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★絶筆美術館5:クリムト『花嫁』

 

 

 十九世紀末ウィーン、エロティシズムの画家クリムトは五十五歳で死んだ。

 なぜか彼は脳卒中をずっと恐れていたが、その脳卒中の発作に襲われ入院、半身不随となり、抵抗力がなくなっているところに当時ヨーロッパで猛威をふるったインフルエンザ(スペイン風邪)にかかり、そこからの肺炎が原因で、およそひと月後に死んだ。

 

 画家がいなくなったアトリエには何枚かの描きかけの絵が残された。彼はつねに何枚かの絵を同時進行で描いていたからだ。

 その一枚、『花嫁』とタイトルがつけられた作品を、クリムトの芸術的絶筆として選ぼうと思う。

 秘密主義というか、とにかく自分のことを語りたがらなかったクリムトが、意思に反して「公開」することになった創作の過程が、その描きかけの絵に表れていて、とても興味深いし、クリムトという、その人自身が、そこに表れているように思えるからだ。

 

■創作の秘密の女

 私は、はじめてそれを観たときに、声をあげるほどに驚いたのだ。

『花嫁』はイーゼルに残されていた。

 大きな絵だ。およそ縦1.7メートル、横2メートルある。

 驚いたのは、私が「創作の秘密の女」と呼んでいる、ある「部分」。

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