ふたりの映画鑑賞記/よいこの映画時間

☆47本目『ミス・ブルターニュの恋』

2026/03/02

【あらすじ】
若い頃、ミス・ブルターニュに選ばれ、今はレストランのオーナーとして生活をするベティ(カトリーヌ・ドヌーヴ)。
愛人に恋人がいることが発覚し、ショックのあまり店を飛び出したベティは、久々に吸いたくなったタバコを探すうちに、いつしか旅に……それは実際の旅でもあり、人生の旅でもあった。




♥M
私のブログ(「人生は続く」)でもすごくよかったと書いた、タバコを買い求める女性が主人公のお話。
彼女は過去に過酷な体験をしているのね、たくさん。
かつての恋人を事故で失い、夫も失い、愛人も取られ、母親は口うるさくて、経営しているレストランはうまくいっていないし、娘ともうまくいっていない。

♣R
孫も逃げちゃう。

♥M
そうそう。人生的には全然うまくいっていない女性なのに、たくましく生きてる。
でもあるとき、ふとしたきっかけで、何かがはずれてしまった。
それがレストランを飛び出した時ね。
最初は近隣ドライブぐらいの気持ちだったけれど、タバコが吸いたくなって、タバコを求めるうちに、好きなように流れに身を任せていこう、っていう気持ちになってゆく。
私、この作品で救われたの。こういう風に生きていいんだなって。

映画のタイトルにも使われている「ミス・ブルターニュ」は、ベティがかつて「ミス・ブルターニュ」だったところからきているけど、かつて「各地のミス」だった人たちが集合しているシーン、壮観だったね。
みんなおばあちゃんになっているのに、昔と変わらないくらいの自信に満ちあふれてる。
歳をどう重ねるか、ということに対してのシニカルな視線があってね、おもしろかった。
この映画もそうだけど、60歳を過ぎたあたりからのドヌーヴが演じる役柄は、彼女の人生にかぶっている気がするし、監督がドヌーヴを想定して書いているとしか思えない。

♣R
『ルージュの手紙』もそうでしたね。
今まではそういう作品がなかったけれど、今監督をしている年代の人は昔からドヌーヴの姿を見ているから、世間のイメージと自分なりのドヌーヴ像を持っているんですよね。

♥M
「映画と自分自身の人生を混同しないで欲しい」と、ドヌーヴは言っているけれど、最近の出演作を観ると、セリフとか、何かにぶち当たった時の選択の仕方に、ドヌーヴの実生活や生き方、歳の重ね方がかぶる気がする。

■タバコもテーマ


♣R
自分はタバコを吸わないので、この作品の主人公の気持ちを半分ぐらいしか理解できていなかったような気がします。

♥M
共感という意味で?

♣R
この作品は「タバコ」もテーマのひとつだと思っていますが、私は吸わないので、事あるごとにベティがタバコを欲する気持ちや、タバコのない時のイライラ感というものが、全く理解できない。そういう意味では、この映画を十二分に楽しむことができなかったと思います。

♥M
何かに置き換えてみれば、共感できるかも。
例えば…セックスとか。

♣R
(笑)。

♥M
ダイエットしている人が、甘いものを禁じていているけど、どうしても食べたい…みたいな感覚かな。
どうしてもしたくなる、これがなきゃダメ、というものの象徴だから、それに近いものを想像すれば共感できるんじゃないかな。

♣R
そうかあ…タバコを欲している感じがものすごいですよね。
ヨボヨボのおじいさんとのシーンでも…。

♥M
タバコを探し求めている時に出会ったおじいさんが、手作りでタバコを作ってくれるシーンね。おじいさんの手が震えて、なかなかタバコが巻けないのを、ベティが生唾を飲み込みながら見ているのが、とても面白かった。
見てる方もイライラしてきちゃう(笑)。

♣R
そうそう! 自分も大好きなシーンです。
すごくイライラしているのに、作るのは手伝わない(笑)。

♥M
おじいさんがマイペースでプルプル震えながら作るのが、とてもおかしい!

