☆40本目『8人の女たち』
2026/03/02
【あらすじ】
クリスマスを祝うため、集まった家族、そして使用人、友人。雪に閉ざされた屋敷で起こった奇妙な殺人。
犯人探しをするなかで、しだいにそれぞれの秘密が明らかになってゆき・・・。

♣R
自分は、『アメリ』と『8人の女たち』でフランス映画が好きになりました。
♥M
どちらの作品も色彩が豊か!
♣R
たしかに!
どちらも高校生ぐらいの時に母と映画館に観に行きました。
それまでにもハリーポッターシリーズやジブリ作品を一緒に観に行ったりはしていましたが、急にフランス映画をチョイス。でもそこで、フランス映画というものに魅了され、一筋縄ではいかない物語、色彩の豊かさ、煌びやかだけではない女優の美しさに初めて触れました。
そして、シミやソバカスがあるような歳を重ねた女性を、こんなにも魅力的に見せるオゾン監督はとてもすごい監督なんだと思いました。
女優の美しさという点では、特にオーギュスティーヌを演じているイザベル・ユペールに魅力を感じ、好きになりました。
その後、学校の国語女性教師に『8人の女たち』を観たことを話したら、オゾン監督の『焼け石に水』や、その他のフランス映画のイロハのようなものを色々教えてくれました。
それからはミニシアター映画をよく観るようになり、今はもうないのですが、シネスイッチ銀座などでやっていたような映画を上映する「関内MGA」というミニシアターによく通いました
♥M
どういう環境に身を置いているのよ(笑)。
でもそういう映画館はあるよね。
私にとっては「Bunkamura ル・シネマ」がそうだった。
♣R
だからこの作品は、私が映画を好きになった原点とも言えます。
♥M
じゃあ記念碑的な作品なのね!
オゾン監督の作品だと、次の作品は『スイミング・プール』。
そこでシャーロット・ランプリングにも出会うわけね。
♣R
そうですね。そうやってどんどん好きな監督や女優の出演している作品を観ていくことで、色々な俳優の知識も広がりました。
♥M
まあ、りきちゃんの場合は歳を重ねた女優が好きという、限定的な広がりだけど(笑)。
♣R
たしかにそうですね(笑)。
■ブルジョアの奥様

♣R
ドヌーヴが『しあわせの雨傘』で演じた金持ちの夫人とは全然違うキャラでしたね。
同じお金持ちの夫人でも、こちらの作品の方がもっと強欲だし、夫ではない別の男性と逃げようとしているし。
♥M
嫌な女なのよね。全然違う。
『8人の女たち』でのドヌーヴの見どころは、ピエレット役のファニー・アルダンとのキスシーンかな?
♣R
オゾンは上手いですよね。
上半身ではなく、足が絡むところを撮るなんて…いやらしいな、オゾン、上手いよなー。
♥M
オゾンも、女性同士の絡み合いだから、きっと燃えるのよ(笑)。
♣R
もちろんキスしている顔を映すのもわかりやすくていいですが、そこをあえて見せない。
隠れた美というか…。
♥M
足のシーンを見て思ったのは、トリュフォーの作品。
オマージュなのかと思った。
トリュフォーは足フェチ。どの作品でも、割と女性の足を映している。
♣R
たしか、ふたりともトリュフォーの映画に出演していますよね?
♥M
うん、そうそう。
■ダサいの境界線

