◾️ブルーモーメントの3周年記念
ひとり出版社ブルーモーメントが生まれてから3年が経った。
3年前のあの夏の終わり、中目黒の9階のマンションの小さな部屋で、娘とひとり出版社についてあれこれとおしゃべりをした日から、3年。
この3年間のうちに、生き方シリーズを5冊、「りんごちゃんのゆるまる本」、そして「彼女たちの20代」、7冊を刊行。
本を読むときの手もと、香りもコーディネイトしたい、ということでネイルと香水も扱い始め、こちらのほうは、SNSで評判となって、万バズ、という言葉を私ははじめて知った。1万以上の「いいね」がつくことをそう呼ぶらしい。
生き方シリーズと「彼女たちの20代」からインスピレーションを得たネイルは20種類、香水は6種類となった。
いずれも人気で、発売即完売もめずらしくはない。
たったひとりで、ほんとうにすごいな、と感心してばかりいる。
ネイルや香水の発売について話したときに、娘は言っていた。ここから入って本を読むことに興味をもってほしいって想いがあるんだ。その通りになっている。ブルーモーメントの読者は、本好きなひとはもちろん、いままで本を読むということを知らなかったひとたちも多いからだ。
3周年。娘にとっては格別の感慨があるようだ。彼女がブルーモーメントの世界観を表現したケーキをオーダーしたと知ったとき、あらためてそれを強く感じた。
私はどうか。私は本を書き、彼女から助けを求められたときは応じているだけなので、彼女が感慨をいだいていることに対して感慨をいだいている、といったかんじ。
私は著者としてユニークな関わり方をしていて、さらに彼女と一緒に住んでいるから、ほぼすべてのことを目撃していて、楽しさや困難、さまざまな刺激を受けているので、3周年、もちろん他人事ではないけれど。
それだけ一緒でよく喧嘩しませんね、と言われることがある。
喧嘩とはなんだろう。おそらく上のような意味で周囲の人が言うときのイメージは「なんなのよう、あんたなんかともう仕事できない、口もきかないもんね、ぷんぷんっ」みたいなかんじだと思う。
そういうふうにはならない。娘は人との争いごとを好まない。幼いころからずっとそうだった。私? 争いごとが好きなわけではないけれど、これまでの人生、「絶交」経験は少なくない。
まあそんなわけで、喧嘩めいたことにならない理由としては彼女の性質もあるけれど、そもそも私は本を書く立場として関わっているという意識が強く、ほかのことは、それが私の意見とは異なることでも、娘の判断にまかせるのが当然だと思っているから、ようするに、いいかげんに関わっているから、という理由も大きいだろう。
雑用関係は大変だー、と思うことも多いけれど、ネイルや香水のネーミングを一緒に考えたり、添える文章、詩のようなものを書いているときは、心躍る。そんなとき、私は喜びを与えられているのだと思う。
3周年記念に彩られた日々が今日から始まった。
代官山のポップアップストア初日。昨日、9時間かけてふたりで設営した。ラストは疲労でふたりとも無言。黙々と作業。もくもく。
3日間の代官山でのポップアップストアののち、1日休んで、博多阪急でのポップアップのため福岡へ。1週間の催事ののち、名古屋、ストリングスホテルでのポップアップ、アフタヌーティーのコラボイベントが予定されている。
私は博多、名古屋、設営だけ手伝いに行く。
名古屋のストリングスホテル、アフタヌーティーのコラボイベントの写真にはちょっと胸をつかれた。アフタヌーンティーに本が置いてある風景を私は、はじめて見た。
こういう流れで読書に導くのか…。娘が以前に言っていたことを思って、私はまたしてもひどく感心した。
代官山ポップアップ初日をむかえた今朝、よく眠れた? と尋ねたら、「ひとりもお客さんがこなくて焦っている夢、行列ができて焦っている夢、そのほか、ありとあらゆる夢を見ました」と笑っていた。
それでも、新しいワンピースを着て、忘れ物がないか何度もチェックして、よし、じゃあ、行ってきます、と言ったときの彼女は、とてもいい顔をしていた。私はひとの、こういう表情が好きだ。楽しいだけではない、緊張も不安もある、けれど全力でそれに向かいたい、という想いがあふれている。