♣R
そんなに欲しいのかタバコ! そんなに買えないものなのかフランス!
そんなコメディ要素も楽しめますね。

♥M
私はずっと禁煙していたけれど、最近また始めて。
今は吸っても、吸わなくても落ち着いていられるけれど、禁煙する前はないとパニックになるくらい依存をしていたから、ベティの気持ちがよく分かる。

♣R
なにかに置き換えるにしても、そこまで気持ちを持っていけるようなものが、今のところないですね…相当欲するくらいのものですもんね。

♥M
うん、相当。

♣R
だから本当の意味では理解もできないし、楽しめない、と思ったのは、そういうところですかね。
以前、画家の松井冬子の作品を観た時にも、自分が女性ではないという理由で、表現しているものの一部しか理解できないと、悔しい思いをしたことがありましたが、その感覚に近いです。こんなにいい作品だからこそ、もっといろんなことを理解しながら観たいのに、それができない。悔しさを感じる作品でした。

■ひとり旅の醍醐味


♣R
若い男の子と知り合って、寝たりしていましたが、同じ「寝た」でも、ラストの「寝た」とは種類が全然違いますよね。

♥M
そう、全然違う。
飲み過ぎて、40歳くらい歳下のちょっと熟女フェチな感じの男の子と寝ちゃうのよね。

♣R
朝起きても、このおばさんと寝ちゃった…という感じではないんですよね。

♥M
「昔は美人だったろ ダイナマイトだ」とか言ったりして。

♣R
「愛し合ってる時 若い頃を想像した」と、言ってましたね。
だから、本当の熟女フェチという訳でもないのかもしれないですね。

♥M
若い頃を想像しながら熟女とセックスをするのが好き、という性癖の持ち主なのよ。
ベティは酔っ払って、羽目を外して、気付いたらベッドにいた感じ。

♣R
何も覚えていない様子でしたね。
逃げるように車で出ていくし。

♥M
そうそうそう!
若い男の子に追いかけられながら(笑)。

♣R
男の子は本気そうだったのに!(笑)。

♥M
何をするというわけではないけれど…雨の日に警備員の男の人に案内されて、家具屋さんで一晩過ごすシーンも好き。

♣R
話をするだけでしたね。

♥M
そうそう。外に出掛ければ誰かと出会うし、何かしらの交流がある。
そして、出ていけば、確実に何かが起こる。
ひとり旅と2人以上の旅の違いは、行った先々で出会った人たちとのコミュニケーションがあるかないかだと思う。2人以上で行けば、一緒にいる人たちと話ができるから、そこまで他人を必要としないし、仲間内でコミュニケーションを完結してしまうことが多い。
今回、ひとりでバンコクに行った時に、ひとり旅の魅力はこういうところだと思った部分は、ひとりでは寂しいから…。

♣R
他を求める。

♥M
そう。他を求めるし、そのためには誰かと関わらないといけない。 だから、そういうコミュニケーションは、ひとり旅の醍醐味だと思った。
ベティと同じね。

■娘と母


♥M
娘がすごくヒステリックでうるさくなかった?
ああいう人は、ちょっと苦手。

♣R
娘役の人は、『たかが世界の終わり』で、路子さんもいいと言っていた、モノローグの歌「Home Is Where It Hurts」を歌っているカミーユらしいです。
エキセントリックではあったけど、最後は打ち解けましたね。

♥M
ああなってしまったのは、母親に対するコンプレックス?
それとも、構ってもらえなかったから?

♣R
構ってくれなかったことが大きいと思います。
映画の中でも「 頭にあるのは店や愛人のことだけ 私は眼中にない いつもそうよ」と、ベティを責めていますよね。

♥M
ベティは母親としても責められているのね。

♣R
だからこそ、娘は自分の息子を溺愛しているのかもしれませんね。
執拗なほどのスキンシップでした。

♥M
親子関係は、そんなものよ。自分がされなかったことを子どもにしてあげたいと思い、その子どもは自分が受けられなかった何かを自分の子どもにするという。

■人生は続く!


♣R
本当に心から寝たい人と過ごし、一緒に朝を迎え、横になりながら、自分の嫌いなものについて話をしたり、冗談を言い合ったり…。

♥M
ラストシーンね。最後のベッドシーンは本当によかった。
恋の始まりってこれよね、これがたまらないのよねって思えた。
年齢を重ねた2人だからいい。何歳になっても…。

♣R
これからもそういうことが起こりうる。

♥M
うん。もちろんあるとは分かっているけれど、映画で観ると感激が増すわ。

♣R
心から好きだと思っている人が相手だと、なんでも知りたいですよね。
外から孫にその姿を見られて、ティーンエイジャーみたいに、「やだっ、どうしよう!」って顔で笑いながら恥ずかしそうにしている、可愛げのあるドヌーヴもよかったですよね。
そして、最後のセリフ…。

♥M ♣R
「人生は続く!」

♣R
なんていい終わり方なんだろう。

♥M
名作。この作品は絶対に観てほしい。



~今回の映画~
『ミス・ブルターニュの恋』
2013年 フランス
監督:エマニュエル・ベルコ
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/ミレーヌ・ドモンジョ/カミーユ/ネモ・シフマン

-ふたりの映画鑑賞記/よいこの映画時間