■欠けているもの 「女の学校」 ジッド■
2016/05/19
「ロベールさんのそばにいてはじめて、私は自分に何が欠けているかがいちばんよくわかる」
ロベールというフィアンセに恋するヒロインが日記に綴ったフレーズ。
私たちは、いろんな人に会うけれでも、相手が男性であれ女性であれ、「自分に何がかけているか」がよくわかる人と会うことを、「出逢い」というのではないか。
今までの恋愛を思い起こしてみても、みな、このような感覚を抱いた人ばかりだった。「出逢い」だった。
女性に対しても、好感をもって今度もおつきあいしていただきたい、と願う人は、私に同様の感覚を抱かせる。これは「出逢い」だわ、と思う。
逆に「もう会わなくていい」と思う相手にはこのような感覚は抱かない。
「自分にはない何かをもっている」とは思っても、それを「自分に欠けている」とは受け取らない。「なくてよかったもの」として受け取る。ただ「会った」という物理的な接触だけで「出逢い」ではない。
「女の学校」は、ジッドの「ロベール」「未完の告白」の三部作の第一作。
三作続けて読んで、ひじょうに面白かった。