☆53本目『真実』
2026/03/03
【あらすじ】
自伝本「真実」を出版する国際的に有名な大女優 ファビエンヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)。
出版祝いのため、娘のリュミール(ジュリエット・ビノシュ)とその家族が、実家へ戻ってくるが…。

(ジャパンプレミアでの興奮冷めやらぬまま、映画の話に突入)
♣R
舞台はフランスですが、要所要所で、「日本人が撮った」という感覚を感じていました。
例えば、音楽の雰囲気や使われ方…映像に対して音楽が強い感じが、まさに日本映画的。
是枝監督の作品は観たことありますか?
♥M
『そして父になる』を観たことがある
『真実』よりも、もっと重いテーマだった。
♣R
「真実」という割には、そんなに重くなく、もっと色々と迫って欲しかったですし、もう少しサラについて深く掘り下げて欲しかったというのが正直なところです。
あとは、ラストに感動をぐぐぐっと、押し込んだ感じがありましたね。
♥M
ヴェネチア国際映画祭での反応はどうだったのかな。
♣R
評判がよかった、というニュースが流れてきましたよね。
ヨーロッパから見たら、いつものヨーロッパ映画とは違う雰囲気が、逆に新鮮なのかもしれませんね。
♥M
「母と娘の関係」もテーマだけれど、「女優の業」というのもテーマのひとつだと思った。
ファビエンヌが大事にしまっていたサラの洋服、『昼顔』の衣装に似てたね。
♣R
是枝監督もオマージュシーンを入れてますよね。
♥M
きっとあると思うよ!
♣R
監督自身が思い描くドヌーヴ像がきっとありますよね。
■実生活を感じさせる

♣R
実生活と役柄を重ねないで欲しいと常々言っているドヌーヴには悪いのですが(笑)…実生活をより感じさせるような作品だと思いました。
♥M
この作品は、ドヌーヴありきで、当て書きの要素が多いでしょう?
ドヌーヴも一時期、自伝を出すか迷っていた時期があったというのを知っていると、すごくおかしかった。
♣R
実際に出版までしていたら、映画と同じようなことが起こったでしょうね。
♥M
そうね。あと、謝ることが苦手なのも似てそう。
「あんなに浮気をしたのに、男に一回も謝ったことがないの?」と、娘に言われるのも、ドヌーヴのことをこれだけ調べていると、映画の中の人物そのままのことが実生活で起こっているように思える。
ドヌーヴの繊細さが、とても引き出されていて、演技に対する恐怖心や、わざと転んで演じてみせる女優魂のようなものも描かれていた。
自分ではすごく上手く演じたと思っていたのに、監督にもう少し抑えた演技をと言われてすねちゃうのは…(笑)。
♣R
かわいかったですね(笑)。
女優の葛藤や、監督との意思の違いみたいなものが、ちゃんと描かれていましたよね。
きっとドヌーヴ自身が普段思っているようなことも、描かれていたような気がします。
♥M
わざとセリフを覚えないで撮影に行くというのを何かで読んだことがある。
♣R
演じる役柄に入り込めるようにと、言っていましたね。
♥M
リュミールによくしてくれていたサラおばさんは、「あの人」とかぶらない?
♣R
ドヌーヴのお姉さんのフランソワーズ・ドルレアックですね。
自分もそう思いながら観ていました。
♥M
飲み過ぎて海で溺れてしまった話をした時ね。
車の事故とはなっていなかったけれど、亡くなった時の状況を彷彿とさせるような会話だったから、フランソワーズ・ドルレアックを意識しているように思えた。
■共演者の存在感

♣R
他の共演者はどうでしたか?
路子さんの大好きなジュリエット・ビノシュも出演していますよね。
♥M
ちょっと物足りなかったかな。
♣R
たしかに、ビノシュの存在は少し薄かったですね。
でも、インタビューで「ドヌーヴの受け皿になってくれ」と言われていた、とあったので、わざと抑え気味にしていたのかもしれませんね。
♥M
イーサン・ホークの使われ方はどうだった?
