ふたりの映画鑑賞記/よいこの映画時間

☆30本目『哀しみのトリスターナ』

2026/03/02

【あらすじ】
母親を亡くし、ドン・ロペ(フェルナンド・レイ)の養女となったトリスターナ(カトリーヌ・ドヌーヴ)。
次第に彼はトリスターナを娘ではなく、ひとりの女性として見るようになる。
しかし、トリスターナは、画家のオラシオ(フランコ・ネロ)と出会い、ロペの元を離れる決意をする。




♣R
色恋ジジイの物語。

♥M
端的に言えばそうね(笑)。

♣R
はじめはトリスターナも、養ってもらっているという気持ちが強かったから、恩返し的な気持ちでロペと関係を持ったのかもしれない。でもそれがどんどん嫌になっていく。

♥M
そして立場が逆転。
好きと思っている方の立場が弱くなっていくという、よくあるパターンだね。

♣R
そんな時に、トリスターナは画家のオラシオと駆け落ちしてしまう。
幸せな暮らしをしていたふたりだけれど、なぜか彼からの求婚を断り続ける。
しまいには足の病気になり、彼女の希望でロペの元へ戻ってくる。
手術で足を切断した後に、オラシオはお見舞いに来るけれど、トリスターナは…。

♥M
もうオラシオへの気持ちが離れている。

♣R
それなのにトリスターナは「次はいつ来るの?」「私を愛してないから ここに連れて来た」とか言ったりして…。

♥M
でも、そこで言い争っているのを見ると、ふたりがもう上手くいっていないということが分かる。

■トリスターナみたい!


♣R
初夜の日に、ロペがルンルン気分で香水をつけて準備をしているのに、トリスターナは「何抜かすの? いい年して 思い違いもいいとこ!」と、馬鹿にするような笑いで部屋に閉じこもっちゃうんですよね。

♥M
一緒に寝てあげないのよね。
初夜の晩に、ヒゲを整えたり、香水をつけたりしているシーンは、『ヴェニスに死す』を思い出す。
美少年のタジオに振り向いてもらうために、作曲家がお化粧をしたりしているのに似ていて、哀愁を感じた。
老いていく人が精一杯のオシャレをして、ルルン、ルルンと待っているのに、あの時のトリスターナの態度!
あれはちょっとサディズムが入っている…いじめることで、喜びを感じてる。

♣R
復讐もありますよね?

♥M
でも何に対しての復讐?
若い時に身体の関係を持たされ、生活を縛られていたことに対しての?
私、よくよく考えてみたのだけれど、ロペはそんなにひどいことしてないよね?

♣R
してたんじゃないんですか??
そうじゃなきゃ、そんなに嫌がりますか?

♥M
私はそんなにしてないと思うけどなあ…。

♣R
この男、気持ち悪い! とか。

♥M
それはしょうがないじゃないの(笑)。

♣R
老人ではなく、中年の人が相手だったら、そこまで嫌だとは思わなかったのかも。

♥M
年齢でなのかな?
ロペは何歳ぐらいの設定だと思う?
トリスターナは10代の設定だけれども…。

♣R
結構ヨボヨボでしたよね。
映画の中でも老人扱いされていますよね。

♥M
あの時代は、早くヨボヨボになるのよ。
何となく、トリスターナと関係を持った時は、まだ40代ぐらいだと思う。

♣R
そんなに若いですか

♥M
うん。あの時代は寿命も短いし、今より10歳以上下に見ていかないと、分からなくなる。
だから、初夜の時は、40代か、せいぜい60代ぐらいだと思うよ。

♣R
しつこさがすごくないですか?
事あるごとに、すぐ触ろうとしたりするし。

♥M
だって好きなんだからしょうがないじゃないの!(笑)。
何てイジワルなの。りきちゃん、トリスターナみたい!

♣R
あっはっは!!!(笑)。

♥M
ロペは非常にかわいそうだと思いながら、わたくしは観ていましたのよ!

■トリスターナが求めたもの


♥M
邪気がないまま死に至らしめるとか聞くけれど、トリスターナはそういうのとは違うね。

♣R
確信犯ですよね。

♥M
そうそう。彼女は何が欲しかったのかな…自由?

♣R
お金ではないような気はしますが。

♥M
そうなのよ。
でも、自由が欲しかったのなら、他のところにいればいいもんね。

♣R
だから自由でもない。

♥M
病気で戻ったというのも、もちろんあるけれど、サディズム的な傾向があって、その喜びが忘れられなくて、戻ってきたのかもしれない。

■根本に「悪」を持つ


♥M
柱がたくさん立っている回廊で、トリスターナが「どの柱がお好き?」と、ロペに尋ねるシーンがあるでしょう?
彼は「どれも全て同じだ」と、言うけれど、彼女は「同じ物なんてない 必ず違いがある。葡萄でも雪片でも皆違うから、私はいつも好きな方を選ぶ。」と、答えていて、彼女の特性を表していると思った。
ラストのシーンでは雪が降っていたけれど、死にかけている人を横目にしても、そんなことを思っていたのかな、と私はイメージした。
この場面での彼女の表情はすごく怖かった。
冷酷というのとも少し違う。本当に性格が悪く、残酷さを感じた。

♣R
直接攻撃をするわけでもなく、年老いていく人を、精神的にじわじわ追い詰めていく。

♥M
無邪気にやっているわけでもないから、余計にトリスターナが怖い。
彼女には、あからさまな悪意と、憎しみがある。
ロペを見る軽蔑のまなざしや、彼の死を何とも思っていないようなラストの感じがゾクッとする。

♣R
暗い廊下でずっと歩行の練習をしているシーンも、異様な光景でしたね。
庭師として働くお手伝いさんの息子に、2階の窓から、ガウンを開いて裸を見せる時の蔑むような表情が好きでした。たまらないですよね。

♥M
蔑みの笑みだった…口角は上がっていたね。

♣R
目は全然笑っていなかったですね。
オゾン監督の『スイミング・プール』に、庭師のおじいさんに、2階からシャーロット・ランプリングが服を脱いで挑発するシーンがありますけど、それに似ていましたね。オマージュですかね。

♥M
あったね!
きっとオマージュだね!

♣R
どちらも目線に特徴がありますが、そのシーンだけで言えば、ドヌーヴの方がよかった

♥M
ランプリングのまなざしの方が、まだ優しさを感じる。

♣R
ラストのシーンだけ、トリスターナの化粧がすごく濃かったですよね。
映画全体を通して見ると、他のシーンとは違う化粧の仕方だと思いました。

♥M
だからあんなに怖かったのかな。凄みのような…。

♣R
それもあるかもしれませんね。

♥M
性悪という言葉はあるけれど、トリスターナは、根本の部分に「悪」というものがある女性。
色々な境遇があり、積極的に何かをしているわけではないけれど、彼女の中心にあるものは、「善」ではなく、絶対に「悪」だと思う。

♣R
自分の母親が亡くなる前からのものだと思いますか?

♥M
もちろん環境も影響しているとは思うけれど、人間のそういう部分は、生まれつきだと思う。
私にとって、トリスターナは本当に恐ろしい人間だった。
ドヌーヴは、トリスターナが一番自分に近いと言ってる。
クールビューティーと言われたり、目だけは笑ってない、冷たいとか言われてきているけれど、男に対してこんな風だったのかと思うと、本当に怖いけど、ある種の人にとっては、たまらない魅力かもしれない。



~今回の映画~
『哀しみのトリスターナ』
1970年 イタリア・フランス・スペイン
監督:ルイス・ブニュエル
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/フランコ・ネロ/フェルナンド・レイ

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