■「うっかり人生がすぎてしまいそうなあなたへ」自分の本■
2016/05/19
「ぼくの生活信条として、
なんでもないことは流行に従う。
重大なことは道徳に従う。
芸術のことは自分に従う。」
自分で書いた本の、あれを読みたい、と突然に思った。
「心の琴線にふれるワンセンテンス」というメルマガが元になった、私が出会った言葉についてのエッセイ集だ。
読みたくなったのは「自分に従う意思」というタイトルの、小津安二郎の言葉に触発された一遍。その中で私は、
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私はこれを気に入って、なんでもないことは流行に従う、の「流行」を「世間」に置き換えて「活用」していた。
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と書き、娘の保育園でのあれこれを例に出している。随分前のことのように思える。
このところ、私は「世間」というものをしみじみと体験させていただいている。
そして強く再確認するのは、私は世間というものと仲良くできない性質だから、今の職業を選んだのだな、ということだ。
再確認する、ということは、世間体験が相当にしんどいからだ。
自分と他人とをくっきりと隔てる自分だけの思想……などという言葉とは無縁の人たちと私は上手く付き合うことができない。
先日、この苦しみがあふれてしまった。
そのとき、吐いた言葉は、
「私には資格がない!」
だった。
何に対する資格なのだろう、と今考えてみるに、
「私は世間に迎合しないわよ、やってられないわっ」
と背徳する資格なのだった。
結婚をし子供を産んだ時点で、私はその資格を失ったのだった。
自覚はしているけれど、どうにもこうにも自分を持て余すときというものはあるもので、これは自分の弱さとの対峙であり、どうにもならないその弱さに、がっくりと首を落としたくなる。
今日の軽井沢は霧雨が降っていて、昨日より気温が十度低いという。八度までしか上がらないと。
ああうれしい。落ち着く。今日は家で本を読もう。ここ一ヶ月物語作りに没頭していたから、他の人の本が読みたくなっている。