イーサン・ホークは、アメリカでもフランスでも有名な俳優だよね。
♣R
フラフラしているような感じが割と好きでした。
子煩悩のいいおじさんっぽかったですね。
♥M
ハンク(イーサン・ホーク)に才能がないように見えたのは、売れない役者という設定だったからだよね?
♣R
多分そうだと思いますよ。
彼は娘には仕事だと話しているけれど、本当はアルコール依存症の治療をしている人なんですよね。
♥M
そうそう。ちょっと弱い男だったね。
♣R
冒頭のシーンでファビエンヌにインタビューをしていた人は、『クリスマス・ストーリー』にも出演していた人ですよね?
♥M
キアラと結ばれるはずだった人でしょう?
どこかで見たことがあるとは思っていたけれど、あの人か!
♣R
ドヌーヴ映画を追いかけてきた身としては、ちょっと嬉しいシーンでしたね。
■サニエをもっと!
♣R
劇中劇のシーンが多かったですね
♥M
サラの幻影としての存在であるマノンが出過ぎちゃう気が少ししたの。
♣R
彼女たちの中で大きい存在であった人物の幻影にしては、惹きつけるような魅力が物足りなかったですが、低めの声はとても好きでした。
♥M
危うさや狂気を補うなら、やっぱりサニエがマノンを演じた方が、面白みは出たかもしれない。
♣R
サニエは結構ちょい役でしたよね。
たしかに、サニエ好きとしては、マノン役こそ、サニエにやってもらいたかったですね。
でも、新人であまり目立たない人を持ってきたかったのかもしれませんね。
♥M
サニエがマノン役だったら、すごい演技をしそうだね。
♣R
それだと目立ちすぎちゃいますかね(笑)。
サニエといえば…短い登場シーンながらも、ファビエンヌとアンナ(リュディヴィーヌ・サニエ)が、大女優と、ある程度地位のある女優という立場で、新人女優についてグチっているやりとりは結構好きでした。
♥M
あのシーンは、ふたりに任せていそうだね。
♣R
昔はまだまだ子どもだったのに、サニエもあんなことを言うような歳になっただなんて感慨深いですよね。
後日、撮影記録や、監督の映画への想いが綴られた『こんな雨の日に:映画「真実」をめぐるいくつかのこと』という本で予習をした私たちは、脇役だった男性陣にもスポットを当てた特別編集版も観に行きました。
♣R
特別編集版の方が、ハンクの人物像がよくなった気がしました。
♥M
是枝監督はきっと、イーサン・ホークのことがすごく好きね。
♣R
彼の演技に信頼を寄せていますよね。
シーンが増えてどうでしたか?
