ブログ「言葉美術館」

■愛の遊戯が人生の目的 「危険な関係」 ラクロ■

2016/05/22

516apq0m9yl「私たちが他人の中にあると思っているあの魅力というものは、じつは自分の中にあるものなのです。愛する相手をそれほどまでに美化するものは、恋なのです

メルトイユ侯爵夫人が、好敵手でもあり同志でもあるヴァルモン子爵に書いた手紙の中の言葉。

その前には、ヴァルモンが夢中になっている夫人を、「普通の女、ただあのままの女」だと思いなさい、とある。

この言葉に、映画「ダメージ」のラストが重なる。ファム・ファタルに溺れた男が破滅し、すべてが過去のものとなった後、偶然、ファム・ファタルであった女を見かける。そして思う。普通の女だ……、と。

「危険な関係」は全編、書簡形式。手紙は「魂の肖像」なのだ、という記述に心惹かれた。

今ではメールになるのかな。

親しい友に宛てたメールを読み返すと、ときどき生々しい感情が吐露してあり、自分でも驚くことがある

坂口安吾も、「愛の遊戯を明確なる人生の目的とした男女の場合を描きだしたもの」として、感心していた。「あらゆる本を手放したときにもこの原本だけはだいじに所蔵していた」。

「危険な関係」は映画にもなっていて、何作かあるようだけれど、私が最近観たのは、監督がロジェ・バディム、ジャンヌ・モローとジェラール・フィリップが共演しているもの。美しかった。

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