ブログ「言葉美術館」

◆クロノス、マリリンからのメッセージ

2016/06/21

Mm普通の日は5時半に起きて、娘の朝食とお弁当を作る。ラジオは、軽井沢から東京に移住した4年前からほぼずっと東京FMに合わせているから、クラシックの番組のあと、6時スタートの「中西哲生のクロノス♪」が流れる。最後に♪をつけたのは、中西哲生さんとよいコンビのパーソナリティ、高橋万里恵さんが、歌うように言うから。

ほぼ毎日聴いていると、パーソナリティのお二人が身近になる。私とは別世界の、健康的で明るい人たちだけど好き。

娘とときどきつっこんだり、笑ったり、「あ、また○○さんだ!」とおなじみのラジオネームの人に反応したりしながら「一度くらいメッセージ送ってみようか」なんて言っている。

このところどうも不調で、「さいきんちょっと調子が良いようだ、と希望をもっていたらやっぱり甘かったな」みたいになっていて、それでも墜落まではせず、低空飛行状態なので、今朝も低空飛行な状態でクロノスを聴きながら娘と会話し、お弁当を作って送り出した。

氷の音がカラカラと気になるから水筒には氷を入れるのはやめましょう、でも、なんとなく幸せっぽい音じゃないの、なんて会話をして。

そしていつもはラジオを流したままにするのだけど、今朝は静かな音楽でもかけようと、いったんラジオを切った。

それから自分用の朝食を準備して、何の音楽を聴こうか迷って、やっぱりラジオにしようと、再びスイッチを入れた。

そうしたらまるで図ったように「今日6月1日はマリリン・モンローの誕生日です…」と流れた。

「ああ、そうか、今日はマリリンが生まれた日なんだ」と私はぼんやり思った。

低空飛行状態のときには、反応が遠いところで起こる。とっても他人事みたいに、「ああ、マリリン……」って。

高橋万里恵さんの声がマリリンのいつまでも色褪せない魅力について語り、中西哲生さんが同調する。私は心のなかで「そうなのよ、だからマリリンが好き……私のマリリン……」とつぶやきながらトーストを食べ、コーヒーを飲む。

そして次の瞬間とても驚いた。

「山口路子さんのマリリン・モンローという生き方の中から、マリリン・モンローの言葉を紹介します」

ほんとうに驚いた。

私がマリリンのなかから取り出した、大好きな言葉がラジオから流れてくる。

自信がなく、自分の書いたものが無価値で、自分も無価値で無力で、とても不安で、でもそんななかでも飛び続けるのをやめてはいけないと、なんとか低空飛行を続けていた朝だったから、私はトーストをもぐもぐしたまま、じんわりと熱くなった。

マリリンが私にラジオのスイッチを再び入れさせたのかな。

マリリンが生きていたら今日で89歳。

36歳で死んじゃったマリリン。

私は「マリリン・モンローという生き方」の終章、ラストを次のように書いた。

*****

マリリンの人生に、あらためて思う。

何年生きたかではない。どのように生きたのか、何をなそうとしていたのかが、大切なのだと。

いま、私には、マリリンの声が聞こえるように思う。あの甘く儚い声が、耳もとで囁くように思える。「諦めないで」。あのぎこちない、守ってあげたくなる微笑が見えるように思う。うるんだ瞳、まごころのあるまなざしが、優しく、けれど強く、うったえかける。

諦めないで。どうか、人生を、諦めないで。

*****

今日はマリリンの誕生日。

この言葉を胸にしまって、低空飛行であっても、飛び続けようと思う。

……どうか、人生を諦めないで。

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