♥M
ユペールもいい味出してるのよね。
本当に『ピアニスト』に出てましたか? と、思ってしまうくらい。
♣R
本当に!!
途中からきれいに変身しますが、ちょっといっちゃっているオールドミスな感じもすごく好きで、ネチネチネチネチ文句を言い続けているのに、どこかコミカルさを感じますよね。
かといって、ピアノを弾いて歌うシーンでしっとりさを出したり…いい意味で化け物だと思いました。
♥M
本当に…女優は化け物じゃないと!
ドヌーヴもまさに化け物。
豹変ぶりがすごい。
♣R
ドヌーヴの作品を色々観ていると、本当にそう思いますね。
この作品を初めて観た時、オーギュスティーヌがピアノを弾きながら唄った後に、手の動きで感情を表現するシーンに感動しました。
歌の終わりにポロっと涙を流すんですよね。
強がっていた人が自分の弱い部分を見せるというシーンで、セリフではなく、歌と手で表現するというのは、セリフ以上のものを感じさせるし、想像を膨らませますね。
♥M
それ以外で自身の弱さについて、説明をしていないものね。
♣R
そうですね。
女優たちが歌う歌は、この映画のために作られたものではなく、昔の流行歌などが選ばれていますが、どの歌も映画のシーンにとても合っているんですよね。
オゾンは本当に映画の中での音楽の使い方が上手い。
惹きつけるだけではなく、イマジネーションを働かせてくれる。
『ロシュフォールの恋人たち』とかではそういう風に感じないですよね。
♥M
『ロシュフォールの恋人たち』や『シェルブールの雨傘』は、その映画のために楽曲が作られているからかもしれないね。
すでに世に出ている楽曲を使うのは難しい。
フランスの歌だから日本人の私たちに馴染みがないだけで、日本で考えたら、椎名林檎やミスチル、キャンディーズの曲が使われているようなものなのかな。
♣R
ちょっとダサいですね。
♥M
そうそう。でもそれをやっているし、評価をされているということは、日本以外でも評価されるようなセンスのいいチョイスをしているとしか考えられない。
日本で考えるとやっぱり難しいと思う。
別れのシーンで『ルビーの指輪』を持ってくるようなもの
♣R
うわっ、ダサいですね。すっごくダサい(笑)。
あっはっはー!!
♥M
ちょっと間違えると、本当に危ない。
それか、どう思われても俺はこれが好きだという気持ちがないと、使えないと思う。
♣R
なんで日本で置き換えると、ダサく感じてしまうんですかね。
日本では表現できないようなヨーロッパ特有の雰囲気ってありますよね。
特に、ソフィア・ローレンの『ひまわり』を観たときにそう思いました。
映画で流れる空気感、映像、出演者、どれをとっても邦画で表現するのはきっと無理。
ヨーロッパだからこそ許されるものがありますよね。
♥M
あるある。
でも、もしかしたら、自分が所属している国かどうかだけなのかもしれないね。
♣R
じゃあ、フランス人だったら、違う風に思うかもしれないですか?
♥M
うん、違うんじゃないかな。
♣R
フランス人は、オゾンの歌の使い方をどう思っていますかね?
♥M
ここにこれを持ってきたのはさすがだと思う人もいるし、そうでない人も…。
♣R
映画館で外国映画を観ている時、日本人と外国人で笑いのツボが違う時がありますよね。
だからもしかしたら笑っているかもしれないですね。
♥M
そうそう。それか、それをあえてギャグで使っている、という見方もあるね。
♣R
撮っている国や観客の国籍で、大きく左右されるんですね。
♥M
同じ国のものだと、あまりにも近すぎて、反応しすぎてしまうのかもしれない。
♣R
恋愛と一緒で、分かっているものよりも、違うテイストのものを入れたい。
♥M
そうそう、そうなのよ。
全然知らない文化のものを見たいの。
■個性派揃いの役者たち

