ふたりの映画鑑賞記/よいこの映画時間

☆26本目『カトリーヌ・ドヌーヴ × ジャック・ドゥミ × ミシェル・ルグラン の世界』

2026/01/16




♣R
カトリーヌ・ドヌーヴ 、監督のジャック・ドゥミ 、音楽家のミシェル・ルグラン。
この3人で作られた作品には、『シェルブールの雨傘』 『ロシュフォールの恋人たち』 『ロバと王女』 『モン・パリ』があります。
どの作品も色合いが違いますね。

♥M
そうそう。違うテイスト。
りきちゃんはどれが好きだった?

♣R
ミュージカルが好きなので、『ロシュフォールの恋人たち』ですね。
前にも観たことがありましたし、音楽も好きです。
同じミュージカルでも、『シェルブールの雨傘』は全編歌で構成されているので、慣れないとちょっとクセを感じてしまうかもしれませんね。
そういった意味では、『ロシュフォールの恋人たち』は、ミュージカル初心者でも観やすいかも。

♥M
セリフが全て歌になっているのは、画期的な部分でもある。
慣れないと、ん?って思ってしまうけれど、慣れてくるとそれが当たり前に思えてくる。
私は、突然歌い出すような「THE ミュージカル」が少し苦手で、『ロシュフォールの恋人たち』は、そういった部分を感じちゃう。
だから私は『シェルブールの雨傘』が大好き。
この作品は台詞も全部歌だから、突然歌い出す!みたいなことはないし、なによりも物語性があるから。

【『シェルブールの雨傘』 あらすじ】
フランスの街・シェルブールで母親と雨傘屋を営むジュヌヴィエーヴ(カトリーヌ・ドヌーヴ)と、自動車修理工場で働くギイ(ニーノ・カステルヌオーヴォ)。
戦争で離れ離れになってしまう2人の悲恋を描いたミュージカル作品。


♥M
鬼武みゆきさんと2019年5月に開催した「語りとピアノのコンサート vol.1 生きた、愛した、愛された。 情熱恋愛5つの物語」や、黒川泰子さんと2016年12月に開催した「語りと歌のコンサート 映画音楽と物語」でも取り上げた『シェルブールの雨傘』。
改めて、この作品の完成度を感じたな。 名作・代表作と言われているのも納得。
ドヌーヴにとっても特別な作品みたいで、「自分の映画女優としてのキャリアをスタートさせた映画としても重要だ」と、話してる。
監督・音楽・衣装・出演者が上手いタイミングで集結したら、こんなのができちゃった! という奇跡的な映画。
鮮やかな衣装、部屋の装飾、色彩豊かな傘も印象的で、見る人を圧倒するような美しい組み合わせ。

♣R
あの時代で、さらにミュージカルなのに、演技がとても自然なんですよね。

♥M
そうなの。唄わせることによって、登場人物の心情が、より際立って見える。
ギイの旅立ちを描いたシーンでは、ドヌーヴの頬が本当に紅潮していて、離れたら生きていけない、という気持ちが痛いほど伝わってくる。

ギイが兵役のために旅立った後、ジュヌヴィエーヴは妊娠が発覚し、宝石商のローラン(マルク・ミシェル)と結婚する。その間、ギイとは手紙でやりとりをしていたけれど、 母親との暮らしを助けるため、そして生まれてくる子どものために、仕方なく結婚をする。
その状況の中で、妊娠している彼女を、そのまま受け入れるほどの包容力を持つローラン。
すごいよね…そんな彼が、私はとても好き。もっと評価されてもいい人物なのに…。


♥M
6年後にガソリンスタンドで再会する場面は本当に名シーン。
テーマ曲がこれでもか、というくらいに流れ、衒いなく場面を盛り上げるから、何度観ても泣いてしまうし、胸にグッとくる。
お互いに一番好きな人と結婚したわけではないけれど、「あなた幸せ?」というジュヌヴィエーヴの問いに対して、「とても幸せだよ」と答えるギイ。
あれだけ愛し合い、「あなたなしでは私は生きていけない、あなたが行ったら死んでしまうわ」とまで言っていた間柄だったのに、環境の変化で最愛の人と結ばれなくても、ギイみたいに「とても幸せだよ」と言える人生。
本当に愛した人とは結ばれず、時には違った道を選択しても、人は生きることができると思うと、とても切ない。

そして、生まれてくる子どもにつける予定だった「フランソワ」・「フランソワーズ」という名前を、お互い自分の子どもに名付けているの。
それぞれの結婚相手に対してはたしかに裏切りに見えるけれど、同時に、どれだけ互いへの想いが強いものか、ということを考えさせる。

