◎61本目『トリコロール/青の愛』
【あらすじ】
作曲家の夫と娘を事故で失ったジュリー(ジュリエット・ビノシュ)は、屋敷を引き払い、夫が作曲をしていた未完成の協奏曲の楽譜も処分します。
パリで新しい生活を始めるジュリーでしたが、未完成の協奏曲の旋律が脳裏に焼き付いて離れずにいました。
ある日、処分した楽譜の写しを夫の協力者だったオリヴィエ(ブノワ・レジャン)が持っており、彼が曲を完成しようとしていることを知り…。
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路子
お、重い話だった。
トリコロールシリーズは3部作なんですね。
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りきマルソー
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路子
そう。『青の愛』が第1作目。
青が自由、白が平等、赤が博愛を象徴していて、この作品は「青の愛」=「(過去の)愛からの自由」をテーマに描かれているとのことですが。
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りきマルソー
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路子
とても辛い経験をして、立ち直っていく話、というイメージ。
よく生きられたな、というところに感動をしてしまう。
よく生きられたな、というところに感動をしてしまう。
何が理由で、自殺を思い止まったんですかね。
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路子
分からない…私だったらきっと死んでしまう。
すぐに自殺を諦めたように見えました。
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路子
宗教的な理由?
あの時点で、夫の未完成の交響曲を完成させようとか、考えていなかったと思う。
あの時点で、夫の未完成の交響曲を完成させようとか、考えていなかったと思う。
楽譜を捨てていますもんね。
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路子
そう。オリヴィエは、ジュリーが楽譜を捨てるだろうと予想して、コピーを残しておいたんでしょう?
そうですね。
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りきマルソー
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路子
夫の友人であるオリヴィエが重要な人物だとは思っていなかったし、途中から出てこなくなるだろうな、と思っていたら、良い役割の人物として最後まで出てきていたね。「これは君の名前で発表するべきだ」って、ジュリーをちゃんと説得していたし。なかなか良い味出してた。
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路子
ジュリーと初めて寝た時のマットレスを…。
買っちゃう(笑)。
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路子
そんなのジーンとしちゃう。
それって嬉しいですか?
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路子
好きなんだな、と思って、憎めない。
私は嫌だなぁ。自分は重いし、そんなことしがちだけれど、逆にされると引いちゃうかも。
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りきマルソー
夫と娘を事故で亡くした後に、オリヴィエと寝る気持ちはよく分かりました。
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路子
それは私も分かる。
失った時の喪失感を埋めるみたいな感じですよね?
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路子
そう。それはある。忘れたいからという気持ちで。
でもそんなのって無意味なんですよね。結局より傷を深めちゃう。
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路子
そうそう、よけい虚しくなる。
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路子
フラッシュバックした時とかに、綺麗な交響曲の旋律が流れるけれど、曲の使われ方がオリヴェイラ監督の『メフィストの誘い』に似ていたような気がする。デジャヴかと思ったくらい。
ジャジャーン!みたいな感じのですね。
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路子
彼女の頭の中では、ずっとあの音楽が流れてる。
オリヴィエと一緒に曲の続きを作り始めますよね。
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りきマルソー
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路子
うん。
オリヴィエは、一緒に作り始めた時にはもう、実は今までもジュリーが作曲していたと気づいていたのよね。だからきっと、曲が完成した時に、「それは君の名前で発表すべきだ」と、ジュリーに伝えた。
オリヴィエは、一緒に作り始めた時にはもう、実は今までもジュリーが作曲していたと気づいていたのよね。だからきっと、曲が完成した時に、「それは君の名前で発表すべきだ」と、ジュリーに伝えた。
ずっとゴーストライターをやっていたということですもんね?
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路子
そう。最後は自分の作品として公開するのよね?
そうだと思います。そう信じたいですよね。
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路子
うん。ジュリーとオリヴィエはきっと関係が続いていくし、今後はジュリーも作曲家として生きていくのだと思う。彼女は最後、すごくイキイキしていたもの。
そういえば、この「交響曲」は、新約聖書の「コリントの信徒への手紙」の引用なんですってね。
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路子
合唱のところよね?
そうです。
愛は耐え忍び
全てを信じる
すべてを望み
ひたすら耐える
愛は決して滅びることがない
予言はいつしか終わりを告げる
と、いう歌詞でしたね。
愛は耐え忍び
全てを信じる
すべてを望み
ひたすら耐える
愛は決して滅びることがない
予言はいつしか終わりを告げる
と、いう歌詞でしたね。
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りきマルソー
自分の才能なのに、それが直接認められないって、どんな気持ちですかね?
