◎62本目『トリコロール/青の愛』
2026/03/06
【あらすじ】
作曲家の夫と娘を事故で失ったジュリー(ジュリエット・ビノシュ)は、屋敷を引き払い、夫が作曲をしていた未完成の協奏曲の楽譜も処分する。
パリで新しい生活を始めるが、未完成の協奏曲の旋律が脳裏に焼き付いて離れない。
ある日、処分した楽譜の写しを夫の協力者だったオリヴィエ(ブノワ・レジャン)が持っており、彼が曲を完成しようとしていることを知り…。

♥M
主人公のジュリーが無理やり立ち直ったりもしないから、本当に無理のない、いい映画だと思った。
事務的なことばかりやっていた日常の中で、時間を作って観たのがよかったのかもしれない。観ている間は、自分の世界があるような気がした。
こういうのがあるから、映画を観るのをやめられないのだろうな。
♣R
トリコロールシリーズは3部作なんですね。
♥M
そう。この『青の愛』が第1作目。
♣R
青が自由、白が平等、赤が博愛を象徴していて、この作品は「青の愛」=「(過去の)愛からの自由」をテーマに描かれているとのことですが。
♥M
とてもつらい経験をして立ち直っていく話、というイメージ。
よく生きられたな、というところに感動をしてしまう。重い話だったね。
♣R
何が理由で、自殺を思いとどまったと思いますか?
♥M
分からない…私だったらきっと死んでしまう。
♣R
すぐに自殺を諦めたように見えましたよね。
♥M
宗教的な理由かな…。
あの時点では、夫の未完成の交響曲を完成させようとかは考えていなかったと思う。
♣R
楽譜を捨てていますからね。
♥M
そう…夫の友人であるオリヴィエは、ジュリーが楽譜を捨てるだろうと予想して、コピーを残しておいたのかもしれないね。
■つらいことがあっても生きていかなくてはならない
♥M
家財も処分して、家も出て行き、誰も知らないところで過ごそうと思ったのは、何も目的もなく余生を生きようと思ったからでしょう?
♣R
違う人生を生き直したかったということですか?
♥M
そこまでではないと思う。
でもそんなふうにしてまで、つらいことがあっても生きていかなくてはならないんだと思うと、つらくなった
♣R
オリヴィエがいなかったら、ジュリーはどうなっていたと思いますか?
♥M
作曲をしないと生きていけないというような人ではないから、オリヴィエがいなくても、淡々と日常を送っていきそうな気はする。
それにしても…オリヴィエが重要な人物だとは思っていなかったし、途中から出てこなくなるだろうと思っていたら、いい役割の人物として最後まで出てきていた。
「これは君の名前で発表するべきだ」と、ジュリーをちゃんと説得していたし、なかなかいい味を出していた。
■喪失感を埋めたくて

♥M
オリヴィエはジュリーと初めて寝た時のマットレスを…。
♣R
買っちゃう(笑)。
♥M
そんなのジーンとしちゃう。
♣R
嬉しいですか?
♥M
自分のことが好きなんだなと思って憎めない。
♣R
自分は嫌だなぁ。
自分は重いし、そんなことしがちだけれど、逆に、そんなことされたら引いちゃうかも。
夫と娘を事故で亡くした後に、オリヴィエと寝る気持ちはよく分かりました。
♥M
私も分かる。
♣R
失った時の喪失感を埋めるみたいな感じですよね。
♥M
そう、それはある。忘れたいからという気持ちで。
♣R
でも、そんなのは無意味なんですよね。
結局より傷を深めちゃう。
♥M
そうそう、余計に虚しくなる。
■自分の才能なのに
♥M
フラッシュバックした時とかに、きれいな交響曲の旋律が流れるけれど、曲の使われ方がオリヴェイラ監督の『メフィストの誘い』に似ているような気がする。デジャヴかと思ったくらい。
ジュリーの頭の中では、ずっとあの音楽が流れてる。
♣R
そういえば、この「交響曲」は、新約聖書の「コリントの信徒への手紙」の引用らしいですね。
♥M
合唱のところだよね。こんな歌詞だった。
愛は耐え忍び
全てを信じる
すべてを望み
ひたすら耐える
愛は決して滅びることがない
予言はいつしか終わりを告げる
♣R
ジュリーは気持ちが変化していったことで、オリヴィエと一緒に曲の続きを作り始めますよね。
♥M
オリヴィエは、実は今までもジュリーが作曲していたと気づいたよね。
だから、曲が完成した時に、「それは君の名前で発表すべきだ」と、ジュリーに伝えた。
♣R
ジュリーは、ずっと夫のゴーストライターをやっていたということですよね。
自分の才能なのに、それが直接認められないというのは、どんな気持ちですかね。
♥M
愛する夫のためだとか、女性の立場というのは関係するかもしれないけれど、かなり複雑。
ジュリーは夫のことを愛していたと思う?
♣R
夫よりも、娘を大事にしているような気がしました。
病院で夫が亡くなったことを告げられた時、そんなに気にしているようには見えなかったです。
♥M
夫には愛人がいたからね。
愛人に家をあげる時に、愛人がジュリーのことを「聞いてた通りの人だ」と、笑うでしょう?
それを見ただけで、夫が愛人に対して、ジュリーをどんな風に説明していたか分かる。
きっと皮肉っぽく、理想の女性とか、何でもやってくれる人、みたいに言っていたのだと思う。
♣R
夫からしてみれば、理想の女性だけれども…というような感じだったんでしょうね。
♥M
最後は自分の作品として公開するよね?
♣R
そう信じたいですよね。
♥M
うん。ジュリーとオリヴィエはきっと関係が続いていくし、今後はジュリーも作曲家として生きていくのだと思う。彼女は最後、すごくイキイキしていたもの。