♣R
ジュヌヴィエーヴの表情からは、幸せな雰囲気を感じなかったのですが、ギイからは、なんとなく、幸せさを感じました。
その対比が、とても哀しかったです。

♥M
自分の生活に満足して、本当に自分が幸せだと思っているならば、「あなた幸せ?」とは聞かないような気がする。
だから、りきちゃんが言うように、彼女は幸せとは感じていないのだと思う。
彼は現実に適応しているし、「とても幸せだよ」という答えに嘘はないと思うけれど、幸せの種類は違うけどね…というのが、カッコ付きであるのかもしれない。
だから余計に切ない。

♣R
ギイの「もう行った方がいいよ」という言葉は、これ以上一緒にいると、今の幸せが揺らいでしまう可能性があったからかもしれませんね。

【『ロシュフォールの恋人たち』あらすじ】
バレリーナのデルフィーヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)と音楽家のソランジュ(フランソワーズ・ドルレアック)は、海辺の街・ロシュフォールに住む双子の姉妹。
数日後に開催されるお祭りの準備をする一方、将来はパリで成功し、素敵な人と巡り合いたいという夢を抱いている。
作曲家ミシェル・ルグランの軽快なサウンドが印象的なミュージカル。


♣R

『ロシュフォールの恋人たち』は、作中の音楽に繰り返しのフレーズもあるので、中毒性を感じます。すぐに覚えちゃうし、それがずっと耳に残りますね。
だから今でもCMで楽曲が使われたりするんだと思います。
私は踊るのも好きなので、覚えて一緒に踊ったりもしました。

♥M
そうなの??
「双子姉妹の歌」とか?

♣R
そうです!
あと、お祭りシーンで姉妹が踊る「夏の日の歌」とかも。

♥M
ピンク・レディーの振り付けを覚えてしまう感覚?

♣R
その通りです(笑)。
そういえば、ダニエル・ダリューも共演者だったんですね。

♥M
えっ? どの人??

♣R
姉妹のお母さんです。

♥M
ダニエル・ダリューだったの??
姉妹と同じくらいフォーカスされていたから、この人は誰だろうと思っていたの。
全然気付かなかった!

♣R
だからオゾン監督の『8人の女たち』では、久々の共演ということだったんですね。


♣R
内容の深さというよりは、「娯楽」として純粋に楽しめる作品ですね。
この作品はドヌーヴにとって、フランソワーズ・ドルレアックとの思い出として、心に残っているみたいですね。
ドヌーヴのインタビューなどを読むと、フランソワーズが亡くなってからの方が、映画に対しての思い入れが強くなってるような気がします。

♥M
お姉さんとの思い出の作品ということね。
個人的に、フランソワーズはきれいというよりは…。

♣R
味のある感じですよね。

♥M
そうそう。好みもあるけれど、私は断然ドヌーヴの方がきれいに見える。
その当時、フランスで最も美しい姉妹として讃えられていたから、姉妹で演技や美しさを比べられていたと思うと、酷な状況だね。

♣R
私は、フランソワーズの顔、好きですけどね(笑)。

♥M
そうだと思った(笑)。

♣R
歳を重ねた時、きっといい女優になったんだろうなと思いました。
これからを期待されていたと思うので、25歳という若さで事故死してしまったのは、とても残念です。

♥M
ふたりが少女だった頃、フランソワーズばかりが周りからきれいだと言われていて、父親もフランソワーズばかりを大事にしていたみたい。
ティーンエイジャーぐらいの時から、ドヌーヴが段々ときれいだと言われるようになってきて、人気も上がった。先に女優として活動を始めたフランソワーズは、妹の人気が自分を追い越していくのを目の当たりにして、嫉妬心もあったと思う。
そういう中で作られた作品だから…。

♣R
ぎこちなさ?