♥M
カトリーヌ役のリュディヴィーヌ・サニエはこの作品の中では、とても若く見えるね。
♣R
子どもっぽさがありますよね。
サニエはオゾン監督の作品によく出演していますが、『焼け石に水』では、かなりグラマーでしたよね。
♥M
しかもバリバリのヌード。
♣R
そうそう。それと比べると、本当に幼く見えますよね。
♥M
オゾンは見せ方が上手い。
♣R
『スイミング・プール』にも出演していますよね。
♥M
数年後にはクロード・シャブロル監督の『引き裂かれた女』にも出演していた。
♣R
そうですね。
フランス映画祭にもゲストとしてちょこちょこ来日してますけど、よく喋るし、ニコニコとしているし、気さく。そんな感じなのに、映画の中では化けますよね。
♥M
『愛のあしあと』のサニエもすごくよかった。
たしかドヌーヴの役柄の若い頃を演じているの。
他の女優は有名な人?
シュゾン役の子とか。
♣R
シュゾン役のヴィルジニー・ルドワイヤンは、ハリウッド映画にも出演している女優です。
『ザ・ビーチ』という作品で、レオナルド・ディカプリオと共演しています
♥M
マダム・シャネル役の人は?
存在感がちょっと薄かったね。
♣R
マダム・シャネル役のフィルミーヌ・リシャールは、他で見たことはないですね。
まあ、あのメンバーの中だと、そうなってしまいますよね(笑)。
♥M
たしかに…それは過酷だわ(笑)。
あとは、ルイーズ役のエマニュエル・べアール。
♣R
きちっとしたメイドの被り物の時も、外した時も、きれいでしたよね。
♥M
べアールも化け物女優。
彼女は『美しき諍い女』で有名になったね。
♣R
ハリウッド映画にも出演してますよね
(しばらく作品名を思い出せない様子をお楽しみください)
チャッチャッチャッチャ!っていう音楽の映画です!
チャララーチャララーチャララーララっていうやつです(笑)。
♥M
私が知っている作品?
分からない!
♣R
主人公の俳優は『アイズ ワイド シャット』にも出演しています。
ニコール・キッドマンの元旦那。
♥M
トム・クルーズ?
♣R
が、出演している有名なハリウッド映画はなんでしょうか??
こういうシーンがあるんです(空中から紐でぶらさがる様子を路子さんにやって見せる)。
その映画の相手役として、べアールが出演していたんです…『ミッション:インポッシブル』だ!!
♥M
そんなシーンあったっけ?(笑)。
彼女は今、何歳ぐらい?
♣R
1965年生まれなので…。
♥M
私と同じくらいだ。
(インスタの写真を出しながら)今こんな感じなのね。
ノーメイク?
♣R
インスタの写真は、ノーメイクが多いかもしれません。
■幸せな愛はない

♥M
マミー役のダニエル・ダリューは、『ロシュフォールの恋人たち』では双子のお母さん役だったね。面影があるし、かわいい。
足が悪いはずなのに、いきなり立ち上がって歩きはじめるおばあちゃん。
あのシーンは笑っちゃった。
♣R
ダニエル・ダリューがラストシーンで歌う『幸せな愛はない(Il n’y a pas d’amour heureux)』は名シーンですよね。大好きなんです。
♥M
実際にはひとり死んでいるけれど、ラストシーンを見ると大団円な感じなのよね。
♣R
路子さんは、この曲の元になっている詩についてブログ(「幸せな愛はどこにもない」)で書いていますよね。
♥M
ルイ・アラゴンの詩ね。
お友達が教えてくれたの。
♣R
ブログを読んで、この歌が元々は詩だということを初めて知りました。
映画の歌詞は少し短めかもしれません。
♥M
私は詩の後半部分が胸にささったの。
生きる道を知ったとき、そのときにはもう手おくれだから
わたしたちの心は 夜のなかで声をそろえて泣くのだ
小さな歌ひとつつくるためにさえ 不幸が要るのだと
ひとつの旋律をあがなうためにも悔恨が要るのだと
ギターの一節(ひとふし)のためにも すすり泣きが要るのだと
幸せな愛はどこにもない
苦しみのないような愛はどこにもない
ひとの力を奪いとらないような愛はどこにもない
♥M
これを教えてくれたお友達が、「「幸せな愛はない」、つきささる言葉ですが、でも愛がないのではなく、愛はあるということなんですよね」と、言ったの。
「幸せな愛」はどこにもないけれど、でも「愛」はある。
そういうのも含めて、この曲をラストに持ってくるのはすごいと思う。
