○女性芸術家1「リー・ミラー 自分を愛したヴィーナス」
2021/01/07
マン・レイ 「リー・ミラー ソラリゼーション」1930年頃
■リー・ミラー(1907-77)■
認知度はけっして高くはないと思う。
そして「リー・ミラーって何者?」と問われたら、困ってしまう。
ファッション・モデルから写真家に転身、その後エジプト人の大富豪と結婚、別れたのち、戦場をかけめぐるフォト・ジャーナリストになり、その後は一流の料理家として活躍。
一度きりの人生というステージで、自らいくつもの役を選び、いくつもの役を演じてきたひと。
このエッセイではふれていないけれど、マン・レイは私が大好きなキキからリー・ミラーに心変わりしている。
小説「女神 ミューズ」のカヴァーでつかっている絵はマン・レイの作品「天文台の時間ーー恋人たち」。空に浮かぶ唇は最初はキキのものだったけれど、マン・レイの心の変化とともに唇も変化し、完成したときにはリー・ミラーの唇になっていた。
ミューズの命には限りがある、という意味において、わかる人は少ないだろうけれど、小説の内容、テーマをシニカルに、けれどぴったりと言い当てているような絵の選択だな、と思ったのを覚えています。
女神 ミューズの小説にもリー・ミラーのことを書きました。このエッセイよりも詳細かもしれない。
1995年の夏に書いた美術エッセイ、第1回をどうぞ。
*藝術出版社刊『藝術倶楽部』に連載したものです。