♥M
そう、ぎこちなさを感じてしまう。
もちろん、練習が足りないとか、そういった部分はあるかもしれないけれど、少なからず、彼女たちの関係性が反映されている作品だと思う。

【『ロバと王女』あらすじ】
宝石を生みだすロバによって、裕福な暮らしをしている王様(ジャン・マレー)。
妻亡き後、遺言に従い見つけた再婚相手は、自分の娘である王女様(カトリーヌ・ドヌーヴ)。
王女様はリラの妖精(デルフィーヌ・セイリグ)に助けを求め、「ロバの皮」になりすまし、森の奥にある小屋に隠れて生活を始めるのでした。
『シンデレラ』や『眠れる森の美女』で有名なシャルル・ペロー作の童話『ロバの皮』が原作。


♣R

『ロバと王女』はドヌーヴがとてもきれいだからと、昔、母が勧めてくれた作品でしたが、初めて観ました。
ドヌーヴはこの作品について、「老若男女に愛されている作品」と、話していますね。

♥M
おとぎ話だから、話に入り込むというよりは、衣装を楽しんだりする映画ね。[

♣R
ジャン・マレーのキャスティングや実際の俳優が城の石像を演じている場面、スローモーションやリバースモーションといった撮影技法の使用などは、ジャン・コクトーの映画『美女と野獣』にちなんだ要素で、コクトーへのオマージュなんですって!

♥M
たしかに、コクトーの映画で、人間が演じている石像を観たことがあるかもしれない。


♣R
お妃様が「私より美しい女性と再婚してください」という遺言を残して亡くなったため、再婚相手に美しい女性を探す王様は、自分の娘である王女が一番美しかったから、娘との結婚を望んだなんて、よく考えてみればすごい話ですよね。
王女もなんだかんだで「お父さんと結婚してもいいわ」なんて言ったりしているし。
監督いわく、子どもが「私、パパと結婚する!」みたいに言う感覚らしいのですが、それにしては、ちょっと歳が離れすぎてはいないか?…って思いました。
幼少期ならありそうな話ですけどね。

♥M
私は、近親相姦の話だと思った。
童話なのに最初からそういうものを扱っていたから、毒々しいものがもっと出てくるのかと思っていたの。

♣R
でも、そんなこともなく、よくあるおとぎ話のような感じで進んでいきましたね。

この王女は、したたかだと思いました。
特に、城を出た後に住み始めた小屋で、国の王子が小屋の中を覗くシーンでそう思いました。
覗かれているのに気付いている王女が、鏡越しに王子を捉えている時のドヌーヴの顔がすごい。
あんたの事を狙っていますよ、みたいな目つきが全面に出ていて、すごくよかったです。

【『モン・パリ』あらすじ】
体調不良のマルコ(マルチェロ・マストロヤンニ)に病院へ行くようにと、泣きつくイレーヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)。そして発覚したマルコの妊娠に、フランス中が大騒ぎ。「男性の妊娠」をテーマに繰り広げられるコメディ作品。


♣R

『モン・パリ』は当時パートナーだったマルチェロ・マストロヤンニとドヌーヴが共演をしている作品。
これ以前にも、『哀しみの終わるとき』(1971年)や『ひきしお』(1972年)で共演していますね。
マストロヤンニは、ソフィア・ローレン主演の『ひまわり』に出演していましたよね?

♥M
そうそう。
私は、マストロヤンニが好きで、いくつか出演している作品を観ているけれど、コメディ映画の出演が多いのよね!


♣R
大々的にミシェル・ルグランの名前が出ているので、てっきりミュージカルだと思っていましたが、ミュージカルではないんですね。
原題を訳すと「人類が月面を歩いて以来の最も重大な出来事」というタイトルみたいですが…。

♥M
それはどういう意味なのかな

り:
「男が妊娠する」ということが、人類が月面着陸をした時と同じくらいびっくりするような出来事だ、ということですかね。

♥M
うーん…内容はもう少しひねりのある話だったらよかった、というのが正直な意見。



~今回の映画~
『シェルブールの雨傘』
1964年 フランス
監督:ジャック・ドゥミ
音楽:ミシェル・ルグラン
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/ニーノ・カステルヌオーヴォ/マルク・ミシェル/エレン・ファルナー/アンヌ・ヴェルノン

『ロシュフォールの恋人たち』
1967年 フランス
監督:ジャック・ドゥミ
音楽:ミシェル・ルグラン
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/フランソワーズ・ドルレアック/ジーン・ケリー/ジョージ・チャキリス/ダニエル・ダリュー

『ロバと王女』
1970年 フランス
監督:ジャック・ドゥミ
音楽:ミシェル・ルグラン
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/ジャン・マレー/ジャック・ペラン/デルフィーヌ・セイリグ/ミシュリーヌ・プレール

『モン・パリ』
1973年 フランス
監督:ジャック・ドゥミ
音楽:ミシェル・ルグラン
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/マルチェロ・マストロヤンニ/ミシュリーヌ・プレール/マリサ・パヴァン/クロード・メルキ

-ふたりの映画鑑賞記/よいこの映画時間