最初の飛行機のシーンと、市場のシーンと…。
♥M
劇的にシーンが増えた訳ではないけれど…違いを探せ! みたいね(笑)。
♣R
(笑)。
ベッドで買った人形の話をしているシーンも増えていましたね。
♥M
男3人の料理シーンもね。
♣R
特別編集版は、男性陣3人にもスポットを当てたとされていますが、主にハンクの話が増えたという印象でしたね。
■ドキュメント カトリーヌ・ドヌーヴ
♣R
『輝ける女たち』の時のドヌーヴに近いものを感じました。
言うところはちゃんと言うし、偽って云々というものがないですよね。
♥M
ドヌーヴはファビエンヌを自分とは違うと思うって言ってるけど、かなり重なっていると感じる。
♣R
色々知ってから観ると、映画の見方がガラッと変わりますね。
冒頭のインタビューシーンが続いている感じで、ドヌーヴのドキュメンタリーを観ているような感覚になりました。
♥M
それが映画の正しい鑑賞の仕方なのかは分からないけれど…。
♣R
たしかに、映画自体を楽しんでいるかと言われれば、少し違いますね。
♥M
嫌なかんじ、評論家チックに観ていないか、不安になる。
♣R
でも、『真実』について描かれた是枝監督の本を読んでからだと、細かい部分を違った目線で楽しむことができますよね。
ドヌーヴの行動について読んでいたので、鼻歌歌っているのとか、ずっとブツブツ喋りながらウロウロしたりしているシーンは、そういった実生活のドヌーヴの行動を反映しているんだな、と思いました。
♥M
色々な鼻歌を歌ってるよね。
いい女優を挙げていくシーンで、ブリジット・バルドーの名前があがると、かなりの勢いでないないと言っていたけれど、ドヌーヴはバルドーが嫌いだから、面白かった。
そのシーンであがる女優の名前は、製作前に是枝監督がドヌーヴにインタビューした内容が反映されていたね。
♣R
撮影と並行して作られた映画なんだと感じますよね。
♥M
前回観た時は直前の舞台挨拶の感激が強かったから、客観的に観られなかったのかもしれない。
そういえば、音楽は明るいのを意識して作ったと書いてあったけれど、是枝監督が名付けたダンスシーンの曲名が「フランソワとフランソワーズ」。
『シェルブールの雨傘』で別れたふたりがそれぞれの子どもにつけた名前なのよね!
♣R
是枝監督も相当マニアックですよね。
ダンスシーンは生演奏だったのだから、その雰囲気を大事にして、他の音楽を入れずにそのまま使ってほしかったですね。
♥M
たしかに、それはちょっと思ってしまったかも。
■天然で演じる女優と努力家の女優
♣R
親子の和解のシーンで、ドヌーヴの横顔が映るじゃないですか?
若い頃のドヌーヴの顔が見えたような気がしました。
それこそジャパンプレミアの時に路子さんが話していた走馬灯ではないですが、過去のドヌーヴの美しさが、シーンによって見え隠れしますよね。
それはやっぱり、私たちがドヌーヴを追っているからですかね?
♥M
きっとそうだと思うよ(笑)。
ドヌーヴはデビュー当時に演技指導も受けていないし、大根と言われたり、ただ美しさだけで勝負してると言われたりしていたけれど、私は全然そうは思わない。
今日も彼女を見て、改めてすごい女優だと思った。
ビノシュはどちらかと言うと天然だと思っていたけれど、本を読んだことで、考え抜いた上で役になりきる努力家だと知った。
それを意識してこの作品を改めて観ると、それが分かる気がした。
♣R
理論で演じることを考えていますよね。
そう思うと、ドヌーヴはすごいですよね。
そういう理論を考えずに、天然でやってしまうから恐ろしい。
♥M
夜にディナーの約束がある時は、テイクを早めに、と要求するし。
♣R
しかもそれで出来のいいシーンを演じてしまう。
♥M
ますますドヌーヴを好きになっちゃう。
本を読んだり、インタビューを読んだことで、ドヌーヴとビノシュの関係性についての知識が増えていたから、前回観た時よりも面白く感じた。
そういう知識があるから面白いと思うところに、自分の限界を感じるけれど、今回は「真実」とは何だろう、ということを意識させられた。
ラストシーンで和解をして、もっとこうしていたいと抱きしめている時のファビエンヌの気持ちは本物でも、そこで気持ちが動いた時に、あのシーンでこの感覚を使えばよかった、と思うのは、女優としての性(さが)。
それに対してリュミールは、裏切られたような気持ちになり、娘を使って仕返しをするけれど(笑)。
♣R
裏切られたと思ってはいたかもしれないですが、そこには前のようなトゲはないような気がします。
♥M
騙した? 騙された? みたいなゲーム感覚で、そこに陰湿なものはないのね。
表面上、仲良くするよりも、最後に描かれているようなふたりの騙し合いみたいなものの方が、私はよっぽど好き。





