◎60本目『ランデヴー』
2026/03/06
【あらすじ】
かけだしの女優ニナ(ジュリエット・ビノシュ)は部屋探しのため訪れた不動産屋でポーロ(ヴァデック・スタンチャック)に出会う。ポーロはニナに一目惚れしたが、ニナには友情以上のものはない。
あるときポーロの部屋で役者くずれのカンタン(ランベール・ウィルソン)に出会い、彼の破滅的な雰囲気に惹かれ、ふたりは関係をもつが……。

♣R
ビノシュの『ランデヴ―』は、結構有名ですよね。
♥M
うん。この作品でセザール賞主演女優賞にノミネートされてる。
♣R
カンヌでは監督賞を受賞しているみたいですね。
♥M
特典映像にあったカンタン役のランベール・ウィルソンがインタビューでこう話していたよ。
「ビノシュはこの作品によって映画祭に招かれて、そこで受けた賛辞で自分の才能と価値に気付いて、次作から作品をちゃんと選んで出演している」
♥M
ビノシュのブレイクのきっかけとなった作品であることはたしかね。
♣R
アンドレ・テシネが撮ったというのも大きいですよね。
♥M
この作品の後くらいに、レオス・カラックスの『汚れた血』に出演して大ブレイクしたわけでしょう?
『ランデヴー』は監督や脚本がいいから、すごくいい映画に違いないと思っていた作品なの。
ビノシュは、この時の脚本を担当しているオリヴィエ・アサイヤスと、いくつかの映画を一緒に作ってるね。
♣R
最近一緒に観た作品だと、『冬時間のパリ』。
あとは『夏時間の庭』『アクトレス 女たちの舞台』がありますね。
♥M
ところが私、この映画のよさがよく分からなかった。
どう心を動かせばよかったのかな。
♣R
自分も上手く入り込めなかったです。
♥M
わあ、よかったぁ。
まず、女優業に対するニナの野心や熱意、そして成功したいという気持ちがよく見えなかった。だけど、実は虎視眈々と狙っているように見える時もあってね。
♣R
舞台をすっぽかしたり。
そもそも脇役のペーペーみたいな女優役だけれども、上手くなろうとか、努力しよう、という風には見えないですよね。楽して大役をゲットできたらぐらいの感覚ですかね。
■体当たりの演技
♥M
この映画は、ビノシュが体当たりの演技をしたと言われているのが分かる。
ばんばん脱いでいるもの。
♣R
陰毛どアップですもんね。
♥M
すごかった。
♣R
ビノシュは割と陰毛を出すイメージがありますよね。
♥M
『存在の耐えられない軽さ』でも出していると思う。
今回もたくさん脱いでるし、若いからぷるんぷるんで、ムチムチしてかわいい。
エロティシズムというよりは、健康美に溢れていて生命力を感じる。
♣R
そこまで出すのが衝撃というのも、みんなが注目した理由かもしれませんね。
■完璧なものには惹かれない
♥M
私、かなしいことに瑣末なところに目がいってしまいました。
カンタンがいきなり変な登場の仕方をするでしょう。
急にお前が欲しいと言ったり、剃刀を自分の首に押し当てながらニナを脅したりして、とてもクレイジー。その剃刀のシーンで、ニナが吐いた後、すぐにふたりがキスをするでしょう?
吐いてすぐにキスしたのはわざと?
♣R
うへぇーって思っちゃいますよね。
♥M
二ナの全てが欲しいという、カンタンの倒錯の趣味を表しているのかな。
♣R
でもカンタンからは、二ナの全てを欲しがっているようには見えないですよね。
ニナよりも、事故で失った彼女をずっと思い続けているような気がします。
♥M
カンタンはかつて恋人を失い、自暴自棄で生きていて、死にたいと思っている人物。
そんな時に興味を持てるようなニナが現れ、ちょっかいを出すことで死ぬきっかけを探していたのかな。
殴られるシーンでも、抵抗せずに殴られっぱなし。殺して欲しいぐらいに見えた。
♣R
人生を投げやりに生きているように見えますよね。
♥M
そうそう。もうどうでもいいと思っている。
♣R
殴られて何も抵抗しないカンタンの姿を見て、ニナは彼を受け入れるようになりますよね。
ニナが「完璧なものには惹かれない」と言っているシーンがありますが、殴られてボコボコにされたカンタンを見て、俺すごいだろ的な彼の雰囲気の中に、ある不器用さを感じ取り、受け入れるようになったのかなと思いました。
♥M
壊れた人なのだと感じ取ったのかもしれないね。
■みんなぶっ飛んでいる
♥M
ポロがニナに一目ぼれしたというのはよく分かる。
でも、カンタンがニナに目を付けたのも一目ぼれ?
