路子先生との時間

路子先生へ

2017/01/30

山口路子さんの新刊が発売されました。

「特に深刻な事情があるわけではないけれど 私にはどうしても逃避が必要なのです」


このタイトルを見たとき、私は衝撃を受けました。
これは、私のための本だ!

章のタイトルは

(1)「前向きに生きる」から逃げたい
(2)「人づき合い」から逃げたい
(3)「家庭」から逃げたい
(4)「仕事」から逃げたい
(5)「世間」から逃げたい
(6)「日常」から逃げたい
(7)「良識」から逃げたい
(8)「孤独」から逃げたい
(9)「貞操」から逃げたい
(10)「夢を叶える」から逃げたい
(11)「運命」から逃げたい
(12)人生からは逃げたくない

逃げること、逃避……これは私の人生に常に纏わりついてくる言葉。
高校生くらいの頃から、この言葉は私にしつこくつきまとってきた。
それも、よくない意味合いを帯びて。

努力することから逃げる
挑戦することから逃げる
人との衝突から逃げる
めんどくさい人づき合いから逃げる
人の苦しみに向き合うことから逃げる
自分の置かれた場所から逃げる

常に逃げてきて、それを人に指摘されて落ち込んできた。
自分は逃げてばかりの意気地なしなんだ、と。

自分を責めすぎて、去年心が折れた。
会社にいけなくなった。結局仕事からも逃げた、とまた責めた。

そこから回復する過程で、少しずつ逃げる自分をと受容するようになった。
「これが自分なんだから」

それでもまだ一方で「それでいいのか?」と問いかける自分も未だ存在する。

エヴァンゲリオンのシンジに自分を重ね合わせて、落ち込んだりしていた。

そのモヤモヤと苦しい中での、
特に深刻な事情があるわけではないけれど 私にはどうしても逃避が必要なのです

本書では、「絶望しやすい人への逃避の名言集」が路子先生の視点で紹介されている。
彼女の人生がつまっている。

……言葉が心にささって、涙があふれた。
全てを見透かされた気がした。

共感するところがありすぎておどろく程だけれど。

p36 「ほんとうに恐い人というのは相手の個性を消してしまう人です

この言葉を見たとき、少し前に母から言われた言葉を思い出した。
「普通に働いて、結婚するなんて、皆やっていることなのに、なんであなたはできないの?」

それを聞いたとき、とても悲しかった。
普通ってなに?みんなってなに?……私がおかしいの?

p108 「異常も正常もない、違っていることこそが生命の基本原理なのです」 
……この本の一節が答えを教えてくれました。

p60 「自分のために生きていない人は、いつか窒息します

p67 「明日できる仕事、他人ができる仕事はしなくてもよいのです

p92 「世間から逃げたい人は「自己の世界」をつくらなければなりません
これは、自己の世界に入りすぎて、世間離れしている私への言葉……?
既に世間から逃げている……

 

他にも紹介しきれない位、心に響く言葉が沢山あるけれど……
とにかく逃避を肯定してくれて、ありがとうございます。

だけど一つだけ自分に言いたいのは、逃避が必要だからといって、それを理由に「頑張る」ことから逃げてはいけない。

出版記念イベントで路子さんとお話したときに、
「逃避の必要性を認めることは、頑張らないことを認めるようで嫌だ。
自分が頑張ってると思ってて、もう無理だよぅと思っても、人からしてみれば、全然頑張りが足りないのかもしれない」
ともやもやをぶつけると……

「頑張るのは、相対評価でなく、絶対評価なのよ。自分が頑張ってるって思ったら、それでいい」
と言ってくれた。
胸に染みた。

この本はポジティブ信仰に疲れた全ての人におすすめです。
殿方にも読んで頂きたいな……

特に深刻な事情があるわけではないけれど 私にはどうしても逃避が必要なのです

また最近では

絶望名人カフカの人生論

こちらも元気が出ます。

将来にむかってあるくことは、僕にはできません。
将来にむかってつまづくこと、これはできます。
いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです
」 
(本文より引用)

倒れたままでいたら、自然に起きたくなるものね。

※出版記念イベントの様子は、また別記事で書きたいと思います。

(2013-05-28)

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