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路子
愛する夫のためだとか、女性の立場というのは関係するかもしれないけれど、かなり複雑よね。
ジュリーは夫のことを愛していたと思う?
ジュリーは夫のことを愛していたと思う?
夫よりも、娘を大事にしているような気がしました。
病院で夫が亡くなったことを告げられた時、そんなに気にしているようには見えなかったです。
病院で夫が亡くなったことを告げられた時、そんなに気にしているようには見えなかったです。
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路子
夫には愛人がいたくらいだものね。
愛人に家をあげる時に、愛人が「聞いてた通りの人だ」と、笑うでしょう? それを見ただけで、夫が愛人に対して、ジュリーをどんな風に説明していたか分かる。きっと皮肉っぽく、理想の女性とか、何でもやってくれる人、みたいに言っていたんだろうな。
愛人に家をあげる時に、愛人が「聞いてた通りの人だ」と、笑うでしょう? それを見ただけで、夫が愛人に対して、ジュリーをどんな風に説明していたか分かる。きっと皮肉っぽく、理想の女性とか、何でもやってくれる人、みたいに言っていたんだろうな。
夫からしてみれば、理想の女性だ、でも…というような感じだったんでしょうね。
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路子
家財も処分して、家も出て行き、誰も知らないところで過ごそうと思ったのは、何も目的もなく余生を生きようと思ったからでしょう?
違う人生を生き直したかった、ということですか?
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りきマルソー
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路子
違う人生を生き直す程ではないのだと思う。
でもそんなふうにしてまでも、つらいことがあってもね、生きていかなくてはならないんだ、って思うと、辛くなっちゃった。
でもそんなふうにしてまでも、つらいことがあってもね、生きていかなくてはならないんだ、って思うと、辛くなっちゃった。
オリヴィエがいなかったら、ジュリーはどうなっていたと思いますか?
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りきマルソー
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路子
作曲をしないと生きていけないというような人ではないから、オリヴィエがいなくても、淡々と日常を送っていきそうな気はする。
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路子
ジュリーが無理やり立ち直ったりもしないから、本当に無理のない、良い映画だと思った。
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路子
事務的なことばかりやっていた日常の中で、時間を作って観たのが良かったのかもしれない。観ている間は、自分の世界があるような気がした。こういうのがあるから、映画を観るのをやめられないのだろうな。
私はあんまりしっくりこなかったんですよね…。
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路子
不思議よね。決して分かりやすい映画ではないけれど、この作品は、オゾンやドランが作るものと同じグループに入ると思うの。それでも入り込めたり、入り込めなかったりするのは、何が決定的に違うのかしら。
時代背景…というか、最近の作品ってそれなりに「今」を描いているじゃないですか。だから今を生きる自分にとっては、寄り添いやすいのかもしれません。
あとは構えてしまっているのかも。芸術系だったり、有名だったり。
あとは構えてしまっているのかも。芸術系だったり、有名だったり。
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路子
ドランやオゾンも構えるでしょう?
これ分からなかったらどうしようみたいな。
これ分からなかったらどうしようみたいな。
何かが違うんですよね…何で私は昔の映画にしっくりこないことが多いのですかね。
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路子
音楽とかは、昔のものが好きなのにねぇ。
ドヌーヴの昔の映画はどうだった?
ドヌーヴの昔の映画はどうだった?
とても良いと思った作品は多かったですが、強烈に惹かれた、という感じではなかったですよね。現代に近い作品の方が、惹かれてる気はします。
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路子
ビノシュの映画でもそうよね。
やっぱり女優が若くてピチピチしているとダメなのかしらね(笑)。
やっぱり女優が若くてピチピチしているとダメなのかしらね(笑)。
最低な理由じゃないですか(笑)。
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路子
でも結構重要だと思う。映画は誰が出演しているかで、大きく左右されるもの。
若いから好きじゃないとか、観ないだなんて、人間の本質をちゃんと見ていないような気はするんですよね…うーむ。
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りきマルソー
~今回の映画~
『トリコロール/青の愛』 1993年 フランス・ポーランド・スイス
監督:クシシュトフ・キエシロフスキー
出演:ジュリエット・ビノシュ/ブノワ・レジャン/エレーヌ・ヴァンサン/フローレンス・ペルネル/シャルロット・ヴェリ