M
子どもがじゃれているみたいなものなのかな。
♣R
アレックスはアンナに対して特別な気持ちを抱いていましたよね?
アレックスがとても生き急いでいるように感じました。
死ぬことを大したことだと思っていないですよね。
♥M
アレックスの友達が言っていたじゃない?
「お前はそんな小説が好きだと言っていた。お前の言葉も刃のようだ。火遊びもほどほどにしろ。お前は本を読みすぎて早熟になった。いやらしいほど。だからたちまち年老いてブラウン管みたいにべしゃっとつぶれる」アレックスは読書を楽しんでいるのではなく、読書を通じて現実を見て人生を考え、世界を感じてるのね。
デカダンな感じや生き急いでいる感じがするのは、だからなのかもしれない。
りきちゃんも割と早いうちにお母さんの洗礼を受けて、フランス映画とか観ているでしょう? だからそういう部分があるような気がする。あらかじめ知ってしまっている、というような。
私も、読書に埋没している時は、死というものを身近に感じる。
♣R
その中に現実を見ている訳ですね。