♣R
家に泊まらせないと言いつつ、すぐに宿泊先のホテルに乗り込んできますからね。
登場人物がみんなぶっ飛んでいますね。
♥M
ぶっ飛んでいるし、だからなのか、観ている自分が置いていかれている感が満載…。
カンタンがいきなり自信たっぷりに追いかけてくるから、ニナとカンタンは前に関係があったのかと思ってしまったくらい。
でも初対面でしょう? わからなすぎる…。
登場人物の中で一番不気味だったのはポロ。ゾワゾワした。
♣R
彼はストーカー気質ですよね。
♥M
そう、一番怖いパターン。
カンタンみたいな人は分かりやすいから、こいつ危ないから気を付けようと思える。
ポロみたいな人は表に感情を出さないから怖い。
♣R
いい人に見えますからね。
♥M
はじめからニナに惚れてムラムラしているのに、それを隠しながら親切心を装ってる。
ニナは生き抜く中で身体を交換条件にしてきたことが多いから、見返りを要求しないポロに好意を持っていたのに、いきなりガッバァーってニナに襲いかかるなんて、それはないでしょうって思う(笑)。
そのあたりのデリカシーのなさが本当に嫌だし、襲いかかられて、ニナもすごく傷ついているのがよく分かる。
ニナとポロがセックスをするシーンで、ニナの顔にペッペペッペ唾を吐きかけながらキスしているのだって、そういうのが似合うのはカンタンであって、お前じゃないと言いたくなる!
♣R
たしかに(笑)。
♥M
ポロは本質的に恐ろしいものを持っている。
最後にニナの散歩に一晩付き合っていたから、優しいところもあると思っていたけれど、ニナにもらった公演のチケットを捨てているということは、もう会うこともないということでしょう? そのあたりも嫌な感じ。
♣R
ポロはニナを諦めたのだと思いますか?
♥M
諦めたというよりは、気が済んだのかもしれない。
♣R
セックスをしたから?
♥M
それもあるだろうけれど…。
♣R
他の男が云々とか、朝帰りしやがってみたいに言うくらいの激しさを持っているのに。
♥M
俺とは寝たくないのかとイジイジしていたのに。
♣R
ベッドで裸になって待っていたりしていたのに!
♥M
あっはっは!(笑)。
そのシーンを観て、『哀しみのトリスターナ』の初夜をルンルンしながら待つ老人を思い出した。
それくらい哀れに見えた。
■愛しているのはカンタン
♥M
後半では、トランティニャン、出たーって感じ(笑)。
(ジャン=ルイ・トランティニャンに対しては、『ヘルバスター 避暑地の異常な夜』の変なイメージがつきまとう私たち)
♣R
見た目からすると『男と女Ⅱ』の頃ぐらいですかね。
トランティニャンが出てくると、不安な気持ちになるのは何故だろう(笑)。
♥M
知り合いの困ったおじさんが登場、みたいな気持ちになっちゃうね(笑)。
♣R
火葬場のシーンは印象的でしたね。
♥M
ニナがカンタンの棺の上にお花を投げ込むところね。
♣R
一瞬でしたが、あのシーンはとてもよかったです。
『ナチュラルウーマン』の時の火葬シーンもよかったですが、死を前にした時の儚さみたいなものに美しさを感じるのかも。
♥M
カンタンが亡くなった後に、事故で亡くなったカンタンの恋人の父親(ジャン=ルイ・トランティニャン)から、「ポロのことを愛しているのか?」と聞かれるでしょう?
ニナは「愛しているのはカンタン」と、言うけれど、そんなにカンタンのことを愛していたと思う?
♣R
具体的な感情が描かれていないから、本当に愛していたかはわからないですよね。
あまりにも急な展開でしたし。
♥M
深く知り合う前にカンタンは亡くなってしまったもの。
一度セックスをしただけでしょう?
♣R
しかも、ふたりのところにやってきたポロに、ニナとセックスをさせようとしますよね。
寝ているニナのお尻をペロンって出して。
♥M
そう。はっきりさせようぜ、みたいにね。
そしてすぐその後、カンタンが亡くなる。出会ってからの期間が本当に短い。
ニナは短期間でカンタンに強烈に惹かれたということ?
♣R
強烈な負のオーラに惹かれるみたいな時、ありますよね。
♥M
破滅願望?
♣R
そうですね。そういうものに強く惹かれていたのかもしれませんね。




